判旨
競落許可決定により土地の所有権を取得した者は、建物保護法1条(現借地借家法10条1項)に基づく借地権の対抗を受ける「第三者」に含まれる。
問題の所在(論点)
不動産競売手続における競落人(買受人)が、建物保護法1条(現借地借家法10条1項)にいう、借地権の対抗を受けるべき「第三者」に該当するか。
規範
建物所有を目的とする土地の賃借権者は、その土地上の建物につき登記を経由したときは、その後において土地の所有権を取得した第三者に対し、土地賃借権を対抗することができる(建物保護法1条、現借地借家法10条1項)。この対抗を受ける第三者の範囲には、売買等の任意譲渡による譲受人だけでなく、競落許可決定という公売手続を通じて土地所有権を取得した者も含まれる。
重要事実
被上告人(賃借人)は、昭和21年頃に建物所有目的で本件土地を賃借し、昭和27年10月に土地上の建物について所有権保存登記を経由した。その後、上告人(買受人)は、昭和31年1月に不動産競売事件の競落許可決定により本件土地を競落し、同年4月に所有権移転登記を完了した。上告人は、競落による取得者であることを理由に、借地権の対抗を否定しようとした。
あてはめ
被上告人は、上告人が土地の所有権を取得する前の昭和27年の時点で、既に本件建物について所有権保存登記を備えていた。競落許可決定によって土地の所有権を取得した者は、承継取得である以上、登記後に現れた権利者として借地権の対抗を受けるべき第三者の範囲から除外されるべき理由はない。したがって、被上告人は上告人に対し、建物登記をもって賃借権を対抗できるといえる。
結論
上告人は競落によって土地所有権を取得した第三者として借地権の対抗を受け、賃貸人たる地位を承継する。上告人の請求は認められない。
実務上の射程
事件番号: 昭和31(オ)743 / 裁判年月日: 昭和33年2月25日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】建物の競落人が敷地の賃借権を承継したと主張しても、競落時点で既に賃貸借契約が解除により消滅していた場合には、承継の余地はなく、建物収去土地明渡しを免れない。また、賃貸人が譲渡を承諾しないことが権利の濫用にあたるという主張は、賃借権の譲渡の事実自体が認められない場合には、その前提を欠く。 第1 事案…
借地上の建物登記による対抗力の有無を検討する際、土地の新所有者が競落人(買受人)であっても、通常の譲受人と同様に扱われることを示す射程を持つ。現行法下の借地借家法10条1項の解釈としても同様に適用される基本的な法理である。
事件番号: 昭和39(オ)1033 / 裁判年月日: 昭和40年5月4日 / 結論: 棄却
一 土地賃借人が該土地上に所有する建物について抵当権を設定した場合には、原則として、右抵当権の効力は当該土地の賃借権に及び、右建物の競落人と賃借人との関係においては、右建物の所有権とともに土地の賃借権も競落人に移転するものと解するのが相当である。 二 前項の場合には、賃借人は、賃貸人において右賃借権の移転を承諾しないと…
事件番号: 昭和34(オ)1106 / 裁判年月日: 昭和37年3月27日 / 結論: 棄却
宅地およびその上の建物を甲が所有していたところ、抵当権の実行により乙が建物を競落して、法定地上権を取得し(その後に宅地につき土地区画整理法によつていわゆる現地換地による仮換地の指定がなされた)、次いで丙が地上権とともに建物を譲受け、さらにその後丁が甲から宅地を譲受けてそれぞれ所有権移転登記を経由した場合においては、丙が…
事件番号: 昭和33(オ)700 / 裁判年月日: 昭和33年11月20日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】不法占拠者に対して建物の収去及び土地の明渡しを命じる判決において、第三者の借地権が存在する場合であっても、当該判決が当然に第三者の権利を消滅させるものではない。 第1 事案の概要:上告人(被告)は、本件土地上に平家建(建坪8坪2合)を所有し占有していた。第一審判決は、上告人に対し、当該建物を収去し…
事件番号: 昭和41(オ)312 / 裁判年月日: 昭和43年10月29日 / 結論: 棄却
借地法第一〇条に基づく買取請求権の行使により借地上建物の所有権が移転した場合においても、建物の賃借人は、借家法第一条によつて賃借権を対抗することができる。