賃借地上の建物の譲渡に伴い、地主の承諾なくして賃借権が譲渡された場合には、地主は建物譲渡人に対する賃料請求権を失わないけれども、現実に譲渡人より右賃料の支払を受けないかぎり、譲受人に対して賃料相当の損害金の請求ができる。
賃借地上の建物の譲渡に伴い地主の承諾なくして賃借権が譲渡された場合に地主は右譲受人に対して賃料相当の損害金の請求ができるか。
民法612条,民法709条
判旨
賃借地上の建物が無断譲渡された場合、賃貸人は賃借人に対し依然として賃料請求権を有するが、現に賃料の支払を受けていない限り、無断譲受人に対して賃料相当額の損害賠償を請求できる。
問題の所在(論点)
賃借権の無断譲渡が行われた場合、賃貸人が元の賃借人に対して賃料請求権を保持していることをもって、無断譲受人に対する賃料相当損害金の請求が否定されるか。
規範
賃借地上の建物が無断譲渡された場合、賃貸人と賃借人(譲渡人)との間の賃貸借関係は依然として存続するため、賃貸人は賃借人に対し賃料請求権を失わない。しかし、賃貸人が現に賃料の支払を受けた場合を除き、単に賃料請求権を有するという事実だけでは、不法占有者たる譲受人に対する賃料相当額の損害の発生は妨げられない。
重要事実
賃借人Dは、賃貸人(被上告人)の承諾を得ることなく、借地上の建物を上告人Aに譲渡し、これに伴い賃借権も無断譲渡した。被上告人は、上告人Aに対し、土地の不法占有を理由として建物収去土地明渡および賃料相当損害金の支払を求めた。上告人Aは、被上告人が依然としてDに対する賃料請求権を有している以上、被上告人には損害が生じていないと主張した。
事件番号: 昭和38(オ)1462 / 裁判年月日: 昭和39年6月26日 / 結論: 棄却
賃貸人たる地主は、借地人に対し賃料請求権を有するとしても、いまだ借地人から右賃料の支払を受けていないかぎり、借地権の無断譲受人に対し賃料相当の損害賠償請求ができる。
あてはめ
本件において、上告人AがDから本件賃借権の譲渡を受けた後の賃料について、被上告人がDから実際に支払を受けた事実は主張・立証されていない。賃貸借関係が存続しているために理論上賃料請求権が発生しているとしても、現実に利得を得ていない以上、被上告人には賃料相当額の損害が生じているといえる。したがって、上告人Aによる不法占有と損害との間の因果関係は認められる。
結論
被上告人が現実に賃料の支払を受けていない以上、上告人Aは不法占有に基づき、被上告人に対し賃料相当損害金の支払義務を負う。上告人Aの上告は棄却される。
実務上の射程
無断譲受人の占有が賃貸人に対する関係で不法占有となることを前提に、不法行為に基づく損害賠償請求(民法709条)における損害の有無を判断する際の指標となる。賃貸借関係の存続という法的地位と、現実の出捐・利得という事実状態を区別して判断する実務上の指針を示すものである。
事件番号: 昭和33(オ)518 / 裁判年月日: 昭和35年9月20日 / 結論: 棄却
一 借地法第一〇条の建物買取請求権が行使された場合、土地賃貸人は、特段の事情がないかぎり、右買取請求権行使以前の期間につき賃料請求権を失うものではないけれども、これがため右期間中は建物取得者の敷地不法占有により賃料相当の損害を生じないとはいい得ない。 二 借地法第一〇条の建物買取請求権が行使された後、建物取得者は買取代…
事件番号: 昭和38(オ)1398 / 裁判年月日: 昭和39年9月8日 / 結論: 棄却
借地法第一〇条による買取請求権者を行使できるのは、建物所有を目的とする土地賃借権者が借地上に所有する建物等土地の附属物件をその賃借人から賃借権とともに譲り受けた者およびその者よりさらにその譲渡を受けた者に限られる。
事件番号: 昭和38(オ)1179 / 裁判年月日: 昭和39年6月26日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】借地上の建物を取得した第三者が建物買取請求権を行使する際、既に賃借人の債務不履行(賃料不払)により土地賃貸借契約が解除されている場合には、当該第三者は買取請求権を行使できない。 第1 事案の概要:上告人(第三者)は、借地上の建物を取得し、賃貸人に対して建物買取請求権を行使しようとした。しかし、その…