一 仮建築の建物を建てて使用するため、期間を一年とし、当事者協議の上更新し得る約で土地を賃貸したところ、賃借人が、無断で本建築をしたので、賃貸人から家屋収去土地返還の調停を申立てた結果、賃貸期間を調停成立以後約八年とし期間満了のとき賃借人所有の地上建物は賃貸人に贈与する旨の調停が成立した場合、右賃貸借は、一時使用のため借地権を設定したことが明らかな場合にあたる。 二 一時使用のため借地権を設定したことが明らかな場合、借地権者は借地法第一〇条に定める建物等買取請求権を有しない。
一 一時使用のため借地権を設定したことが明らかな場合にあたるとされた事例。 二 一時使用のため借地権を設定したことが明らかな場合と建物等買取請求権。
借地法9条,借地法10条
判旨
一時使用のために設定された借地権については、借地法9条(現行借地借家法25条)の規定に基づき、同法10条(現行法13条)の建物買取請求権の規定は適用されない。
問題の所在(論点)
一時使用のために設定された借地権(借地法9条、現行借地借家法25条)について、借地法10条(現行借地借家法13条)に定める建物買取請求権の規定が適用されるか。
規範
借地権が「一時使用のために設定されたこと」が明らかな場合、借地法上の建物買取請求権に関する規定は適用されない。これは、一時的な利用を目的とする賃貸借において、存続期間満了後の建物買い取りを認めると、貸主に対して不当な負担を強いることになり、一時使用の趣旨に反するためである。
重要事実
上告人は、一時使用を目的として設定された借地権に基づき土地を賃借していた。賃貸借期間の終了に際し、上告人は借地法10条に基づき、土地上の建物について賃貸人に対し建物買取請求権を行使できると主張して争った。
事件番号: 昭和33(オ)456 / 裁判年月日: 昭和35年3月4日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】建物の所有を目的とする土地の賃貸借であっても、それが一時使用のためのものであることが明らかな場合には、借地法(現・借地借家法)の適用はなく、民法617条に基づく解約申入れによって終了し得る。 第1 事案の概要:被上告人(賃貸人)は、上告人(賃借人)に対し、当初は木箱集積場所として「明渡要求次第無条…
あてはめ
本件賃貸借は、原審が認定した諸般の事情に照らせば、一時使用のために借地権を設定したことが明らかである。借地法9条は一時使用目的の借地権を同法の大部分の規定の適用除外としており、これには建物買取請求権も含まれる。したがって、一時使用目的であることが明らかな本件においては、建物買取請求権の発生を認める余地はない。
結論
一時使用のための借地権を有する者は、借地法10条に定める建物買取請求権を有しない。
実務上の射程
借地借家法25条が適用される「一時使用目的」の認定がなされた場合、建物買取請求権だけでなく、更新拒絶の正当事由や存続期間の規定等も適用除外となる。答案上は、まず一時使用目的の該当性を契約期間や目的、権利金の有無等の事実から認定し、その帰結として買取請求権を否定する流れで活用する。
事件番号: 昭和33(オ)279 / 裁判年月日: 昭和33年7月11日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】不動産の明渡請求が権利の濫用(民法1条3項)に当たるか否かは、当該請求を認めることが社会通念上著しく正当性を欠くといえるか等の事実関係を総合考慮して判断すべきである。 第1 事案の概要:上告人(被告)に対し、被上告人(原告)が本件建物の明渡しを求めた事案である。原審において認定された事実関係の詳細…
事件番号: 昭和28(オ)393 / 裁判年月日: 昭和30年11月1日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】戦時罹災土地物件令に基づく賃借権者が、後に同一土地について一時使用の賃貸借契約を締結した場合、特段の事情がない限り、先行する物件令上の賃借権を放棄したものと認められる。 第1 事案の概要:上告人(関)は、戦時罹災土地物件令(物件令)4条1項に基づき、本件土地の一部について賃借権を取得していた。しか…
事件番号: 昭和36(オ)43 / 裁判年月日: 昭和36年7月6日 / 結論: 棄却
土地所有者が仮設建築物を所有して土地を不法占有する者を相手方として土地明渡の調停を申立てたところ、その建物の居住者が利害関係人として期日に出頭し、なお居住者が多数あることが判明したので、事態の解決を計るため、調停外において右居住者中の有力者一名と期間を一〇年とする土地賃貸借契約を結び、一〇年後には必ず返地することを確約…
事件番号: 昭和33(オ)685 / 裁判年月日: 昭和34年5月29日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】借地借家法の適用を排除する「一時使用のための借地権」に該当するか否かは、賃貸借の目的、期間、建物設備の種類、賃貸借成立の経緯等を総合的に考慮して判断される。 第1 事案の概要:上告人(賃借人)と被上告人(賃主)との間で本件土地の賃貸借契約が締結された。原審(東京高判昭33・3・25)によれば、契約…