判旨
建物の所有を目的とする土地の賃貸借であっても、それが一時使用のためのものであることが明らかな場合には、借地法(現・借地借家法)の適用はなく、民法617条に基づく解約申入れによって終了し得る。
問題の所在(論点)
建物所有を目的とする土地賃貸借において、一時使用目的であることが明らかな場合、民法617条による解約申入れが認められるか、あるいは借地法等の存続期間に関する規定が適用されるか。
規範
建物の所有を目的とする土地賃貸借において、その使用が「一時使用のためであること」が明らかな場合には、特別法(借地法等)による保護の対象外となり、期間の定めのない賃貸借であれば民法617条に基づく解約申入れによる契約の終了が認められる。
重要事実
被上告人(賃貸人)は、上告人(賃借人)に対し、当初は木箱集積場所として「明渡要求次第無条件で退去する」との約定で土地を無償で貸し出した。その後、上告人が地上に無断でバラック建物を建築したが、被上告人はこれを事後承諾し、謝礼金名目で地代を受領するようになった。これにより、契約は建物所有を目的とする賃貸借に変更されたが、その実態は木箱集積およびバラック建物所有を目的とする一時的なものであった。
あてはめ
本件では、当初の契約が「明渡要求があれば無条件で退去する」という極めて暫定的な合意に基づいていたこと、および建築されたのがバラック建物であったことから、建物所有目的であっても一時使用のためであることは明らかといえる。このような場合、通常の借地権のような強力な存続期間の保護を与える必要性は乏しく、民法の一般原則に従い解約申入れの効力が生じるものと解される。
結論
本件賃貸借は一時使用目的であることが明らかであるため、民法617条による解約申入れが有効であり、契約は終了する。
事件番号: 昭和36(オ)220 / 裁判年月日: 昭和36年9月21日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】仮設建物所有を目的とした土地賃貸借について、その実態が一時使用目的であることが明らかな場合には、借地法の適用を受けない一時使用目的の借地権(借地借家法25条参照)として認められる。 第1 事案の概要:本件土地賃貸借は、仮設建物を所有することを目的として締結された。賃貸借期間の終了後、被上告人(賃貸…
実務上の射程
借地借家法25条(一時使用目的の借地権)の適用場面に関する判断枠組みを示す。建物所有を目的とする以上、本来は借地借家法が適用されるのが原則だが、建物の構造(バラック等)や契約締結の経緯から一時性が明白な場合には、例外的に民法の規定のみで処理できるとする射程を有する。
事件番号: 昭和33(オ)273 / 裁判年月日: 昭和33年11月27日 / 結論: 棄却
一 仮建築の建物を建てて使用するため、期間を一年とし、当事者協議の上更新し得る約で土地を賃貸したところ、賃借人が、無断で本建築をしたので、賃貸人から家屋収去土地返還の調停を申立てた結果、賃貸期間を調停成立以後約八年とし期間満了のとき賃借人所有の地上建物は賃貸人に贈与する旨の調停が成立した場合、右賃貸借は、一時使用のため…
事件番号: 昭和37(オ)995 / 裁判年月日: 昭和39年2月25日 / 結論: 棄却
一 一時使用のための土地賃借人が七〇才をこえる老人であるからといつて、これに対し右賃貸借を解除して建物収去土地明渡を求めることは、原審確定の事実関係のもとで権利濫用とはいえない。 二 借地契約にあたつて賃借人が第三者の無断建築物を買い取り右居住者を立ち退かせる約定があり、賃借人において、これを買い取つたといういきさつが…
事件番号: 昭和36(オ)43 / 裁判年月日: 昭和36年7月6日 / 結論: 棄却
土地所有者が仮設建築物を所有して土地を不法占有する者を相手方として土地明渡の調停を申立てたところ、その建物の居住者が利害関係人として期日に出頭し、なお居住者が多数あることが判明したので、事態の解決を計るため、調停外において右居住者中の有力者一名と期間を一〇年とする土地賃貸借契約を結び、一〇年後には必ず返地することを確約…
事件番号: 昭和32(オ)569 / 裁判年月日: 昭和34年5月15日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】借地法(現行の借地借家法25条相当)にいう「建物所有を目的とする賃貸借」に該当しないか、あるいは「一時使用のための借地権」と認められる場合には、存続期間に関する法定の制限を受けず、約定期間の満了により賃貸借が終了する。 第1 事案の概要:本件賃貸借契約において、当事者は約定の期間満了による契約終了…