賃料が数次にわたつて値上げされたことや賃料が当該借地の固定資産税を上廻つていることは、一時使用のための賃貸借契約であると認定するについて妨げとなるものではない。
賃料の数次にわたる値上げ等の事実と一時使用の賃貸借の認定
借地法9条
判旨
賃料が数次にわたり値上げされた事実や、賃料額が固定資産税額を上回っている事実は、当該土地賃貸借契約の「一時使用目的」を否定する決定的な事由とはならない。
問題の所在(論点)
賃料の値上げが行われ、かつ賃料額が固定資産税を上回っている場合において、当該賃貸借契約が「一時使用のための賃貸借」であるとの認定が妨げられるか。
規範
借地法(現行の借地借家法25条等に相当)にいう「一時使用のための賃貸借」に該当するか否かは、契約の目的、存続期間、地上建物の種類・構造、賃料の額、さらには契約締結に至る経緯等を総合的に考慮して判断される。一時使用の合意が認められる場合、数次の賃料改定や、賃料が公租公課を一定程度超えているといった事実は、直ちにその契約の一時的性格を失わせるものではない。
重要事実
土地の賃貸借契約において、賃貸人側が一時使用目的であるとして建物収去土地明渡を請求した事案。賃借人側は、契約が一時使用目的ではなく期間の定めのない通常の借地権であることを主張した。具体的事実として、本件土地の賃料は数次にわたって値上げされており、かつその賃料額は当該土地の固定資産税額を上回る金額となっていた。
事件番号: 昭和40(オ)551 / 裁判年月日: 昭和42年3月16日 / 結論: 棄却
神社の境内地を終戦直後に区画整理施行日までを期限としてマーケツト建設のため賃貸した場合には、権利金代りの寄付をうけ、中途賃料の増額が行われたとしても借地法第九条にいう「一時使用ノ為借地権ヲ設定シタルコト明ナル場合」にあたる。
あてはめ
本件において、賃料が数次にわたって値上げされている事実や、賃料額が固定資産税を上回っている事実は認められる。しかし、これらの事象は、賃貸借関係が継続する中で経済情勢等に合わせて対価を適正化する措置にすぎず、一時使用を目的とした契約の法的性格そのものを変質させるものではない。したがって、契約締結時の主観的・客観的態様から一時使用目的と認められる以上、上記のような賃料に関する事情があるからといって、一時使用目的の認定を妨げるものとはいえない。
結論
本件賃貸借は一時使用のための賃貸借と認められ、賃貸人の請求を認容した原審の判断は正当である。
実務上の射程
借地借家法25条の「一時使用」の存否が争われる事案において、賃借人側から「長期間継続している」「対価が相応に高い」といった反論がなされることが多いが、本判例はそれらの事実が直ちに一時使用を否定する根拠にはならないことを示した。答案上は、一時使用の総合考慮において、賃料の性質(権利金・更新料の有無等)と共に、形式的な賃料額や改定の事実に惑わされず、当初の契約目的を重視する方向で活用できる。
事件番号: 昭和31(オ)952 / 裁判年月日: 昭和32年12月26日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】借地借家法の適用を排除する「一時使用目的の借地権」に該当するか否かは、契約期間の長短のみならず、土地の性格、賃貸借の目的、更新の経緯等の諸事情を総合して判断すべきである。 第1 事案の概要:上告人Aは、鉄道用地(本件土地)を1年の約定で賃借した。期間経過後も継続使用を希望したため、被上告人は急ぎの…
事件番号: 昭和44(オ)1017 / 裁判年月日: 昭和47年2月10日 / 結論: 棄却
土地賃貸借契約成立の事情として、賃貸人は、当初、賃借人の借地申入れに対し、他人に土地を貸すときは回収が困難になるとして賃貸することに反対していたが、賃借人や仲介に入つた知人から、一時しのぎに僅かな土地でもよいし、何時でも取り払える仮小屋の建物でよいから」と執拗に懇請され、やむなくバラツク建物に限り建築を許す趣旨で、約六…
事件番号: 昭和32(オ)569 / 裁判年月日: 昭和34年5月15日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】借地法(現行の借地借家法25条相当)にいう「建物所有を目的とする賃貸借」に該当しないか、あるいは「一時使用のための借地権」と認められる場合には、存続期間に関する法定の制限を受けず、約定期間の満了により賃貸借が終了する。 第1 事案の概要:本件賃貸借契約において、当事者は約定の期間満了による契約終了…
事件番号: 昭和43(オ)2 / 裁判年月日: 昭和44年7月31日 / 結論: 破棄差戻
土地賃貸借契約のさい、都市計画事業の施行による区画整理が予定され、賃貸人においてその実施後の土地を自ら使用する計画を有し、賃借人もこれを諒承し、地上に仮設建物のみを所有しうる一時使用のための賃貸借であることを公正証書に明記して、契約を締結した場合においては、賃借人が前所有者から土地を賃借しその上に建物を所有していて、新…