判旨
土地の明渡請求が権利の乱用に該当するか否かは、具体的な事実関係に基づき、請求によって得られる利益と相手方の被る不利益等を比較衡量して判断されるべきであり、本件においては権利の乱用にはあたらない。
問題の所在(論点)
民法1条3項の権利の乱用。具体的には、土地所有者が占有者に対して明渡を求めることが、具体的な事情のもとで権利の乱用として制限されるか。
規範
民法1条3項に規定される権利の乱用は、形式的には権利の行使であっても、その実態が正当な利益を欠き、相手方や社会に不当な損害を与える場合に認められる。具体的には、権利行使によって得られる利益と、それにより相手方が受ける損害との比較衡量、権利行使の目的、社会妥当性等を総合的に考慮して判断する。
重要事実
上告人(被告)らが占有する本件土地につき、被上告人(原告)が土地明渡を求めた事案である。上告人らは、昭和21年11月初旬頃に罹災都市借地借家臨時処理法に基づく借地の申出があったと主張したが、第一審および原審は当該申出の事実を認めるに足りる証拠がないと判断した。その上で、被上告人による明渡請求が権利の乱用に該当するか否かが争点となった。
あてはめ
原判決が確定した事実関係によれば、上告人らが主張する借地の申出事実は存在せず、上告人らが本件土地を占有し続ける正当な権原は認められない。他方、被上告人による明渡請求を否定すべき特段の事情(請求者に正当な利益がなく、専ら相手方に損害を与える目的であることや、著しく衡平を欠くこと等)も見当たらない。したがって、被上告人が土地の所有権に基づき明渡を求めることは、社会通念上相当な範疇にあり、権利の行使として許容される。
結論
被上告人が本件土地の明渡を求めることは権利の乱用にはあたらず、明渡請求は認められる。
事件番号: 昭和33(オ)1024 / 裁判年月日: 昭和35年9月9日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】土地所有者が土地の使用を容認していたとはいえない状況において、当該土地の明渡し等を求める請求は、特段の事情がない限り権利の濫用(民法1条3項)には当たらない。 第1 事案の概要:上告人(被告)が本件土地を使用していたところ、被上告人ら(原告)が土地所有権に基づき本訴請求(明渡し等)を提起した。上告…
実務上の射程
本判決は、権利の乱用の成否を事実認定の問題として処理しており、具体的な証拠に基づく事実関係の認定が重要であることを示している。司法試験においては、明渡請求が酷な結果を招く場合でも、占有者に正当な権原がなく、かつ請求側に相応の利益が認められる場合には、容易に権利の乱用を認めないという論理展開の参考となる。
事件番号: 昭和32(オ)659 / 裁判年月日: 昭和33年5月16日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】権利の行使が権利の濫用に該当するか否かは、確定された事実関係に基づき、客観的・総合的な諸事情を照らして判断される。本件においては、原審の認定した事実の範囲内では権利の濫用とは認められないと判断された。 第1 事案の概要:上告人らは、被上告人による本訴請求が権利の濫用にあたると主張して争った。原審は…
事件番号: 昭和33(オ)279 / 裁判年月日: 昭和33年7月11日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】不動産の明渡請求が権利の濫用(民法1条3項)に当たるか否かは、当該請求を認めることが社会通念上著しく正当性を欠くといえるか等の事実関係を総合考慮して判断すべきである。 第1 事案の概要:上告人(被告)に対し、被上告人(原告)が本件建物の明渡しを求めた事案である。原審において認定された事実関係の詳細…
事件番号: 昭和32(オ)839 / 裁判年月日: 昭和34年5月29日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】本件は、権利の行使が権利の濫用にあたるか否かが争われた事案であるが、最高裁は原審の確定した事実関係に基づき、権利の濫用にはあたらないと判示して上告を棄却した。 第1 事案の概要:本件の具体的な事案の内容や、権利行使の態様に関する重要事実は、提供された判決文からは不明である。原審において何らかの権利…
事件番号: 昭和34(オ)759 / 裁判年月日: 昭和35年10月4日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】権利の濫用(民法1条3項)の成否は、原審が確定した事実に即して判断されるべきであり、権利行使が正当な範囲を逸脱していると認められない限り、その請求は容認される。 第1 事案の概要:本判決文からは具体的な事案の詳細は不明であるが、上告人が被上告人の請求に対し、民法1条に違反する権利の濫用であると主張…