判旨
建物の前主が借地権を有しない場合には、その建物の譲受人は、借地法10条(現行借地借家法13条に相当)に基づく建物買取請求権を行使することはできない。
問題の所在(論点)
借地権が存在しない建物の譲受人が、借地法10条(建物買取請求権)に基づき土地所有者に対して建物の買い取りを請求できるか。
規範
建物買取請求権の行使が認められるためには、建物の譲渡人が当該土地について適法な借地権を有していることが必要である。借地権が存在しない建物所有者から建物を譲り受けた者は、建物買取請求権の保護の対象とはならない。
重要事実
建物所有者Dは、本件土地に建物を新築したが、土地所有者(被上告人またはその前所有者)から新築についての承諾を得ておらず、本件土地につき借地権を有していなかった。上告人は、借地権を有しないDから当該建物を譲り受け、土地所有者に対して建物の買取を請求した。
あてはめ
本件において、建物の前主であるDは土地所有者の承諾を得ておらず、土地についての借地権を有していなかったことが認定されている。借地法10条は借地権の存在を前提とする規定であるところ、譲渡人が借地権を有しない以上、その譲受人である上告人もまた同条の保護を受ける地位にないといえる。したがって、上告人による買取請求の主張は、同条の要件を欠くものとして斥けられるべきである。
結論
建物の前主が借地権を有しない場合、その譲受人は建物買取請求権を行使できない。
実務上の射程
現行の借地借家法13条(建物買取請求権)の解釈においても同様の理が妥当する。答案上は、買取請求権の主体が「借地権者」であることを認定する際、譲渡人の借地権の有無を起点とする判断枠組みとして活用できる。
事件番号: 昭和37(オ)295 / 裁判年月日: 昭和39年6月26日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】借地法10条(現行借地借家法14条)に基づく建物買取請求権は、賃貸人の承諾があれば第三者が借地権を取得し得る地位にあることを前提とするため、借地権消滅後に建物を取得した者には認められない。 第1 事案の概要:土地賃借人Dの地上建物が公売に付され、訴外Eが買得した。土地賃貸人Fは、Dに対し借地権の無…
事件番号: 昭和38(オ)1398 / 裁判年月日: 昭和39年9月8日 / 結論: 棄却
借地法第一〇条による買取請求権者を行使できるのは、建物所有を目的とする土地賃借権者が借地上に所有する建物等土地の附属物件をその賃借人から賃借権とともに譲り受けた者およびその者よりさらにその譲渡を受けた者に限られる。
事件番号: 昭和35(オ)1057 / 裁判年月日: 昭和36年5月26日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】賃借権の譲渡について賃貸人の承諾が得られない限り、民法612条に基づき、譲受人はその賃借権を賃貸人に対抗することができない。また、一時使用の賃貸借であることが確定された事案においては、借地法の適用を前提とする主張は認められない。 第1 事案の概要:上告人は、本件土地の賃借権を譲り受けたと主張して賃…
事件番号: 昭和37(オ)643 / 裁判年月日: 昭和38年1月31日 / 結論: 棄却
借地上の建物に対し通常の修理、模様替の範囲を超えた増改築が土地転借人によつて加えられ、建物の同一性を失うに至つた場合には、借地法第一〇条による建物買取請求権を行使することはできない。
事件番号: 昭和35(オ)221 / 裁判年月日: 昭和36年3月14日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】借地権者が借地法等の対抗要件を具備していない場合、第三者である新所有者の善意・悪意を問わず、借地権を対抗することはできない。 第1 事案の概要:宅地の所有者が交代し、新所有者が旧所有者から宅地を取得した。これに対し、以前から当該宅地を使用していた借地権者が、自らの借地権を新所有者に対して主張した。…