借地法第一〇条による買取請求権者を行使できるのは、建物所有を目的とする土地賃借権者が借地上に所有する建物等土地の附属物件をその賃借人から賃借権とともに譲り受けた者およびその者よりさらにその譲渡を受けた者に限られる。
借地法第一〇条の買取請求権者の範囲。
借地法10条
判旨
借地法10条(借地借家法14条)に基づく建物買取請求権を行使できる者は、正当な土地賃借権者から建物と共に賃借権を譲り受けた者に限られる。土地所有者に対抗できる賃借権を有しない建物譲受人は、同条の建物買取請求権を行使することはできない。
問題の所在(論点)
旧借地法10条(現借地借家法14条)に基づき土地賃貸人に対し建物買取請求権を行使できる者の範囲、特に土地所有者に対抗できる賃借権を持たない建物譲受人が当該権利を行使できるか。
規範
建物買取請求権(旧借地法10条、現借地借家法14条)の行使主体は、建物所有を目的とする正当な土地賃借権者から、建物とその賃借権を共に譲り受けた者、およびその転得者に限られる。土地所有者に対し賃借権を対抗できない者は、同法の保護対象には含まれない。
重要事実
土地所有者である被上告人から土地を賃借していた訴外Dがいた。その後、当該土地上に建物を建築して所有した訴外E、およびEから建物を買い受けた訴外Fは、いずれも被上告人に対し対抗できる土地賃借権を有していなかった。上告人は、この対抗力のないFから建物を買い受け、土地所有者である被上告人に対し建物買取請求権を行使した。
事件番号: 昭和37(オ)643 / 裁判年月日: 昭和38年1月31日 / 結論: 棄却
借地上の建物に対し通常の修理、模様替の範囲を超えた増改築が土地転借人によつて加えられ、建物の同一性を失うに至つた場合には、借地法第一〇条による建物買取請求権を行使することはできない。
あてはめ
本件において、上告人の前主であるFおよびその前の所有者Eは、いずれも土地所有者である被上告人に対して対抗できる正当な土地賃借権を有していなかった。建物買取請求権は、適法な賃借権の譲受人を保護する趣旨の規定である。したがって、対抗力のある賃借権を承継していない上告人は、同法条が定める「建物買取請求権を与えられる者」としての資格を欠くというべきである。
結論
上告人の建物買取請求権の行使は効力を生じない。上告を棄却する。
実務上の射程
借地権の譲渡について賃貸人の承諾(または代諾許可)が得られていない「無断譲受人」の状態では、建物買取請求権を行使できないことを明示した判例である。答案上では、買取請求権の帰属主体を確定する際の根拠として活用する。
事件番号: 昭和38(オ)958 / 裁判年月日: 昭和39年7月29日 / 結論: 棄却
賃借地上の建物の譲渡に伴い、地主の承諾なくして賃借権が譲渡された場合には、地主は建物譲渡人に対する賃料請求権を失わないけれども、現実に譲渡人より右賃料の支払を受けないかぎり、譲受人に対して賃料相当の損害金の請求ができる。
事件番号: 昭和36(オ)646 / 裁判年月日: 昭和38年4月23日 / 結論: 棄却
第三者が賃借土地の上に存する建物の所有権を取得した場合に、賃貸人が賃借権の譲渡を承諾しない間に賃貸借が賃料不払のため解除されたときは、借地法一〇条に基づく第三者の建物買取請求権はこれによつて消滅するものと解するのを相当とする。
事件番号: 昭和37(オ)294 / 裁判年月日: 昭和39年6月26日 / 結論: 棄却
借地権の無断譲渡を理由として土地賃貸借契約が解除されたのち地上建物を取得した第三者は、該建物の買取請求権を有しない。
事件番号: 昭和35(オ)1417 / 裁判年月日: 昭和36年8月17日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】建物の前主が借地権を有しない場合には、その建物の譲受人は、借地法10条(現行借地借家法13条に相当)に基づく建物買取請求権を行使することはできない。 第1 事案の概要:建物所有者Dは、本件土地に建物を新築したが、土地所有者(被上告人またはその前所有者)から新築についての承諾を得ておらず、本件土地に…