判旨
土地の明渡請求において、請求の根拠を借地権に基づく侵害排除から土地所有権に基づく代位請求に変更することは、請求の原因の変更にあたる。しかし、当該変更が記載された準備書面に基づき口頭弁論で陳述が行われた場合には、訴えの変更の手続として適法である。
問題の所在(論点)
訴訟の途中で、建物収去土地明渡請求の根拠を「固有の借地権に基づく請求」から「土地所有権の代位行使」に変更することが「請求の原因」の変更(民事訴訟法143条1項参照)にあたるか。また、その手続的適法性が認められるための要件は何か。
規範
請求の基礎となる法律上の根拠(権利関係)を、固有の借地権に基づく物権的請求から、土地所有者の権利を代位行使する所有権に基づく請求へと切り替えることは、訴訟物である権利の主張を変更するものであり、「請求の原因」の変更にあたる。かかる変更を有効に行うためには、変更後の請求原因事実を記載した書面(準備書面等)を口頭弁論において陳述することを要する。
重要事実
原告(被上告人)は、被告(上告人)に対し建物を収去して土地を明け渡すよう求めた。第一審では、自身が有する「借地権」に基づきその侵害を排除すると主張していた。ところが、控訴審において、原告は「借地権者として土地所有者に代位して」所有権に基づく明渡しを求める旨の主張に切り替えた。この変更事実は、昭和26年10月29日付の準備書面に記載され、同月31日の口頭弁論において実際に陳述された。
あてはめ
本件では、請求の根拠を借地権から土地所有権(代位行使)へと変更しており、権利の発生根拠となる法律上の地位を異にするため、請求の原因に変更が生じたといえる。しかし、被上告人は当該変更内容を記載した準備書面を提出しており、かつ原審の口頭弁論において当該準備書面に基づき陳述を行っている。これは、訴えの変更手続における書面提出および口頭の陳述という適法な手続要件を充たすものである。
結論
請求の根拠の変更は「請求の原因」の変更にあたるが、準備書面の陳述によって適法に行われたため、上告を棄却する。
事件番号: 昭和39(オ)573 / 裁判年月日: 昭和40年12月2日 / 結論: 棄却
訴の変更があつた場合においては、従前の訴訟資料はそのまま引きつがれると解するのが相当である。
実務上の射程
訴訟物の特定に関する旧訴訟物理論を前提とする判断である。訴訟物の変更を伴う主張の切り替えがなされた場合でも、口頭弁論における準備書面の陳述等によって手続的保障が図られていれば、訴えの変更として有効に認められることを示している。実務上は、訴状の変更を伴わない段階的な主張変更が「請求の原因の変更」に該当するかを検討する際の基準となる。
事件番号: 昭和34(オ)474 / 裁判年月日: 昭和37年6月7日 / 結論: 棄却
主位的申立として、建物から退去してその敷地の明渡しを求め、予備的申立として、建物収去・土地明渡しを求め、その請求原因として、原告は右土地は原告の所有であるといい、前者につき、被告は右建物を無断で建てて右土地を不法占有している者から借受けて居住し右土地を不法占有していると主張し、後者につき、被告は右建物の建築者から右建物…
事件番号: 昭和44(オ)1017 / 裁判年月日: 昭和47年2月10日 / 結論: 棄却
土地賃貸借契約成立の事情として、賃貸人は、当初、賃借人の借地申入れに対し、他人に土地を貸すときは回収が困難になるとして賃貸することに反対していたが、賃借人や仲介に入つた知人から、一時しのぎに僅かな土地でもよいし、何時でも取り払える仮小屋の建物でよいから」と執拗に懇請され、やむなくバラツク建物に限り建築を許す趣旨で、約六…
事件番号: 昭和26(オ)747 / 裁判年月日: 昭和28年9月17日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】上告審において、原判決の事実認定に沿わない独自の事実を前提として憲法違反を主張することは、上告の適法な理由とはならない。 第1 事案の概要:上告人は、原判決が認定した事実とは異なる事実を想定し、その想定事実に基づいて憲法違反(違憲)を主張して上告を提起した。 第2 問題の所在(論点):原判決の事実…
事件番号: 昭和46(オ)659 / 裁判年月日: 昭和47年7月18日 / 結論: 破棄差戻
借地上の建物の所有権が第三者に移転する場合には、任意譲渡であると競売等国家機関の介入による場合であるとを問わず、特別の事情がないかぎり、その敷地の借地権は、建物の所有権とともに当然に第三者に移転するものと解すべく、右特別の事情の存することの主張立証責任はこれを自己の利益に援用する者の側にあるものというべきである。