地主の長男が医学修業中であり、卒業後その土地で医業を開始することを予定していたので、借地期間を右医業開始確定の時までとするため、契約にあたり、地上に建築せらるべき建物を戦災復旧用建坪一五坪のバラツク住宅と限定し、特に一時使用を条件とする旨契約書に明記されていた場合には、たとえ右開業時期が明確に定まつていなかつたため、一応期間を三年とし、その後も開業に至らずして期間を更新し、またその間に借地権譲渡、地代増額等の事情があつても、一時使用のための借地権というを妨げない。
一時使用のための借地権とされた事例
借地法9条
判旨
賃貸借契約において、将来の特定の目的(医業開始等)までの期間を予定し、建物の種類を制限した上で「一時使用」を明記した場合は、期間更新や賃料増額があっても借地法上の一時使用と認められる。
問題の所在(論点)
借地権の設定において、契約期間の更新や賃料の増額がなされた場合であっても、借地法(旧法)に定める「一時使用のための借地権」として、同法の存続期間に関する規定の適用が排除されるか。
規範
借地法(現行借地借家法25条)にいう「一時使用のための借地権」にあたるかは、契約の動機、目的、建物の種類・構造、期間の定め方等を総合考慮し、客観的に短期間で賃貸借が終了することが予定されているかによって判断すべきである。形式的に期間が更新され、または賃料が増額された事実があるからといって、直ちに一時使用の性質が失われるものではない。
重要事実
賃貸人(被上告人)は、医学修業中の長男が卒業後に当該土地で医業を開始することを予定していた。そのため、賃借人(上告人)との間で、建物を「戦災復旧用建坪15坪のバラック住宅」に限定し、契約書に「一時使用」である旨を明記して土地を賃貸した。当初の期間は3年とされたが、長男の医業開始が遅れたため、期間が更新され、その間に賃料が増額されるなどの事実があった。
事件番号: 昭和33(オ)874 / 裁判年月日: 昭和36年8月31日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】借地借家法(旧借地法)の適用を排除する「一時使用のための賃貸借」に該当するか否かは、契約の目的、賃貸借の期間、建物の種類、その他諸般の事情を総合的に考慮して判断される。 第1 事案の概要:上告人と被上告人との間で本件宅地の賃貸借契約が締結された。原審は、当該契約がなされた背景、建物の利用目的、およ…
あてはめ
本件では、賃貸人が長男の将来の医業開始という具体的な利用計画を有しており、これに合わせる形で建物の種類を「バラック住宅」という非堅固かつ限定的なものに指定している。契約書上も「一時使用」の条件が明記されており、当事者の主観的・客観的意図は短期利用に限定されていた。医業開始の時期が不明確であったために便宜上3年の期間を定め、結果として更新や賃料増額が生じたとしても、それは当初の「医業開始までの暫定利用」という契約の本質を覆すものではない。
結論
本件土地賃貸借は、一時使用のためにされたものと認められ、借地法の存続期間の規定は適用されない。したがって、期間満了による終了を認めた原審の判断は正当である。
実務上の射程
契約書に「一時使用」と記載するだけでなく、利用目的(将来の自己使用予定等)と建物の構造制限(バラック等)をセットで認定することが、一時使用の抗弁を成立させるための実務上の重要ポイントとなる。更新や賃料増額があっても即座に一時使用が否定されるわけではないことを示す先例である。
事件番号: 昭和36(オ)378 / 裁判年月日: 昭和37年2月16日 / 結論: 棄却
経済的変動により賃料額が不相当となつたときは、協定のうえこれを増減することができるし、期間を更新することもできる旨の約款があつても、その賃貸借を一時使用のためのものと認定できないことはない。
事件番号: 昭和36(オ)43 / 裁判年月日: 昭和36年7月6日 / 結論: 棄却
土地所有者が仮設建築物を所有して土地を不法占有する者を相手方として土地明渡の調停を申立てたところ、その建物の居住者が利害関係人として期日に出頭し、なお居住者が多数あることが判明したので、事態の解決を計るため、調停外において右居住者中の有力者一名と期間を一〇年とする土地賃貸借契約を結び、一〇年後には必ず返地することを確約…
事件番号: 昭和38(オ)235 / 裁判年月日: 昭和39年6月30日 / 結論: 棄却
準備書面及び書証の表示文言に判示のような記載があっただけでは、当該要証事実の主張があったとは見られない。
事件番号: 昭和33(オ)456 / 裁判年月日: 昭和35年3月4日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】建物の所有を目的とする土地の賃貸借であっても、それが一時使用のためのものであることが明らかな場合には、借地法(現・借地借家法)の適用はなく、民法617条に基づく解約申入れによって終了し得る。 第1 事案の概要:被上告人(賃貸人)は、上告人(賃借人)に対し、当初は木箱集積場所として「明渡要求次第無条…