借地上の建物の所有権が第三者に移転する場合には、任意譲渡であると競売等国家機関の介入による場合であるとを問わず、特別の事情がないかぎり、その敷地の借地権は、建物の所有権とともに当然に第三者に移転するものと解すべく、右特別の事情の存することの主張立証責任はこれを自己の利益に援用する者の側にあるものというべきである。
借地上の建物の所有権の移転とその借地権
民法559条,民法612条,民訴法686条,競売法32条
判旨
借地上の建物の所有権が移転する場合、建物取り壊し目的の売買等の特段の事情がない限り、敷地の借地権も建物所有権とともに当然に第三者へ移転する。この特段の事情の主張・立証責任は、譲渡の効力を否定して自己の利益に援用する側が負う。
問題の所在(論点)
借地上の建物が譲渡された場合、敷地の借地権は当然に建物所有権に従うか。また、借地権が移転しないとされる「特別の事情」の主張・立証責任はどちらの当事者が負うか。
規範
借地上の建物の所有権が第三者に移転する場合、任意譲渡か強制競売かを問わず、原則として敷地の借地権も建物所有権とともに当然に当該第三者に移転する。ただし、①建物取り壊し目的の売買である場合や、②借地を転貸する合意があった場合等の「特別の事情」が存する場合には、この限りではない。また、当該「特別の事情」の存することについての主張・立証責任は、これを自己の利益に援用する者(借地権の移転を否定する側)が負う。
重要事実
訴外D社は被上告人(賃理人)から本件土地を建物所有目的で借用し、本件建物を所有していた。その後、当該建物は競落により訴外Eに、さらに売買により上告人に順次移転した。原審は、Eおよび上告人が借地権の譲渡を受けたことを認める証拠がないとして、借地権の移転を否定し、上告人の権利濫用や建物買取請求権の主張を排斥した。なお、建物取り壊し目的等の「特別の事情」については、被上告人による主張・立証はなされていなかった。
事件番号: 昭和59(オ)147 / 裁判年月日: 昭和63年9月8日 / 結論: 破棄差戻
土地賃借権の譲渡契約において、譲渡について地主の承諾が得られなかつたときは、譲渡契約当事者間で協議し、円満に取引を完了する旨の特約がある場合に、譲渡の効力発生について地主の承諾を停止条件とする旨を直接定めた書面上の合意がなく、土地上の建物の売買代金を含む譲渡代金の四割相当の手付金が譲渡契約時に支払われ、譲受人が契約締結…
あてはめ
本件では、建物の所有権が競売および売買という過程を経て、D社からE、さらに上告人へと移転した事実が認められる。この場合、建物所有権に従って借地権も当然に移転するのが原則である。これに対し、本件において建物取り壊し目的等の「特別の事情」があることは、借地権の移転を否定して利益を得る立場にある被上告人が主張・立証すべきであるが、記録上そのような主張・立証はなされていない。したがって、特段の事情がない本件においては、借地権も建物とともに上告人に移転していると解すべきである。
結論
借地権は建物所有権とともに当然に上告人に移転する。原審が借地権の移転を否定し、これを前提に上告人の請求を排斥した判断には法令解釈の誤りがあるため、破棄・差し戻しを免れない。
実務上の射程
建物の譲渡があった場合の借地権の随伴性を明示した判例であり、民法612条による賃貸人の承諾の要否(対抗要件の問題)とは別に、譲渡当事者間における権利移転の成否を判断する際の基準となる。答案上は、建物譲渡に伴う借地権の帰属を論ずる際、本規範を前提に「特段の事情」の有無を検討する形で用いる。
事件番号: 昭和42(オ)528 / 裁判年月日: 昭和42年9月19日 / 結論: 棄却
地上権を譲り受けた者は、地上権について登記を有しなくても、その地上の建物について所有権移転登記を経由した以上、建物保護ニ関スル法律第一条第一項により、右地上権の承継を地上権設定者たる土地所有者に対抗することができる。
事件番号: 昭和39(オ)943 / 裁判年月日: 昭和40年3月5日 / 結論: 棄却
賃借地上の賃借人所有の家屋が第三者に無断譲渡された後に右家屋が他に賃貸された場合において、家屋買取請求権が行使されたときは、土地所有者は、右家屋の所有権を取得すると共に、家屋賃借人に対する賃貸人の地位をも継承する。
事件番号: 昭和42(オ)657 / 裁判年月日: 昭和46年6月22日 / 結論: 棄却
宅地の賃借人が借地の一部について借地権を第三者に譲渡した場合において、右譲渡部分が約四二〇平方メートルの借地のうち最も価値の低い部分にあたる約七〇平方メートルにすぎず、賃借人が従来の事情から右譲渡につき賃貸人の承諾が得られるものと思い、その際の名義書替料として相当の金員を賃貸人に支払うことを予定していた等、判示のような…
事件番号: 昭和39(オ)1033 / 裁判年月日: 昭和40年5月4日 / 結論: 棄却
一 土地賃借人が該土地上に所有する建物について抵当権を設定した場合には、原則として、右抵当権の効力は当該土地の賃借権に及び、右建物の競落人と賃借人との関係においては、右建物の所有権とともに土地の賃借権も競落人に移転するものと解するのが相当である。 二 前項の場合には、賃借人は、賃貸人において右賃借権の移転を承諾しないと…