借地上の建物に対し通常の修理、模様替の範囲を超えた増改築が土地転借人によつて加えられ、建物の同一性を失うに至つた場合には、借地法第一〇条による建物買取請求権を行使することはできない。
借地上の建物の増改築による同一性の喪失のために建物買取請求権ができないとされた事例。
民法612条,借地法10条
判旨
借地権の譲受人が借地権設定者に対し建物買取請求権(旧借地法10条)を行使するには、適法な権原により借地に附属された建物を取得することが必要であり、譲受人が無断で新築した建物には同請求権は認められない。
問題の所在(論点)
賃借権の無断譲受人が、賃貸人の承諾を得ないまま土地上に新たに建築した建物について、旧借地法10条(現行法13条等に対応)に基づく建物買取請求権を行使できるか。
規範
建物買取請求権(旧借地法10条、現行借地借家法13条・14条参照)が認められるためには、請求権者が借地権設定者との関係において適法な権原に基づいて借地に附属させた建物を取得したことを要する。したがって、賃借権の譲渡について賃貸人の承諾(民法612条1項)が得られていない場合、譲受人が当初の建物と同一性を欠く建物を無断で造り直したとしても、当該建物について買取請求権を行使することはできない。
重要事実
被上告人(賃貸人)から本件土地を借りていたEには、地上に所有名義建物が存在していた。上告人(譲受人)は、Eから本件土地の賃借権と店舗建物を譲り受けたが、この譲渡について被上告人の承諾は得ていなかった。その後、上告人は旧建物の材料を僅かに使用したものの、通常の修繕等の範囲を超え、旧建物との同一性が認められない新建物(本件建物)を建築した。その後、借地権の存続を前提に上告人が建物買取請求を認めるよう求めた事案である。
事件番号: 昭和37(オ)294 / 裁判年月日: 昭和39年6月26日 / 結論: 棄却
借地権の無断譲渡を理由として土地賃貸借契約が解除されたのち地上建物を取得した第三者は、該建物の買取請求権を有しない。
あてはめ
まず、本件建物の建築は旧建物との同一性を欠くものであり、単なる増改築の範囲を超えている。上告人は、賃貸人である被上告人から賃借権譲渡の承諾を得ておらず、不法占有に近い状態にある。買取請求権の趣旨は、適法な借地権によって社会経済的価値が付加された建物の破棄を防止することにある。本件において、上告人が無断で新築した建物は、借地人が適法な権原によって附属させたものとはいえず、法が保護すべき対象に含まれない。したがって、本件建物に買取請求権を認める余地はない。
結論
上告人には、旧借地法10条所定の建物買取請求権は認められない。
実務上の射程
賃借権譲渡の承諾がない場合であっても、譲渡時の建物が存続していれば買取請求が認められ得る(大審院判例の準用)が、本判決は、譲受人が「無断で新築」した建物については、適法な権原による附属物とはいえないため、買取請求の対象外となることを明示したものである。答案上は、買取請求の主体の要件として「適法な権原」の有無を論じる際に活用すべきである。
事件番号: 昭和37(オ)295 / 裁判年月日: 昭和39年6月26日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】借地法10条(現行借地借家法14条)に基づく建物買取請求権は、賃貸人の承諾があれば第三者が借地権を取得し得る地位にあることを前提とするため、借地権消滅後に建物を取得した者には認められない。 第1 事案の概要:土地賃借人Dの地上建物が公売に付され、訴外Eが買得した。土地賃貸人Fは、Dに対し借地権の無…
事件番号: 昭和38(オ)1398 / 裁判年月日: 昭和39年9月8日 / 結論: 棄却
借地法第一〇条による買取請求権者を行使できるのは、建物所有を目的とする土地賃借権者が借地上に所有する建物等土地の附属物件をその賃借人から賃借権とともに譲り受けた者およびその者よりさらにその譲渡を受けた者に限られる。
事件番号: 昭和36(オ)646 / 裁判年月日: 昭和38年4月23日 / 結論: 棄却
第三者が賃借土地の上に存する建物の所有権を取得した場合に、賃貸人が賃借権の譲渡を承諾しない間に賃貸借が賃料不払のため解除されたときは、借地法一〇条に基づく第三者の建物買取請求権はこれによつて消滅するものと解するのを相当とする。
事件番号: 昭和38(オ)604 / 裁判年月日: 昭和40年1月12日 / 結論: 棄却
無断転借人が建物を建築した場合には、右建物について買取請求権は生じない。