土地所有者が、その土地の一部を建物所有の目的で賃貸し、賃借人がこれに店舗を建築した後残りの部分に居宅を建築することを黙認していた場合に、契約の当初、右土地が特別都市計画法による区画整理区域内にありその一部が道路敷地となることに決定していたため、賃貸人は、右区画整理実施の時まで一時賃貸する意思で契約し、残りの部分についても最初の賃貸部分と同時に返還を受ける意思で使用を黙認し、賃借人も賃貸人の右意思を知りかつこれを承諾していたものであつて、契約書にも、期間を一年、賃料を一日五〇銭と記載した外、「臨時借受」の文字を使用した事情にあるときは、たとえ右建物が良好な資材を用いた本建築で、賃貸人がその建築を承認した上落成に際し祝品を贈り、かつ自ら右店舗を借り受け一年余にわたり使用していたなどの事実があつても、右借地権は、期間を区画整理実施の時までとする一時使用のためのものと認めるのが相当である。
一時使用のための借地権の一事例
借地法9条
判旨
建物競落時において敷地の借地権が「一時使用目的」により既に消滅していた場合、競落人は敷地利用権を取得できず、また建物競売手続の進行のみをもって当然に敷地利用権の存在が認められるわけではない。
問題の所在(論点)
①一時使用目的の借地権が存続しているといえるか。②建物の競売手続が行われた際、当然に敷地利用権(借地権)が付随するものとみなされるか。
規範
借地法(旧法)等の借地権保護規定は、一時使用を目的とする借地権には適用されない。また、建物の競売において、特段の事情がない限り、手続の進行や取引慣行のみから当然に敷地利用権が付随して売却されたと認めることはできない。
重要事実
訴外Dは被上告人から旧宅地を借り受けていたが、その賃貸借は「一時使用」を目的とするものであった。昭和23年に換地予定地の指定がなされた際、当該賃貸借契約は終了した。その後、昭和25年に上告人が当該土地上の建物を競落したが、被上告人に対し土地の利用権を主張して争いとなった。
事件番号: 昭和30(オ)698 / 裁判年月日: 昭和32年11月15日 / 結論: 棄却
都市計画実施のために先代以来の営業場所から立退を求められた者が、附近の宅地を移転先に充てるため、地上に工場を所有する借地人において近くその明渡をなす約束であるとの地主の言を信じてこれを買い受けたところ、期限到来の後も明渡を受け得られず自らは立退を迫られた末、借地人を相手方とする土地明渡の調停事件において、右宅地の必要性…
あてはめ
Dの借地権は、一時使用を目的とするものであり、換地予定地の指定通知と同時に終了しているため、上告人が建物を競落した時点では既に消滅していた。また、当該建物の競売手続において「敷地について借地権があるものとして進行した」と認めるに足りる証拠はなく、建物の取引において取り壊し条件がないからといって常に敷地利用権が伴うと認める根拠もない。さらに、Dが借地権の届出や建築許可申請を行っていなかった事実は、一時使用目的であると認定するための一資料として許容される。
結論
上告人は建物競落時に本件土地について借地権を有していなかった。したがって、上告人の請求は認められず、上告を棄却する。
実務上の射程
一時使用目的の借地権該当性の判断において、行政手続(建築許可等)の有無を認定資料とできる点、および「建物あるところに常に借地権あり」という主張を否定した点で、競売実務や借地権の存否確認の場面で参照される。
事件番号: 昭和33(オ)273 / 裁判年月日: 昭和33年11月27日 / 結論: 棄却
一 仮建築の建物を建てて使用するため、期間を一年とし、当事者協議の上更新し得る約で土地を賃貸したところ、賃借人が、無断で本建築をしたので、賃貸人から家屋収去土地返還の調停を申立てた結果、賃貸期間を調停成立以後約八年とし期間満了のとき賃借人所有の地上建物は賃貸人に贈与する旨の調停が成立した場合、右賃貸借は、一時使用のため…
事件番号: 昭和30(オ)750 / 裁判年月日: 昭和33年10月17日 / 結論: 棄却
木造建物が、その柱、桁、屋根の小屋組などの要部に多少の腐蝕個所がみられても、こちらの部分の構造にもとずく自らの力で屋根を支えて独立に地上に存立し、内部への出入に危険を感じさせることもないなど原審認定の状況(原判決理由参照)にあるときは、右建物は未だ借地法第一七条第一項但書にいう朽廃の程度に達しないものと解すべきである。
事件番号: 昭和28(オ)393 / 裁判年月日: 昭和30年11月1日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】戦時罹災土地物件令に基づく賃借権者が、後に同一土地について一時使用の賃貸借契約を締結した場合、特段の事情がない限り、先行する物件令上の賃借権を放棄したものと認められる。 第1 事案の概要:上告人(関)は、戦時罹災土地物件令(物件令)4条1項に基づき、本件土地の一部について賃借権を取得していた。しか…
事件番号: 昭和32(オ)399 / 裁判年月日: 昭和35年3月1日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】借主所有の建物が現存する土地について使用貸借が成立したからといって、当然に土地の使用収益の目的(民法597条2項但書、現598条2項)が定められたと解すべきではない。 第1 事案の概要:上告人は、借主所有の建物が現存する土地について使用貸借が成立したと主張した。その上で、建物が存在する以上、土地の…