第三者が賃借土地の上に存する建物の所有権を取得して賃借土地の転貸を受けた場合において、賃貸人が転貸を承諾しない間に賃貸借が賃料不払のため解除されたときは、借地法第一〇条に基づく第三者の建物買取請求権は、これによつて消滅するものと解すべきである。
建物買取請求権が消滅するものと認められた事例
借地法10条
判旨
賃借人から建物とともに敷地の転借を受けた第三者は、賃貸人が承諾を与える前に賃借人の賃料不払いを理由として土地賃貸借契約が解除された場合、建物買取請求権を行使することはできない。
問題の所在(論点)
賃借人による無断転貸がなされた後、土地賃貸借契約が賃料不払いにより解除された場合、建物の譲受人(転借人)は借地法10条に基づく建物買取請求権を行使できるか。
規範
賃借地上にある建物の所有権を取得した第三者の建物買取請求権(借地法10条、現行借地借家法14条)は、賃貸人が賃借権の譲渡や転貸を承諾しない間に、基礎となる土地賃貸借契約が賃料不払い等の債務不履行を理由として解除された場合には、消滅すると解すべきである。
重要事実
賃借人Eは、賃貸人Fから土地を借り、その上に建物を所有していた。第三者である上告人Aは、Eから建物の一部を譲り受けるとともに、その敷地を転借した。しかし、賃貸人側がこの転貸を承諾する前に、賃借人Eに賃料不払いが発生した。賃貸人の地位を承継した被上告人は、Eの賃料不払いを理由に土地賃貸借契約を解除した。その後、Aが被上告人に対し建物買取請求権を行使した。
事件番号: 昭和38(オ)604 / 裁判年月日: 昭和40年1月12日 / 結論: 棄却
無断転借人が建物を建築した場合には、右建物について買取請求権は生じない。
あてはめ
本件では、上告人Aが建物を譲り受け、敷地の転借を開始したものの、賃貸人からの承諾は得られていなかった。この「承諾を得る前」の段階において、賃借人Eの賃料不払いという債務不履行により、土地賃貸借契約は適法に解除されている。建物買取請求権は、存続期間の満了等により借地権が消滅する場合に認められるものであるが、賃料不払いという賃借人の帰責事由により契約が終了した場合には、その保護を及ぼすべきではない。譲渡・転貸の場面においても、賃貸人の承諾前に債務不履行解除がなされた以上、先行する判例の法理(賃借権譲渡の場合)と同様に、Aの建物買取請求権は消滅したものと判断される。
結論
土地賃貸借が賃料不払いで解除された場合、無断転借人は建物買取請求権を行使できない。
実務上の射程
本判決は、建物買取請求権が「誠実な借地権者の保護」を目的とすることを前提に、債務不履行解除の場合にはその行使を否定する確立した法理を、転貸の事案にも適用したものである。答案上は、期間満了による終了と債務不履行による終了を区別し、後者において買取請求権を否定する根拠として本判例を活用する。
事件番号: 昭和32(オ)260 / 裁判年月日: 昭和33年4月8日 / 結論: 棄却
第三者が、賃借土地の上に存する建物の所有権を取得した場合において、賃貸人が賃借権の譲渡を承諾しない間に賃貸借が賃料不払のため解除されたときは、借地法第一〇条に基く第三者の建物買取請求権は、これによつて消滅するものと解すべきである。
事件番号: 昭和37(オ)294 / 裁判年月日: 昭和39年6月26日 / 結論: 棄却
借地権の無断譲渡を理由として土地賃貸借契約が解除されたのち地上建物を取得した第三者は、該建物の買取請求権を有しない。
事件番号: 昭和38(オ)1179 / 裁判年月日: 昭和39年6月26日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】借地上の建物を取得した第三者が建物買取請求権を行使する際、既に賃借人の債務不履行(賃料不払)により土地賃貸借契約が解除されている場合には、当該第三者は買取請求権を行使できない。 第1 事案の概要:上告人(第三者)は、借地上の建物を取得し、賃貸人に対して建物買取請求権を行使しようとした。しかし、その…
事件番号: 昭和42(オ)430 / 裁判年月日: 昭和42年8月24日 / 結論: 棄却
第三者が賃借土地上の建物を取得した場合でも、賃貸人が賃借権の譲渡を承諾しないうちに土地賃貸借契約が賃料不払により解除されたときは、第三者は建物買取請求権を有しない。