土地賃貸借契約成立の事情として、賃貸人は、当初、賃借人の借地申入れに対し、他人に土地を貸すときは回収が困難になるとして賃貸することに反対していたが、賃借人や仲介に入つた知人から、一時しのぎに僅かな土地でもよいし、何時でも取り払える仮小屋の建物でよいから」と執拗に懇請され、やむなくバラツク建物に限り建築を許す趣旨で、約六坪の土地を期間五年を限つて賃貸することを承諾したものであることが認められる等原審認定の事実関係のもとにおいては、右土地賃貸借契約は、一時使用のため借地権を設定したこと明らかな場合にあたると解するのが相当である。
土地賃貸借契約が一時使用のための借地権を設定したものと認められた事例
借地法9条
判旨
借地借家法25条(旧借地法9条)の「一時使用」にあたるかは、単に建築物の種類だけでなく、賃借の経緯や合意内容等を総合考慮して判断すべきである。また、民事訴訟法上の自白の成否については、当該事実が主要事実に該当するか否かにより決せられる。
問題の所在(論点)
1.借地法9条(一時使用)の成否を判断する際の考慮要素。2.第一審での相手方主張に沿う陳述が、後に争点となった「一時使用目的」という事実に関する自白の撤回制限に抵触するか。
規範
借地法9条(現行借地借家法25条)の「一時使用ノ為借地権ヲ設定シタルコト明ナル場合」に該当するか否かは、地上建物の構造(仮設建築物か否か等)のみならず、賃貸借成立の経緯、賃貸借期間、賃料の額、借地上の建物の種類・構造、その他諸般の事情を総合的に考慮して判断する。また、裁判上の自白が成立し、その撤回が制限されるのは、争点となっている主要事実についての主張が一致した場合に限られる。
重要事実
上告人(賃借人)は、被上告人の先代Dから土地を賃借した。上告人は、当初の契約時および更新時に、県知事宛の仮設建築物認可申請書を作成するなどしていたが、後に本件賃貸借は普通建物所有を目的とするものであると主張して争った。第一審において、被上告人側は賃料不払等を理由とした契約解除を主張していたが、その際「本件賃貸借は普通建物所有目的である」との前提に立った主張を行っていた。その後、被上告人側は控訴審において「一時使用目的の賃貸借である」との主張に転換したため、上告人はこれが自白の撤回にあたり許されないと主張した。
事件番号: 昭和43(オ)52 / 裁判年月日: 昭和43年11月19日 / 結論: 棄却
一時使用の目的で賃借した土地上に建築された仮設建物を買い受けるとともに賃貸人の承諾なしに賃借権の譲渡を受けた者との間で、賃貸人が土地の一部を右譲受人に売却し、他を明け渡す旨の約束ができたが、譲受人が代金を払わないため右売買契約が解除され、そのため右土地の明渡について話合がされ、結局一〇年の賃貸借契約が締結されるに至つた…
あてはめ
1.一時使用の点について、原審は仮設建築物の認可申請という形式的事実だけでなく、賃借に至る経緯や合意内容を総合的に斟酌して判断しており、正当である。2.自白の点について、第一審において被上告人の先代が解除を求めていた段階では、本件賃借権が一時使用目的か普通建物目的かは「主要事実」となっていなかった。したがって、第一審での主張内容と矛盾する主張を控訴審で行ったとしても、それは主要事実についての自白の撤回には該当せず、自由に行うことができる。
結論
本件賃貸借は一時使用のためのものであると認められ、また被上告人による主張の変更は自白の撤回にはあたらないため、期間満了による明渡請求は認められる。
実務上の射程
借地権の存続期間等の規定を排除する「一時使用」の認定について、総合考慮説を採る実務の定石を示している。民事訴訟法上は、自白の対象が主要事実に限定されること、および紛争の段階によって何が主要事実に該当するか(論点化しているか)が変わり得ることを示唆しており、自白の成否を検討する際の指標となる。
事件番号: 昭和36(オ)378 / 裁判年月日: 昭和37年2月16日 / 結論: 棄却
経済的変動により賃料額が不相当となつたときは、協定のうえこれを増減することができるし、期間を更新することもできる旨の約款があつても、その賃貸借を一時使用のためのものと認定できないことはない。
事件番号: 昭和41(オ)1259 / 裁判年月日: 昭和42年2月24日 / 結論: 棄却
賃料が数次にわたつて値上げされたことや賃料が当該借地の固定資産税を上廻つていることは、一時使用のための賃貸借契約であると認定するについて妨げとなるものではない。
事件番号: 昭和33(オ)273 / 裁判年月日: 昭和33年11月27日 / 結論: 棄却
一 仮建築の建物を建てて使用するため、期間を一年とし、当事者協議の上更新し得る約で土地を賃貸したところ、賃借人が、無断で本建築をしたので、賃貸人から家屋収去土地返還の調停を申立てた結果、賃貸期間を調停成立以後約八年とし期間満了のとき賃借人所有の地上建物は賃貸人に贈与する旨の調停が成立した場合、右賃貸借は、一時使用のため…
事件番号: 昭和44(オ)800 / 裁判年月日: 昭和45年3月12日 / 結論: その他
戦災による地上建物の焼失後にその居住者を含む多数の者が権原なく土地を占有し、土地所有者は、その罹災者たる立場に同情したが、従来右士地の使用に関し多年紛争を繰り返して、右罹災当時も裁判上の和解により建物居住者に対する明渡を猶予中であつたという事情に鑑み、暫定的にのみ右占有者らの土地使用を許諾することとし、占有者らもその趣…