土地所有者が仮設建築物を所有して土地を不法占有する者を相手方として土地明渡の調停を申立てたところ、その建物の居住者が利害関係人として期日に出頭し、なお居住者が多数あることが判明したので、事態の解決を計るため、調停外において右居住者中の有力者一名と期間を一〇年とする土地賃貸借契約を結び、一〇年後には必ず返地することを確約したときは、たとい契約に際し権利金を授受し、その後賃料を増額したことがあつても、借地法第九条にいう一時使用のため借地権を設定したこと明らかな場合に該当する。
一時使用のための借地権の事例。
借地法9条
判旨
借地法9条(現借地借家法25条)の一時使用目的の借地権設定が認められる場合、権利金の授受や賃料の増額があったとしても、直ちにその一時使用の性質が否定されるものではない。
問題の所在(論点)
借地法9条(現行法25条)の「一時使用のため借地権を設定したことが明らかである場合」の認定において、権利金の授受や賃料の増額という事実がその判断にどのような影響を及ぼすか。
規範
借地法9条(一時使用のための借地権)の成否は、借地権設定の目的、期間、地上建物の種類・構造等を総合考慮して、客観的に一時使用のためと認められるか否かによって判断される。この点、権利金の授受や賃料の増額といった事実は、必ずしも一時使用の合意と矛盾するものではなく、他の諸事情から一時使用の目的が明白であれば、その認定を左右しない。
重要事実
上告人と被上告人との間で土地賃貸借契約が締結されたが、当該契約が「臨時設備その他一時使用のため借地権を設定したことが明らかである場合」(借地法9条)に該当するかが争われた。その際、当該契約において権利金の支払いが行われ、かつ後に賃料の増額がなされていたという事実が存在した。
事件番号: 昭和29(オ)346 / 裁判年月日: 昭和30年6月9日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】借地法9条(現・借地借家法25条)の「一時使用」にあたるかは、賃貸借の目的、期間、地上建物の種類・構造、賃料の多寡等から客観的に判断される。本判決は、原審の認定した事実関係に基づき、本件土地の賃貸借が一時使用のためのものであると認めることが可能であると判示し、上告を棄却した。 第1 事案の概要:本…
あてはめ
本件において、原審は事実関係に基づき、本件賃貸借が一時使用目的であることを正当に認定している。上告人は、権利金の授受や賃料の増額があったことをもって一時使用の性質を否定すべきと主張するが、これらの事実は一時使用の目的と必ずしも排斥し合うものではない。したがって、権利金の授受等の事実があったとしても、一時使用のための借地権設定であるとの判断は維持される。
結論
本件賃貸借は借地法9条の一時使用のための借地権設定に該当し、権利金の授受や賃料増額の事実はその認定を妨げない。
実務上の射程
借地借家法25条の適用の有無を検討する際、対価関係(権利金・賃料)の態様のみをもって直ちに「一時使用」を否定してはならないという実務指針を示す。答案上は、一時使用の客観的状況(利用目的や期間等)が明確であれば、権利金の存在等の不利な事実を排斥する論拠として活用できる。
事件番号: 昭和40(オ)551 / 裁判年月日: 昭和42年3月16日 / 結論: 棄却
神社の境内地を終戦直後に区画整理施行日までを期限としてマーケツト建設のため賃貸した場合には、権利金代りの寄付をうけ、中途賃料の増額が行われたとしても借地法第九条にいう「一時使用ノ為借地権ヲ設定シタルコト明ナル場合」にあたる。
事件番号: 昭和36(オ)378 / 裁判年月日: 昭和37年2月16日 / 結論: 棄却
経済的変動により賃料額が不相当となつたときは、協定のうえこれを増減することができるし、期間を更新することもできる旨の約款があつても、その賃貸借を一時使用のためのものと認定できないことはない。
事件番号: 昭和33(オ)273 / 裁判年月日: 昭和33年11月27日 / 結論: 棄却
一 仮建築の建物を建てて使用するため、期間を一年とし、当事者協議の上更新し得る約で土地を賃貸したところ、賃借人が、無断で本建築をしたので、賃貸人から家屋収去土地返還の調停を申立てた結果、賃貸期間を調停成立以後約八年とし期間満了のとき賃借人所有の地上建物は賃貸人に贈与する旨の調停が成立した場合、右賃貸借は、一時使用のため…
事件番号: 昭和36(オ)220 / 裁判年月日: 昭和36年9月21日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】仮設建物所有を目的とした土地賃貸借について、その実態が一時使用目的であることが明らかな場合には、借地法の適用を受けない一時使用目的の借地権(借地借家法25条参照)として認められる。 第1 事案の概要:本件土地賃貸借は、仮設建物を所有することを目的として締結された。賃貸借期間の終了後、被上告人(賃貸…