判旨
仮設建物所有を目的とした土地賃貸借について、その実態が一時使用目的であることが明らかな場合には、借地法の適用を受けない一時使用目的の借地権(借地借家法25条参照)として認められる。
問題の所在(論点)
仮設建物所有を目的とした土地賃貸借が、借地法上の保護を受ける通常の借地権にあたるか、それとも「一時使用のために借地権を設定したことが明らかな場合」にあたり、期間等の制限を受けないか。
規範
建物所有を目的とする土地賃貸借であっても、賃貸借の動機、目的、建物の種類・構造、賃貸借期間等の諸客観的事実を総合考慮し、一時的使用のために設定されたことが明らかな場合には、通常の借地権としての存続期間等の規定は適用されない。
重要事実
本件土地賃貸借は、仮設建物を所有することを目的として締結された。賃貸借期間の終了後、被上告人(賃貸人)が賃料相当額を受領していたものの、上告人(賃借人)らはこれが賃貸借の更新にあたると主張した。また、上告人らは一時使用目的ではないことを前提に、賃貸人による明渡請求は権利の濫用であると主張して争った。
あてはめ
本件賃貸借は、その目的が「仮設建物」の所有に限定されている。仮設建物は性質上、永続的な利用を前提としないものであり、このような建物の所有を目的とする賃貸借は、客観的事実関係に照らして一時使用目的のものであることが明らかであると解される。また、賃貸人が終了後に賃料相当額を受領していた事実があっても、直ちに賃貸借の更新があったとは認められない。
結論
本件賃貸借は一時使用目的の借地権であり、借地法等の更新や期間に関する規定の適用はない。したがって、更新の主張や、それを前提とした権利濫用の主張は認められず、上告を棄却する。
実務上の射程
事件番号: 昭和33(オ)456 / 裁判年月日: 昭和35年3月4日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】建物の所有を目的とする土地の賃貸借であっても、それが一時使用のためのものであることが明らかな場合には、借地法(現・借地借家法)の適用はなく、民法617条に基づく解約申入れによって終了し得る。 第1 事案の概要:被上告人(賃貸人)は、上告人(賃借人)に対し、当初は木箱集積場所として「明渡要求次第無条…
仮設建物(プレハブや展示用パビリオン等)の所有目的であれば、一時使用目的(借地借家法25条)が認められやすいことを示唆する。ただし、実務上は「客観的に一時使用であることが明らか」である必要があるため、契約書上の文言だけでなく、建物の構造や利用目的の具体性を慎重に検討する際の指標となる。
事件番号: 昭和29(オ)346 / 裁判年月日: 昭和30年6月9日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】借地法9条(現・借地借家法25条)の「一時使用」にあたるかは、賃貸借の目的、期間、地上建物の種類・構造、賃料の多寡等から客観的に判断される。本判決は、原審の認定した事実関係に基づき、本件土地の賃貸借が一時使用のためのものであると認めることが可能であると判示し、上告を棄却した。 第1 事案の概要:本…
事件番号: 昭和36(オ)43 / 裁判年月日: 昭和36年7月6日 / 結論: 棄却
土地所有者が仮設建築物を所有して土地を不法占有する者を相手方として土地明渡の調停を申立てたところ、その建物の居住者が利害関係人として期日に出頭し、なお居住者が多数あることが判明したので、事態の解決を計るため、調停外において右居住者中の有力者一名と期間を一〇年とする土地賃貸借契約を結び、一〇年後には必ず返地することを確約…
事件番号: 昭和37(オ)995 / 裁判年月日: 昭和39年2月25日 / 結論: 棄却
一 一時使用のための土地賃借人が七〇才をこえる老人であるからといつて、これに対し右賃貸借を解除して建物収去土地明渡を求めることは、原審確定の事実関係のもとで権利濫用とはいえない。 二 借地契約にあたつて賃借人が第三者の無断建築物を買い取り右居住者を立ち退かせる約定があり、賃借人において、これを買い取つたといういきさつが…
事件番号: 昭和29(オ)7 / 裁判年月日: 昭和32年9月19日 / 結論: 破棄差戻
【結論(判旨の要点)】建物の売買に際し、買主が将来の一定期日までに建物を取り壊して運搬することを約し、その期日までの短期間に限り土地を賃貸した場合は、一時使用のための借地権(旧借地法9条)に該当する。このような一時使用の属性は契約の本質に関わるため、前提事実の認識に誤りがあれば民法95条の錯誤無効を招き得る。 第1 事…