主位的申立として、建物から退去してその敷地の明渡しを求め、予備的申立として、建物収去・土地明渡しを求め、その請求原因として、原告は右土地は原告の所有であるといい、前者につき、被告は右建物を無断で建てて右土地を不法占有している者から借受けて居住し右土地を不法占有していると主張し、後者につき、被告は右建物の建築者から右建物を買受けて所有者となりその土地を不法占有していると主張する場合および主位的申立として、建物を収去・土地明渡しを求め、予備的申立として、右建物から退去してその敷地の明渡しを求め、その請求原因として、原告は右土地は原告の所有であるといい、前者につき、右建物は被告の所有であり、同人は建物を勝手に建てて土地を不法占有していると主張し、後者につき右建物を無断で建てて右土地を不法占有している者と同居して右土地を不法占有していると主張する場合には、原告の申立はいずれも土地所有権の存在を基本としていることには変りはなく、原告の右予備的申立は、その主たる申立との間に請求の基礎に変更がないものとして許されるべきである。
訴の変更が許容された事例。
民訴法232条1項
判旨
訴えの追加的変更において「請求の基礎に変更がない」といえるためには、変更後の請求が変更前の請求と事実上または法律上の基礎を共通にし、従前の訴訟資料を継続して利用できることを要するが、土地所有権に基づく明渡請求の態様(退去か建物収去か)の変更は、所有権の存在という共通の基礎を有するため許容される。
問題の所在(論点)
土地の所有権に基づく返還請求において、相手方の占有態様(建物所有による占有か、建物居住による占有か)の主張を切り替え、請求の内容を建物収去明渡しから退去明渡し(またはその逆)へ変更することが、旧民事訴訟法232条(現行143条)の「請求の基礎に変更がない」という要件を充足するか。
規範
訴えの変更(民事訴訟法143条1項)が許されるための要件である「請求の基礎に変更がない」とは、変更前後の両請求がその基礎となる社会的事実において共通性を有し、かつ、変更前の訴訟資料をそのまま変更後の請求の審理に利用できる場合をいう。土地所有権に基づく返還請求権という法的性質に変更がなく、占有の態様に関する主張の差異が副次的なものである場合には、請求の基礎に変更がないものと解すべきである。
事件番号: 昭和39(オ)573 / 裁判年月日: 昭和40年12月2日 / 結論: 棄却
訴の変更があつた場合においては、従前の訴訟資料はそのまま引きつがれると解するのが相当である。
重要事実
土地所有者である原告(被上告人)が、被告A1に対し、当初は「建物からの退去及び土地明渡し」を求めていたが、後に予備的請求として「建物を収去して土地を明渡すこと」を追加した。原告は、主位的請求では被告を建物借家人(不法占有者)と主張し、予備的請求では被告を建物所有者(不法占有者)と主張している。また、被告A2に対しても、当初の収去明渡し請求から退去明渡し請求へと予備的に変更した。これらの変更が「請求の基礎に変更がない」といえるかが争点となった。
あてはめ
本件における請求の変更は、いずれも原告の土地所有権の存在を基本としており、土地の不法占有を理由にその返還を求める点において共通している。主位的請求と予備的請求との間で、被告が建物の所有者であるか単なる居住者であるかという占有態様の認定に相違はあるものの、土地所有権に基づく明渡しという法的構成の根幹は変わらない。したがって、従前の審理で得られた訴訟資料をそのまま利用することが可能であり、被告に防御上の不利益を与えるものでもないため、請求の基礎に変更がないものと認められる。
結論
土地所有権に基づく明渡請求において、収去明渡しと退去明渡しの間で請求を変更・追加することは、土地所有権という共通の基礎を有するため、請求の基礎に変更がないものとして許容される。
実務上の射程
訴えの変更の可否が争われる場面において、本判例は「同一の権利関係(所有権等)から生ずる主張のバリエーション」であれば広く変更を認める傾向を示している。実務上は、建物収去・土地明渡しと建物退去・土地明渡しを予備的に併合して提出する際に、本判決の法理を援用して訴訟経済の観点から適法性を基礎付けることができる。
事件番号: 昭和32(オ)594 / 裁判年月日: 昭和36年12月26日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】訴の変更が「請求の基礎」を欠く場合であっても、被告の抗弁に含まれる事実を請求原因とする場合はその欠缺が補充されるが、新請求の審理に新たな証拠調べを要し訴訟手続を著しく遅滞させるときは、当該変更は許されない。 第1 事案の概要:上告人(原告)は、被上告人(被告)に対し、土地の不法占有を理由に建物収去…
事件番号: 昭和27(オ)52 / 裁判年月日: 昭和27年7月15日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】土地の明渡請求において、請求の根拠を借地権に基づく侵害排除から土地所有権に基づく代位請求に変更することは、請求の原因の変更にあたる。しかし、当該変更が記載された準備書面に基づき口頭弁論で陳述が行われた場合には、訴えの変更の手続として適法である。 第1 事案の概要:原告(被上告人)は、被告(上告人)…
事件番号: 昭和34(オ)768 / 裁判年月日: 昭和37年5月29日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】土地賃貸借契約において建物の種類や構造を制限する特約がある場合、賃借人がこれに違反して建物を建築したときは、当該特約違反を理由とする賃貸借契約の解除が有効に認められる。 第1 事案の概要:上告人(賃借人)は、被上告人(賃貸人)との間で土地賃貸借契約を締結した際、建物の種類や構造を制限する旨の特約(…
事件番号: 昭和24(オ)174 / 裁判年月日: 昭和25年3月28日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】給付判決における目的物の表示が簡略であっても、現場に臨むことで対象範囲を判別でき、強制執行等に支障がない程度に特定されていれば、給付の範囲が確定していないとはいえない。 第1 事案の概要:土地所有者である被上告人らが、隣接する各自の所有地(イ地及びロ地)上に家屋を所有して占有する上告人らに対し、建…