判旨
借主所有の建物が現存する土地について使用貸借が成立したからといって、当然に土地の使用収益の目的(民法597条2項但書、現598条2項)が定められたと解すべきではない。
問題の所在(論点)
借主所有の建物が土地上に現存している場合、民法597条2項但書(現598条2項)にいう「使用及び収益の目的」が当然に定められたと認められるか。また、建物の存続が直ちに使用貸借の存続根拠となるか。
規範
使用貸借において、期間の定めがない場合であっても、借主所有の建物が土地上に現存しているという事実のみをもって、直ちに「使用及び収益の目的」を定めたものとみなされるわけではない。契約の成否や目的の有無は、個別の事実認定に基づき判断されるべき事柄である。
重要事実
上告人は、借主所有の建物が現存する土地について使用貸借が成立したと主張した。その上で、建物が存在する以上、土地の使用・収益の目的についての定めがあるべきであり、返済条件等の新たな合意も成立していると主張して、土地の占有権原を争った。原審は、上告人の主張する証拠(乙第3号証)や準備書面の記載内容を検討し、新たな契約成立や占有権原の承諾に関する事実を認めなかった。
あてはめ
本件において、土地上に建物が現存している事実は認められる。しかし、使用貸借は無償の契約であり、貸主の好意に基づく場合が多い。建物が存在するからといって、貸主が建物が朽廃するまで無期限に土地を貸す意思を有していたと一律に断定することはできない。原審が証拠の記載内容から新たな合意を認めず、また上告人が承諾に基づく占有権原を主張する意思がなかったと認定した判断に違法はない。
結論
借主所有の建物が存続していても、当然に使用収益の目的の定めがあるとは認められない。したがって、土地の使用貸借における目的の有無は事実認定の問題であり、本件上告は棄却される。
事件番号: 昭和32(オ)569 / 裁判年月日: 昭和34年5月15日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】借地法(現行の借地借家法25条相当)にいう「建物所有を目的とする賃貸借」に該当しないか、あるいは「一時使用のための借地権」と認められる場合には、存続期間に関する法定の制限を受けず、約定期間の満了により賃貸借が終了する。 第1 事案の概要:本件賃貸借契約において、当事者は約定の期間満了による契約終了…
実務上の射程
司法試験等の答案作成においては、建物所有目的の土地使用貸借の終了時期を論じる際、民法598条2項の「目的」の有無を慎重に判断する根拠として本判例を活用できる。「建物がある=目的あり」という単純な当てはめを避け、貸借の経緯や当事者の人間関係等の具体的事実を総合考慮すべきことを示す。なお、民法改正により条文番号が変更されている点に留意が必要である。
事件番号: 昭和32(オ)890 / 裁判年月日: 昭和35年3月8日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】土地の明渡請求が権利の乱用に該当するか否かは、具体的な事実関係に基づき、請求によって得られる利益と相手方の被る不利益等を比較衡量して判断されるべきであり、本件においては権利の乱用にはあたらない。 第1 事案の概要:上告人(被告)らが占有する本件土地につき、被上告人(原告)が土地明渡を求めた事案であ…
事件番号: 昭和32(オ)659 / 裁判年月日: 昭和33年5月16日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】権利の行使が権利の濫用に該当するか否かは、確定された事実関係に基づき、客観的・総合的な諸事情を照らして判断される。本件においては、原審の認定した事実の範囲内では権利の濫用とは認められないと判断された。 第1 事案の概要:上告人らは、被上告人による本訴請求が権利の濫用にあたると主張して争った。原審は…
事件番号: 昭和30(オ)297 / 裁判年月日: 昭和32年2月7日 / 結論: 棄却
土地所有者が、その土地の一部を建物所有の目的で賃貸し、賃借人がこれに店舗を建築した後残りの部分に居宅を建築することを黙認していた場合に、契約の当初、右土地が特別都市計画法による区画整理区域内にありその一部が道路敷地となることに決定していたため、賃貸人は、右区画整理実施の時まで一時賃貸する意思で契約し、残りの部分について…
事件番号: 昭和34(オ)879 / 裁判年月日: 昭和35年3月30日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】土地および建物の賃貸借が、借地法(現借地借家法25条)および借家法(現借地借家法40条)にいう「一時使用」にあたるかは、賃貸借成立の経緯、使用目的、建物の規模構造、期間の定めおよびその理由等を総合考慮して判断すべきである。 第1 事案の概要:土地および土蔵の賃貸借契約において、賃貸期間が短期に定め…