借地権の無断譲渡を理由として土地賃貸借契約が解除されたのち地上建物を取得した第三者は、該建物の買取請求権を有しない。
無断譲渡を理由とする借地契約解除後の地上建物取得者と建物買取請求権。
借地法10条,民法612条
判旨
借地法10条(現借地借家法14条)に基づく建物買取請求権が行使できるのは、借地権の存続中に第三者が建物等を取得した場合に限られる。無断譲渡を理由とする賃貸借契約の解除により借地権が消滅した後に建物所有権を取得した第三者には、同条の買取請求権は認められない。
問題の所在(論点)
借地上の建物を取得した第三者が、借地法10条(現借地借家法14条)に基づき建物買取請求権を行使するためには、建物取得時に借地権が存続している必要があるか。また、無断譲渡による解除後の建物取得者に同請求権が認められるか。
規範
借地法10条(現借地借家法14条)の趣旨は、土地賃貸人の承諾があれば適法に借地権を取得し得る地位にある第三者が、不承諾により借地権者になれない場合に建物を保護することにある。したがって、同条の適用があるのは、賃貸人の承諾があれば第三者が従来の借地権を取得し得た場合、すなわち「借地権の存続中」に第三者が建物等を取得した場合であることを要する。
重要事実
本件土地の賃借人(上告人)が所有する地上建物が公売に付され、訴外Dが買得した。土地賃貸人Eは、昭和28年5月9日に借地権の無断譲渡を理由として、賃借人に対し賃貸借契約を解除した。その後、同年9月にF(訴外)が当該建物の所有権を取得した。Fが建物買取請求権を有するか否かが争点となった。
事件番号: 昭和37(オ)295 / 裁判年月日: 昭和39年6月26日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】借地法10条(現行借地借家法14条)に基づく建物買取請求権は、賃貸人の承諾があれば第三者が借地権を取得し得る地位にあることを前提とするため、借地権消滅後に建物を取得した者には認められない。 第1 事案の概要:土地賃借人Dの地上建物が公売に付され、訴外Eが買得した。土地賃貸人Fは、Dに対し借地権の無…
あてはめ
本件において、建物取得者であるFが所有権を取得したのは昭和28年9月である。これに対し、土地賃貸人Eによる借地権の解除は同年5月9日になされており、Fが建物を取得した時点ですでに借地権は消滅していた。Fは、賃貸人の承諾があれば借地権を承継し得た段階で建物を取得したわけではなく、借地権消滅後の取得者である。したがって、借地法10条の適用要件を欠くといえる。
結論
借地権が消滅した後に建物を取得した第三者には、借地法10条に基づく建物買取請求権は認められない。
実務上の射程
借地借家法14条の「第三者」の範囲を確定させる重要な判例である。解除によって借地権が確定的に消滅した後の建物譲受人には買取請求権を認めないという結論は、実務上の定説となっている。答案では、買取請求権の発生時期と借地権消滅時期の前後関係を論理の核心に据えるべきである。
事件番号: 昭和27(オ)1162 / 裁判年月日: 昭和29年6月17日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】借地法10条(現借地借家法14条)の建物買取請求権は、従来の借地権の存続中に第三者が建物等を取得した場合にのみ認められ、借地契約終了後に建物を取得した者には適用されない。 第1 事案の概要:上告人は、本件土地に係る従来の土地賃貸借契約が既に終了した後に、当該土地上の建物を取得した。その後、上告人は…
事件番号: 昭和39(オ)1214 / 裁判年月日: 昭和41年3月1日 / 結論: 棄却
第三者が賃借土地の上に存する建物の所有権を取得して賃借土地の転貸を受けた場合において、賃貸人が転貸を承諾しない間に賃貸借が賃料不払のため解除されたときは、借地法第一〇条に基づく第三者の建物買取請求権は、これによつて消滅するものと解すべきである。
事件番号: 昭和36(オ)304 / 裁判年月日: 昭和36年9月7日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】借地法10条(現行借地借家法14条)に基づく建物買取請求権は、買取請求の意思表示の時点において、土地賃借権が有効に存在していることを要件とする。 第1 事案の概要:上告人A1及びA2が、被上告人所有の土地を賃借し、その地上に建物を所有していた事案において、賃料の支払をめぐる争い等により賃貸借関係の…
事件番号: 昭和37(オ)643 / 裁判年月日: 昭和38年1月31日 / 結論: 棄却
借地上の建物に対し通常の修理、模様替の範囲を超えた増改築が土地転借人によつて加えられ、建物の同一性を失うに至つた場合には、借地法第一〇条による建物買取請求権を行使することはできない。