本訴請求は、建物所有者に収去義務の現存する建物の占有者に対し該建物からの退去を求める趣旨と解せられるから、右占有者が右建物の占有関係を離れてその敷地そのものの占有権原を主張しても、抗弁となりえない。
建物所有者に収去義務の現存する建物の占有者に対し該建物から退去を求める訴訟において右占有者が建物敷地に独立の占有権原を有するとの主張は抗弁となりえないとされた事例
民法206条,民訴法137条
判旨
土地所有者が建物所有者に対し、所有権に基づく妨害排除請求として建物収去土地明渡を求める場合、その建物の占有者は、建物所有者の土地占有が不法占有である以上、建物占有関係を離れた独自の土地占有権原を主張しても、退去請求を拒むことはできない。
問題の所在(論点)
土地所有者が、建物所有者に対して建物収去土地明渡を求める際に建物占有者に対して退去を請求する場合において、建物占有者が建物所有者から導き出される占有権原以外の「独自の土地占有権原」を主張して退去を拒むことができるか。
規範
土地所有者が、建物所有者に対する建物収去土地明渡請求に関連して、建物占有者に対し退去を求める場合、建物所有者の土地占有が不法占有であると認められるときは、建物占有者は建物収去義務の現存する建物の占有者として退去義務を負う。この場合、建物占有者が建物占有関係とは無関係に土地そのものの占有権原を主張したとしても、それは退去請求に対する有効な抗弁とはならない。
重要事実
土地所有者である被上告人が、土地を不法に占有して建物を所有している訴外Dに対し、所有権に基づき建物収去土地明渡を請求した。これに伴い、被上告人は当該建物の占有者である上告人らに対し、建物からの退去を求めた。上告人らは、自らが本件建物の所有者であると主張したが認められず、むしろ対外的にはDの所有(信託的帰属)が認められた。そこで上告人らは、建物の所有権とは別に、自らが土地自体を占有する独自の権原を有すると主張して争った。
事件番号: 昭和39(オ)1311 / 裁判年月日: 昭和40年7月23日 / 結論: 棄却
借地人が現に建物所有の目的で使用している土地を第三者が悪意で取得したときには、借地人は法定の対抗要件を備えなくても、借地権をもつて右悪意の土地取得者に対抗できる、との見解は採用できない。
あてはめ
本件において、建物の対外的な所有者は訴外Dであり、上告人らはその建物の占有者にすぎない。Dによる土地占有が不法占有であると認定される以上、Dは建物収去義務を負い、その建物を占有する上告人らは収去義務の履行を妨げる地位にある。上告人らが建物占有関係を離れて「土地そのものの占有権原」を主張したとしても、建物が収去されるべき運命にある以上、建物に居住・滞在し続ける権利を基礎付けることはできない。したがって、かかる主張は主張自体失当である。
結論
建物所有者の土地占有が不法占有であり、建物収去義務が認められる場合、建物占有者の独自の土地占有権原の主張は抗弁とならず、建物占有者は退去義務を免れない。
実務上の射程
土地所有権に基づく建物収去土地明渡請求において、建物占有者に対する退去請求が認められるための論理を示す。建物所有者に占有権原がないことが確定すれば、建物占有者が土地自体に何らかの権利(例えば通行地役権等)を持っていたとしても、建物に居座る理由にはならないという「建物収去」の絶対的優位性を確認する際に用いる。
事件番号: 昭和39(オ)708 / 裁判年月日: 昭和40年3月16日 / 結論: 棄却
家屋を賃借居住する者は、家屋敷地を占有する。
事件番号: 昭和33(オ)288 / 裁判年月日: 昭和35年6月7日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】建物を共有して土地を不法占有する者は、共同不法占有者の一人として、他の共有者の有無にかかわらず土地全体を明け渡す義務を負う。この場合、判決の既判力が他の共有者に及ばないことは、当該共有者に対する明渡し請求の可否に影響しない。 第1 事案の概要:上告人は、訴外Dほか1名と本件建物を共有し、当該建物の…
事件番号: 昭和38(オ)604 / 裁判年月日: 昭和40年1月12日 / 結論: 棄却
無断転借人が建物を建築した場合には、右建物について買取請求権は生じない。
事件番号: 昭和33(オ)568 / 裁判年月日: 昭和34年9月17日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】民法188条による権利の適法推定は、占有者が所有者に対して占有権原を主張する場合には適用されず、所有者に対抗できる正当な権原があることを別途立証する必要がある。 第1 事案の概要:上告人(占有者)は、本件土地を占有していたところ、被上告人(所有者)から土地の返還を求められた。上告人は、自身に借地権…