土地賃貸人が賃借人の賃料不払と無断転貸の二重の理由により賃貸借契約を解除したときは、賃借人より地上建物を買受けた者は、建物買取請求権を行使することができない。
賃料不払と無断転貸とを理由として土地賃貸借契約を解除した場合の建物買取請求権。
借地法10条
判旨
賃借人の債務不履行を理由として土地賃貸借契約が解除された場合には、賃借人又はその承継人は、借地法4条2項(現行借地借家法13条1項)に基づく建物買取請求権を行使することができない。
問題の所在(論点)
賃借人の債務不履行(賃料不払)を理由として賃貸借契約が解除された場合、借地権者(またはその承継人)は建物買取請求権を行使することができるか。
規範
建物買取請求権制度の趣旨は、借地権の存続期間満了時等において建物が残存する場合に、建物の取壊しによる社会経済的損失を防ぎ、借地権者の投下資本回収を諮る点にある。しかし、賃借人の債務不履行(賃料不払等)により契約が解除された場合には、賃貸人に建物の買取りを強制し、誠実な契約履行を怠った賃借人を保護すべき理由はなく、信義則上、建物買取請求権の行使は認められない。
重要事実
土地所有者である原告(被上告人)と賃借人Dとの間の土地賃貸借契約には、賃料不払時に無催告解除ができる旨の特約があった。Dは昭和30年4月1日以降の賃料を支払わず、原告は昭和32年3月2日に賃料支払遅滞を理由として契約解除の意思表示を行った。その後、Dから地上建物を買い受けたEは、解除後の昭和34年5月10日に建物買取請求権を行使した。
事件番号: 昭和32(オ)840 / 裁判年月日: 昭和35年2月9日 / 結論: 棄却
借地人の債務不履行による土地賃貸借契約解除の場合には、借地人は借地法第四条第二項による建物等買取請求権を有しない。
あてはめ
本件では、賃借人Dに約2年間にわたる賃料不払という債務不履行が存在し、それに基づき原告が適法に解除権を行使している。解除の意思表示により賃貸借契約は終了しており、その原因は賃借人側の帰責事由にある。このような状況下で、Dから建物を買い受けたEが、契約終了から約2年が経過した後に買取請求権を行使することは、誠実な履行を怠った側を不当に利するものであり、認められない。
結論
債務不履行による解除の場合には、建物買取請求権の行使は認められないため、Eの請求は否定される。
実務上の射程
本判決は、建物買取請求権(旧借地法4条2項、現行借地借家法13条1項)の適用範囲を限定する重要な法理を示した。実務上、借地権の消滅原因が「期間満了」や「合意解約」等の債務不履行以外の理由であるか、それとも「債務不履行解除」であるかを区別することが決定的に重要となる。答案上は、制度の趣旨(投下資本回収・社会経済的損失防止)と信義則を対比させて論じる。
事件番号: 昭和35(オ)946 / 裁判年月日: 昭和37年6月26日 / 結論: 棄却
借地人の債務不履行により土地賃貸借契約が解除された場合には、借地人は借地法第四条第二項の規定による地上建物の買取請求権を有しない。(昭和三五年二月九日第三小法廷判決、民集一四巻一〇八頁参照)
事件番号: 昭和38(オ)1179 / 裁判年月日: 昭和39年6月26日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】借地上の建物を取得した第三者が建物買取請求権を行使する際、既に賃借人の債務不履行(賃料不払)により土地賃貸借契約が解除されている場合には、当該第三者は買取請求権を行使できない。 第1 事案の概要:上告人(第三者)は、借地上の建物を取得し、賃貸人に対して建物買取請求権を行使しようとした。しかし、その…
事件番号: 昭和49(オ)309 / 裁判年月日: 昭和49年7月12日 / 結論: 棄却
賃借人の債務不履行により契約が解除され、土地賃貸借が終了した場合には、借地法六条一項は適用されない。
事件番号: 昭和32(オ)260 / 裁判年月日: 昭和33年4月8日 / 結論: 棄却
第三者が、賃借土地の上に存する建物の所有権を取得した場合において、賃貸人が賃借権の譲渡を承諾しない間に賃貸借が賃料不払のため解除されたときは、借地法第一〇条に基く第三者の建物買取請求権は、これによつて消滅するものと解すべきである。