借地人の債務不履行により土地賃貸借契約が解除された場合には、借地人は借地法第四条第二項の規定による地上建物の買取請求権を有しない。(昭和三五年二月九日第三小法廷判決、民集一四巻一〇八頁参照)
債務不履行による土地賃貸借契約の解除と借地人の地上建物買収請求権の有無。
借地法4条2項
判旨
借地人の債務不履行を理由として土地賃貸借契約が解除された場合には、借地人は建物買取請求権を行使することができない。
問題の所在(論点)
借地人の債務不履行(賃料不払い等)を理由として土地賃貸借契約が解除された場合、借地人は賃貸人に対し、借地法4条2項(現:借地借家法13条1項)に基づく建物買取請求権を行使できるか。
規範
建物買取請求権制度は、借地権の存続期間が満了した際に、建物等の現存にかかわらず土地を返還しなければならない借地人を保護し、社会経済的損失を防ぐためのものである。しかし、借地人の債務不履行という信頼関係の破壊によって契約が終了した場合にまで、この請求権を認めて借地人を保護する必要はなく、また貸主に買い取りを強制することは衡平の観点から妥当ではない。したがって、債務不履行による契約解除の場合、買取請求権は発生しないと解すべきである。
重要事実
借地人(上告人)が土地賃貸借契約を締結していたが、賃料等の支払いを怠るという債務不履行が発生した。これに基づき、土地賃貸人(被上告人)が土地賃貸借契約を解除し、土地の明け渡しと建物の撤去等を求めた。これに対し、借地人は借地法4条2項(現行の借地借家法13条に相当)に基づき、土地上の建物についての買取請求権を主張した。
事件番号: 昭和32(オ)840 / 裁判年月日: 昭和35年2月9日 / 結論: 棄却
借地人の債務不履行による土地賃貸借契約解除の場合には、借地人は借地法第四条第二項による建物等買取請求権を有しない。
あてはめ
本件において、上告人(借地人)は債務不履行を犯しており、それを理由に土地賃貸借契約が適法に解除されている。このような誠実な履行を怠った借地人の一方的な帰責事由により契約が終了した場合、法が予定する借地権存続期間満了に伴う保護の対象とはならない。したがって、被上告人(賃貸人)に対して建物買取請求を認めることはできないと判断される。
結論
借地人の債務不履行による契約解除の場合、借地法4条2項に基づく建物買取請求権は有しない。本件上告は棄却される。
実務上の射程
借地借家法13条の建物買取請求権の適用場面に関する重要判例である。答案上は、期間満了時だけでなく、債務不履行解除時に請求権が認められない根拠として「制度の趣旨」および「誠実義務・衡平の原則」から論じる際に引用する。なお、合意解約の場合についても本判例の理を及ぼすかどうかが別途議論となるが、本判例は債務不履行という『背信性』がある場合に限定して判断している点に注意が必要である。
事件番号: 昭和39(オ)177 / 裁判年月日: 昭和39年9月25日 / 結論: 棄却
土地賃貸人が賃借人の賃料不払と無断転貸の二重の理由により賃貸借契約を解除したときは、賃借人より地上建物を買受けた者は、建物買取請求権を行使することができない。
事件番号: 昭和36(オ)646 / 裁判年月日: 昭和38年4月23日 / 結論: 棄却
第三者が賃借土地の上に存する建物の所有権を取得した場合に、賃貸人が賃借権の譲渡を承諾しない間に賃貸借が賃料不払のため解除されたときは、借地法一〇条に基づく第三者の建物買取請求権はこれによつて消滅するものと解するのを相当とする。
事件番号: 昭和38(オ)1179 / 裁判年月日: 昭和39年6月26日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】借地上の建物を取得した第三者が建物買取請求権を行使する際、既に賃借人の債務不履行(賃料不払)により土地賃貸借契約が解除されている場合には、当該第三者は買取請求権を行使できない。 第1 事案の概要:上告人(第三者)は、借地上の建物を取得し、賃貸人に対して建物買取請求権を行使しようとした。しかし、その…
事件番号: 昭和42(オ)430 / 裁判年月日: 昭和42年8月24日 / 結論: 棄却
第三者が賃借土地上の建物を取得した場合でも、賃貸人が賃借権の譲渡を承諾しないうちに土地賃貸借契約が賃料不払により解除されたときは、第三者は建物買取請求権を有しない。