経済的変動により賃料額が不相当となつたときは、協定のうえこれを増減することができるし、期間を更新することもできる旨の約款があつても、その賃貸借を一時使用のためのものと認定できないことはない。
賃料の増減、期間更新の約款ある賃貸借契約が一時使用のためのものと認められた事例
借家法9条
判旨
賃貸借が一時使用のためのものであるかは、契約書上の増減額条項や更新条項の有無のみならず、契約締結の動機、目的、期間、土地利用の実態等の諸般の事情を総合的に考慮して判断される。
問題の所在(論点)
賃料増減額条項や更新条項が契約書に存在する場合であっても、当該賃貸借を「一時使用のための賃貸借」と認定することができるか。
規範
借地借家法(旧借地法)の適用を排除する「一時使用のための賃貸借」に該当するか否かは、単に契約形式や特定の条項(賃料増減額条項、更新条項等)の有無に拘泥せず、契約締結に至る主観的動機・目的、客観的な利用期間、地上建物の構造、土地利用の態様といった諸般の事情を総合的に勘案して判断すべきである。
重要事実
上告人(賃借人)は、被上告人(賃貸人)との間で本件土地の賃貸借契約を締結した。当該契約書(甲一号証)には、経済変動に伴う賃料増減額に関する協定条項が含まれており、また更新を認める旨の約款(甲二、三号証)も存在した。賃借人側は、これらの条項が存在することを根拠として、本件賃貸借が一時使用目的のものではなく、借地法の適用を受ける正当な借地権であると主張して争った。
事件番号: 昭和36(オ)43 / 裁判年月日: 昭和36年7月6日 / 結論: 棄却
土地所有者が仮設建築物を所有して土地を不法占有する者を相手方として土地明渡の調停を申立てたところ、その建物の居住者が利害関係人として期日に出頭し、なお居住者が多数あることが判明したので、事態の解決を計るため、調停外において右居住者中の有力者一名と期間を一〇年とする土地賃貸借契約を結び、一〇年後には必ず返地することを確約…
あてはめ
本件において、賃貸借契約書に賃料増減額の協定条項や期間更新の約款が記載されていたことは事実である。しかし、これらの条項が存在するからといって、直ちに一時使用目的が否定されるものではない。判決によれば、原審は証拠(甲四号証等)に基づき、契約書上の文言のみならず、契約成立の経緯や法人設立登記の状況、土地利用の実態などの諸般の事情を認定している。これらの具体的状況を総合すれば、一時使用を目的とした賃貸借であるとの認定を維持することは十分可能であり、借地法の規定を回避する脱法的な合意とも認められない。
結論
契約書に賃料増減額条項や更新条項がある場合でも、諸般の事情により一時使用のための賃貸借と認定することは妨げられない。
実務上の射程
契約書の形式的文言よりも、実質的な利用目的や期間の短時性を重視する。答案上は、一時使用の成否が問題となる場面で「諸般の事情を総合考慮する」際の考慮要素として、契約書の条項は決定的ではないことを示すために引用できる。
事件番号: 昭和36(オ)781 / 裁判年月日: 昭和37年5月31日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】借地法(旧法)の保護を受ける賃貸借への変更の有無は、建物の大小、形態、構造のみならず、諸般の事情を総合的に斟酌して判断されるべきである。また、解約申入れが権利濫用に当たるか否かは、認定された事実関係に基づき個別具体的に判断される。 第1 事案の概要:上告人は、ある時点を境として、本件賃貸借が借地法…
事件番号: 昭和40(オ)551 / 裁判年月日: 昭和42年3月16日 / 結論: 棄却
神社の境内地を終戦直後に区画整理施行日までを期限としてマーケツト建設のため賃貸した場合には、権利金代りの寄付をうけ、中途賃料の増額が行われたとしても借地法第九条にいう「一時使用ノ為借地権ヲ設定シタルコト明ナル場合」にあたる。
事件番号: 昭和28(オ)610 / 裁判年月日: 昭和30年1月20日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】賃貸借契約が「一時使用のためにすること」が明らかであるか否かの判断は、原審が認定した諸事実に基づき、その客観的な性質によって決せられるべきである。 第1 事案の概要:本判決(最一小判昭28・6・11)の文面からは具体的な事実は不明であるが、原審において本件賃貸借が一時使用目的であると認定された事実…
事件番号: 昭和35(オ)1066 / 裁判年月日: 昭和37年2月6日 / 結論: 棄却
地主の長男が医学修業中であり、卒業後その土地で医業を開始することを予定していたので、借地期間を右医業開始確定の時までとするため、契約にあたり、地上に建築せらるべき建物を戦災復旧用建坪一五坪のバラツク住宅と限定し、特に一時使用を条件とする旨契約書に明記されていた場合には、たとえ右開業時期が明確に定まつていなかつたため、一…