無断転借人が建物を建築した場合には、右建物について買取請求権は生じない。
無断転借地人が建物を建築した場合と建物買取請求権の有無。
借地法4条,借地法10条
判旨
賃貸人の承諾を得ない土地の無断転借人がその地上に建物を建築した場合、当該転借人は賃貸人に対し、借地法上の建物買取請求権を行使することはできない。
問題の所在(論点)
土地の無断転借人が、賃貸人に対し、借地法4条(または10条)に基づき地上建物の買取請求権を主張することができるか。
規範
建物買取請求権(旧借地法4条、10条、現借地借家法13条、14条)の趣旨は、借地権の存続期間満了等に際し、建物等の国民経済的損失を防止し借地権者を保護することにある。しかし、賃貸人に無断でなされた不法な転貸借に基づく占有者は、賃貸人との間で正当な信頼関係や法的保護の基礎を欠くため、同規定を準用または直接適用して建物買取請求権を取得することはない。
重要事実
土地所有者(被上告人)から土地を借りていた賃借人Dが、地主の承諾を得ることなく、その土地を上告人らに転貸した。上告人らはこの無断転貸に基づき、土地上に各建物を建築して占有を開始した。その後、被上告人はDとの間の賃貸借契約を無断転貸を理由に解除し、上告人らに対して建物収去土地明渡を求めた。これに対し、上告人らは建物買取請求権の行使を主張して争った。
事件番号: 昭和39(オ)1214 / 裁判年月日: 昭和41年3月1日 / 結論: 棄却
第三者が賃借土地の上に存する建物の所有権を取得して賃借土地の転貸を受けた場合において、賃貸人が転貸を承諾しない間に賃貸借が賃料不払のため解除されたときは、借地法第一〇条に基づく第三者の建物買取請求権は、これによつて消滅するものと解すべきである。
あてはめ
本件において、上告人らは地主である被上告人に無断で訴外Dから土地を転借している。この転貸借は被上告人に対抗できない不法なものであり、かつ、Dと被上告人の間の原賃貸借契約も適法に解除されている。このような無断転借人は、土地利用に関する正当な権原を賃貸人に対し主張し得る立場にない。したがって、無断転借人が建築した建物について、借地法4条等の規定を準用して地主に買い取りを強制することは認められない。
結論
無断転借人は建物買取請求権を有しない。したがって、建物収去土地明渡請求を拒むことはできず、上告は棄却される。
実務上の射程
本判決は、無断転借人という『不法占有者』に準ずる立場にある者には建物買取請求権を認めないことを明示したものである。答案作成上は、借地権が債務不履行解除(無断転貸を含む)によって終了した場合、賃借人や転借人からの建物買取請求権の行使は否定されるという準則として活用する。誠実な借地権者保護という制度趣旨から外れる場合には適用がないことを示す典型例である。
事件番号: 昭和37(オ)643 / 裁判年月日: 昭和38年1月31日 / 結論: 棄却
借地上の建物に対し通常の修理、模様替の範囲を超えた増改築が土地転借人によつて加えられ、建物の同一性を失うに至つた場合には、借地法第一〇条による建物買取請求権を行使することはできない。
事件番号: 昭和38(オ)1398 / 裁判年月日: 昭和39年9月8日 / 結論: 棄却
借地法第一〇条による買取請求権者を行使できるのは、建物所有を目的とする土地賃借権者が借地上に所有する建物等土地の附属物件をその賃借人から賃借権とともに譲り受けた者およびその者よりさらにその譲渡を受けた者に限られる。
事件番号: 昭和39(オ)1308 / 裁判年月日: 昭和40年7月23日 / 結論: 棄却
本訴請求は、建物所有者に収去義務の現存する建物の占有者に対し該建物からの退去を求める趣旨と解せられるから、右占有者が右建物の占有関係を離れてその敷地そのものの占有権原を主張しても、抗弁となりえない。
事件番号: 昭和39(オ)144 / 裁判年月日: 昭和40年6月18日 / 結論: 棄却
宅地の賃借人が賃借地上に判示事情のある同居の家族に建物を建築させてこれにその敷地を転貸した場合には、右転貸につき賃貸人の承諾がなくても、賃貸人に対する信頼関係を破壊するに足りない特段の事情があるというべきである。