第三者が賃借土地の上に存する建物の所有権を取得した場合に、賃貸人が賃借権の譲渡を承諾しない間に賃貸借が賃料不払のため解除されたときは、借地法一〇条に基づく第三者の建物買取請求権はこれによつて消滅するものと解するのを相当とする。
土地賃貸借の解除と建物買取請求権の消滅。
借地法10条
判旨
賃借権の無断譲受人が賃貸人に対し建物買取請求権(借地法10条、現行借地借家法14条)を行使した場合であっても、賃貸人が譲渡を承諾する前に賃借人の賃料不払を理由として賃貸借契約が解除されたときは、同請求権は消滅する。
問題の所在(論点)
賃借権の譲渡について賃貸人の承諾が得られていない状態において、元の賃借人の賃料不払を理由に賃貸借契約が解除された場合、建物の譲受人による建物買取請求権(借地法10条、現借地借家法14条)の行使は認められるか。
規範
第三者が賃貸借の目的物である土地上の建物所有権を賃借権とともに取得した場合において、賃貸人が賃借権の譲渡を承諾しない間に、賃貸借契約が賃借人の債務不履行(賃料不払)を理由として解除されたときは、当該第三者の建物買取請求権は消滅する。
重要事実
賃貸人(被上告人)は、訴外Dに対し本件土地を賃貸し、Dは地上に建物を建築した。その後、上告人がDから本件建物と敷地賃借権を譲り受け、建物を改造して所有したが、賃貸人はこの賃借権譲渡を承諾していなかった。賃貸人は、Dの賃料不払および賃借権の無断譲渡を理由として、Dに対し賃貸借契約解除の意思表示を行い、通知は到達した。その後、上告人は第一審の口頭弁論において建物買取請求権(旧借地法10条)を行使した。
事件番号: 昭和40(オ)386 / 裁判年月日: 昭和40年10月22日 / 結論: 棄却
第三者が賃借土地上の建物を取得した場合でも、賃貸人が賃借権の譲渡を承諾しないうちに土地賃貸借契約が賃料不払により解除されたときは、右第三者は、建物買取請求権を有しない。
あてはめ
本件において、上告人は賃借権の無断譲受人の立場にあり、賃貸人による承諾が得られていない状態であった。この間において、元の賃借人であるDに賃料不払という債務不履行が存在し、これを理由として賃貸借契約は適法に解除されている。建物買取請求権は存続する借地権を前提とする、あるいは借地権が消滅する場合であっても誠実な履行を前提とする制度であるところ、賃料不払という信頼関係を破壊する事由により契約が終了した場合には、もはや建物の譲受人が買取請求権を主張する基盤は失われると解される。
結論
本件賃貸借契約が賃料不払を理由に解除された以上、上告人の建物買取請求権は消滅しており、その行使は認められない。
実務上の射程
借地借家法14条(旧借地法10条)の建物買取請求権の成否に関する重要判例である。合意解除や期間満了による終了とは異なり、債務不履行による解除の場合には、建物譲受人(転借人を含む)の買取請求権が否定されるという「射程の限定」を示す際に活用する。
事件番号: 昭和42(オ)430 / 裁判年月日: 昭和42年8月24日 / 結論: 棄却
第三者が賃借土地上の建物を取得した場合でも、賃貸人が賃借権の譲渡を承諾しないうちに土地賃貸借契約が賃料不払により解除されたときは、第三者は建物買取請求権を有しない。
事件番号: 昭和36(オ)304 / 裁判年月日: 昭和36年9月7日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】借地法10条(現行借地借家法14条)に基づく建物買取請求権は、買取請求の意思表示の時点において、土地賃借権が有効に存在していることを要件とする。 第1 事案の概要:上告人A1及びA2が、被上告人所有の土地を賃借し、その地上に建物を所有していた事案において、賃料の支払をめぐる争い等により賃貸借関係の…
事件番号: 昭和32(オ)260 / 裁判年月日: 昭和33年4月8日 / 結論: 棄却
第三者が、賃借土地の上に存する建物の所有権を取得した場合において、賃貸人が賃借権の譲渡を承諾しない間に賃貸借が賃料不払のため解除されたときは、借地法第一〇条に基く第三者の建物買取請求権は、これによつて消滅するものと解すべきである。
事件番号: 昭和35(オ)946 / 裁判年月日: 昭和37年6月26日 / 結論: 棄却
借地人の債務不履行により土地賃貸借契約が解除された場合には、借地人は借地法第四条第二項の規定による地上建物の買取請求権を有しない。(昭和三五年二月九日第三小法廷判決、民集一四巻一〇八頁参照)