一 土地賃借人が該土地上に所有する建物について抵当権を設定した場合には、原則として、右抵当権の効力は当該土地の賃借権に及び、右建物の競落人と賃借人との関係においては、右建物の所有権とともに土地の賃借権も競落人に移転するものと解するのが相当である。 二 前項の場合には、賃借人は、賃貸人において右賃借権の移転を承諾しないときであつても、競落人に対し、土地所有者たる賃貸人に代位して右土地の明渡を請求することはできない。
一 土地貸借人が該地上の建物に設定した抵当権の効力は当該土地の賃借権に及ぶか。 二 地上建物に抵当権を設定した土地賃借人は抵当建物の競落人に対し地主に代位して当該土地の明渡を請求できるか。
民法370条,民法87条2項,民法423条,民法612条
判旨
土地賃借人所有の建物に設定された抵当権の効力は敷地の賃借権にも及び、建物競落により賃借権も原則として競落人に移転するため、従前の所有者は競落人に対し土地明渡しを請求できない。
問題の所在(論点)
土地賃借人が所有する建物に抵当権が設定された場合、抵当権の効力は敷地の賃借権に及ぶか。また、賃貸人の承諾がない場合であっても、従前の建物所有者は競落人に対して土地の明渡しを請求できるか。
規範
建物を所有するために必要な敷地の賃借権は、建物所有権に付随して一体の財産的価値を形成するため、建物に設定された抵当権の効力は、原則として敷地の賃借権にも及ぶ。したがって、建物が競落された場合、建物が取壊し前提の価格で競落された等の「特段の事情」がない限り、敷地の賃借権も競落人に移転する。
重要事実
土地賃借人である上告人が、その土地上に所有する建物に抵当権を設定した。その後、抵当権が実行され、被上告人が建物を競落して所有権を取得した。賃貸人(地主)による賃借権移転の承諾は得られていない状況下で、従前の建物所有者である上告人が、競落人である被上告人に対し、土地の明渡しを求めて提訴した。
事件番号: 昭和33(オ)711 / 裁判年月日: 昭和35年6月28日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】競落許可決定により土地の所有権を取得した者は、建物保護法1条(現借地借家法10条1項)に基づく借地権の対抗を受ける「第三者」に含まれる。 第1 事案の概要:被上告人(賃借人)は、昭和21年頃に建物所有目的で本件土地を賃借し、昭和27年10月に土地上の建物について所有権保存登記を経由した。その後、上…
あてはめ
本件では、建物が取壊し前提の価格で競落された等の特段の事情は認められない。そうである以上、建物の競落に伴い、その従たる権利である敷地の賃借権も被上告人に移転している。賃貸人に対する対抗問題(民法612条)は別として、上告人と被上告人の間においては賃借権の移転は有効である。したがって、既に賃借権を失った上告人が、被上告人に対し土地の明渡しを求めることは論理的に認められない。
結論
抵当権の効力は敷地の賃借権に及び、競落によって賃借権は被上告人に移転したため、上告人の明渡し請求は認められない。
実務上の射程
抵当権の効力が従たる権利である借地権に及ぶことを認めた重要判例である。答案上は、民法87条2項の類推適用や、抵当権の効力範囲(370条)を論じる際に「従たる権利」として構成する。また、対人関係(元所有者vs競落人)と対賃貸人関係(競落人vs地主)を区別して論じる際に活用する。
事件番号: 昭和39(オ)943 / 裁判年月日: 昭和40年3月5日 / 結論: 棄却
賃借地上の賃借人所有の家屋が第三者に無断譲渡された後に右家屋が他に賃貸された場合において、家屋買取請求権が行使されたときは、土地所有者は、右家屋の所有権を取得すると共に、家屋賃借人に対する賃貸人の地位をも継承する。
事件番号: 昭和31(オ)743 / 裁判年月日: 昭和33年2月25日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】建物の競落人が敷地の賃借権を承継したと主張しても、競落時点で既に賃貸借契約が解除により消滅していた場合には、承継の余地はなく、建物収去土地明渡しを免れない。また、賃貸人が譲渡を承諾しないことが権利の濫用にあたるという主張は、賃借権の譲渡の事実自体が認められない場合には、その前提を欠く。 第1 事案…
事件番号: 昭和35(オ)824 / 裁判年月日: 昭和38年12月19日 / 結論: 棄却
賃借地上に建物を所有する者より当該建物を賃借している者は、当該建物に居住することによつて敷地を占有する権限を右土地所有者に対して有する。
事件番号: 昭和39(オ)1308 / 裁判年月日: 昭和40年7月23日 / 結論: 棄却
本訴請求は、建物所有者に収去義務の現存する建物の占有者に対し該建物からの退去を求める趣旨と解せられるから、右占有者が右建物の占有関係を離れてその敷地そのものの占有権原を主張しても、抗弁となりえない。