第三者が、賃借土地の上に存する建物の所有権を取得した場合において、賃貸人が賃借権の譲渡を承諾しない間に賃貸借が賃料不払のため解除されたときは、借地法第一〇条に基く第三者の建物買取請求権は、これによつて消滅するものと解すべきである。
建物買収請求権が消滅するものと認められた一事例
借地法10条
判旨
賃借権の譲渡について賃貸人の承諾を得ない間に、賃借人の賃料不払を理由として土地賃貸借契約が解除された場合、借地法10条に基づく第三者の建物買取請求権は消滅する。
問題の所在(論点)
賃借権譲渡の承諾を得る前に、原賃貸借契約が賃借人の賃料不払を理由に解除された場合、建物譲受人は借地法10条に基づく建物買取請求権を行使できるか。
規範
建物譲受人が土地賃借権の譲渡について賃貸人の承諾を得る前に、賃貸借契約が賃料不払等の債務不履行を理由として適法に解除された場合には、借地法10条(現行借地借家法14条)に基づく建物買取請求権は行使し得ない。
重要事実
賃借人Eから建物(および賃借権)を譲り受けたFから、上告人Aが当該建物を買い受けた。Aが建物を買い受けた際、土地賃貸人Dから賃借権譲渡の承諾は得ていなかった。その後、DはEの賃料不払を理由として賃貸借契約の解除を通知し、当該通知はEに到達した。契約解除から約10か月後、AはDの承継人である被上告人らに対し、建物買取請求権を行使する旨の意思表示をした。
事件番号: 昭和42(オ)430 / 裁判年月日: 昭和42年8月24日 / 結論: 棄却
第三者が賃借土地上の建物を取得した場合でも、賃貸人が賃借権の譲渡を承諾しないうちに土地賃貸借契約が賃料不払により解除されたときは、第三者は建物買取請求権を有しない。
あてはめ
本件において、上告人Aは建物買受の際、敷地の賃借権譲渡について賃貸人Dの承諾を得ていない。そして、Dによる賃料不払を理由とする解除通知は有効に到達しており、これにより土地賃借権は消滅した。建物買取請求権は、存続期間満了等により賃借権が消滅する際に建物所有者の投下資本回収を認める制度であるが、賃借権譲渡の承諾がないまま債務不履行により賃借権が消滅した場合には、第三者たる譲受人に建物買取請求を認めるべき根拠がない。したがって、解除によって賃借権が消滅した以上、同時に建物買取請求権も消滅したといえる。
結論
賃料不払による解除後に建物買取請求権を行使することはできず、上告人の請求は認められない。
実務上の射程
借地借家法14条の「裁判所が賃借権の譲渡を承諾しない場合」の適用場面においても、債務不履行解除が先行した場合には建物買取請求権が否定されるという法理として、実務上極めて重要な射程を有する。答案作成上は、信頼関係破壊による解除の帰結として、買取請求権という強力な権利行使の前提を欠くことを論じる際に用いる。
事件番号: 昭和32(オ)840 / 裁判年月日: 昭和35年2月9日 / 結論: 棄却
借地人の債務不履行による土地賃貸借契約解除の場合には、借地人は借地法第四条第二項による建物等買取請求権を有しない。
事件番号: 昭和39(オ)1214 / 裁判年月日: 昭和41年3月1日 / 結論: 棄却
第三者が賃借土地の上に存する建物の所有権を取得して賃借土地の転貸を受けた場合において、賃貸人が転貸を承諾しない間に賃貸借が賃料不払のため解除されたときは、借地法第一〇条に基づく第三者の建物買取請求権は、これによつて消滅するものと解すべきである。
事件番号: 昭和36(オ)646 / 裁判年月日: 昭和38年4月23日 / 結論: 棄却
第三者が賃借土地の上に存する建物の所有権を取得した場合に、賃貸人が賃借権の譲渡を承諾しない間に賃貸借が賃料不払のため解除されたときは、借地法一〇条に基づく第三者の建物買取請求権はこれによつて消滅するものと解するのを相当とする。
事件番号: 昭和31(オ)570 / 裁判年月日: 昭和35年2月2日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】宅地賃貸借が売買契約の成立により消滅し、その際、売買契約が解除されても賃貸借を復活させない旨の合意がなされた場合には、賃借人から建物と同権利を譲り受けた第三者は、旧借地法10条に基づく建物買取請求権を主張できない。 第1 事案の概要:宅地の賃借人Dは、賃貸人との間で調停に基づき当該宅地の売買契約を…