判旨
戦時罹災土地物件令に基づく賃借権者が、後に同一土地について一時使用の賃貸借契約を締結した場合、特段の事情がない限り、先行する物件令上の賃借権を放棄したものと認められる。
問題の所在(論点)
物件令に基づき取得した賃借権が、後に締結された一時使用の賃貸借契約によって放棄(消滅)したと認められるか。また、それに伴い処理法に基づく買取請求権が否定されるか。
規範
既存の強行法規的保護を伴う借地権を有する者が、後に当該借地権と相容れない一時使用の賃貸借契約を任意に締結した場合には、権利の放棄という確実な意思表示、あるいは黙示の合意があったものと解して、先行する借地権を消滅させることができる。
重要事実
上告人(関)は、戦時罹災土地物件令(物件令)4条1項に基づき、本件土地の一部について賃借権を取得していた。しかしその後、上告人は被上告人との間で、本件土地につき一時使用の賃貸借契約を締結した。契約の際、上告人の押印がない土地使用契約書が作成されたが、原審は本人の供述等の諸般の証拠に基づき、一時使用の賃貸借契約の成立を認定した。これに対し上告人は、物件令に基づく賃借権が依然として存続することを前提に、罹災都市借地借家臨時処理法(処理法)上の買取請求権等を主張した。
あてはめ
上告人は、被上告人との間で新たに本件土地の一時使用を目的とする賃貸借契約を締結している。この事実は、従前の物件令に基づく法的な賃借権(恒常的な利用を前提とするもの)の行使を継続せず、新たに設定された一時使用の合意に従うという意思を表示したものと評価できる。したがって、一時使用の賃貸借契約の成立により、先行する物件令上の賃借権は放棄されたとみるのが相当である。その結果、物件令上の権利を前提とする処理法32条の賃借申出権および同条2項の買取請求権も、その前提を欠くに至る。
結論
物件令上の賃借権は一時使用の賃貸借契約成立により放棄されたものと認められる。したがって、同権利を前提とする買取請求権の主張は認められない。
事件番号: 昭和33(オ)273 / 裁判年月日: 昭和33年11月27日 / 結論: 棄却
一 仮建築の建物を建てて使用するため、期間を一年とし、当事者協議の上更新し得る約で土地を賃貸したところ、賃借人が、無断で本建築をしたので、賃貸人から家屋収去土地返還の調停を申立てた結果、賃貸期間を調停成立以後約八年とし期間満了のとき賃借人所有の地上建物は賃貸人に贈与する旨の調停が成立した場合、右賃貸借は、一時使用のため…
実務上の射程
新旧の契約関係が並立する場合に、後の契約(特に一時使用等、従前より不利な条件の契約)への切り替えが先行する強力な借地権の放棄とみなされるかという場面で活用できる。意思表示の解釈として、新たな契約締結という事実から「権利放棄」を導く論理を示す際に参照すべきである。
事件番号: 昭和28(オ)1043 / 裁判年月日: 昭和30年2月18日 / 結論: 棄却
罹災都市借地借家臨時処理法第二条に基く賃借権は、その登記および地上建物の登記がなくても、右賃借権設定後その土地につき所有権取得の登記をした第三取得者に対抗し得る。
事件番号: 昭和28(オ)1118 / 裁判年月日: 昭和30年2月8日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】罹災都市借地借家臨時処理法10条に基づく借地権の対抗要件の成否は、通常の借地権の対抗に関する一般原則とは異なる独自の特別法上の規律による。 第1 事案の概要:上告人は所有権に基づき土地の明け渡しを請求したが、原審は罹災都市借地借家臨時処理法10条を適用し、被上告人が借地権を第三者(上告人)に対抗で…
事件番号: 昭和36(オ)43 / 裁判年月日: 昭和36年7月6日 / 結論: 棄却
土地所有者が仮設建築物を所有して土地を不法占有する者を相手方として土地明渡の調停を申立てたところ、その建物の居住者が利害関係人として期日に出頭し、なお居住者が多数あることが判明したので、事態の解決を計るため、調停外において右居住者中の有力者一名と期間を一〇年とする土地賃貸借契約を結び、一〇年後には必ず返地することを確約…
事件番号: 昭和30(オ)297 / 裁判年月日: 昭和32年2月7日 / 結論: 棄却
土地所有者が、その土地の一部を建物所有の目的で賃貸し、賃借人がこれに店舗を建築した後残りの部分に居宅を建築することを黙認していた場合に、契約の当初、右土地が特別都市計画法による区画整理区域内にありその一部が道路敷地となることに決定していたため、賃貸人は、右区画整理実施の時まで一時賃貸する意思で契約し、残りの部分について…