借地法第一〇条に基づく買取請求権の行使により借地上建物の所有権が移転した場合においても、建物の賃借人は、借家法第一条によつて賃借権を対抗することができる。
借地法第一〇条による買取請求権を行使した場と借家法第一条の適用の有無
借地法10条,借家法1条
判旨
借地権者が建物買取請求権を行使した場合、建物所有権の移転前に当該建物の賃借人が引渡しを受けていれば、賃借人は借家法1条1項(現借地借家法31条)に基づき、建物を取得した土地所有者に対しても賃借権を対抗できる。
問題の所在(論点)
借地権者が建物買取請求権を行使することによって建物所有権が土地所有者に移転した場合、その移転前に建物の引渡しを受けていた建物賃借人は、土地所有者(新建物所有者)に対して賃借権を対抗できるか。建物買取請求権の行使による承継取得の性質と対抗要件の関係が問題となる。
規範
建物賃借人が、建物所有権の移転に先立ち、建物の引渡しを受けている場合には、借家法1条1項(現借地借家法31条1項)の対抗要件を具備したものとして、その後に建物所有権を取得した者に対しても賃借権を主張しうる。
重要事実
1. 上告人(土地所有者)は訴外営団に土地を賃貸し、営団は建物(本件建物)を建築所有した。 2. 本件建物の所有権と土地賃借権は亡Dに移転し、亡Dは被上告人に対し、本件建物の一部を期間の定めなく賃貸し、引き渡した。 3. その後、亡Dは、土地賃借権譲渡につき上告人の承諾がないことを理由に、借地法10条(現借地借家法13条)に基づき建物買取請求権を行使した。 4. これにより、本件建物の所有権は亡Dから土地所有者である上告人に移転することとなった。
事件番号: 昭和41(オ)263 / 裁判年月日: 昭和41年11月22日 / 結論: 棄却
借地上の建物につき登記がなされる以前に右敷地の所有権移転があつたため、建物所有者が右敷地取得者に借地権を対抗できない場合にあつては、当該建物を譲り受けた者は、右敷地取得者に対し建物買取請求権を有しない。
あてはめ
1. 亡Dの建物買取請求権の行使により、本件建物の所有権は土地賃貸人である上告人に移転する。 2. しかし、被上告人はこの所有権移転に先立ち、当時の所有者である亡Dから本件建物の引渡しを受けていた。 3. 借家法1条1項によれば、建物の引渡しは賃借権の対抗要件であり、これは所有権の移転原因が売買等の承継取得である限り、買取請求権の行使に基づく場合であっても同様に適用される。 4. したがって、対抗要件を先に具備した被上告人は、新所有者となった上告人に賃借権を主張しうる。
結論
被上告人は、建物買取請求権の行使により建物所有権を取得した土地所有者に対し、建物賃借権を対抗することができる。
実務上の射程
建物買取請求権の行使による所有権移転が「売買」と同視される承継取得であることを前提に、建物賃借人の保護を図った判例である。答案上は、借地借家法31条1項の対抗問題として整理し、譲渡人(借地権者)から建物賃借人への引渡しが、譲受人(土地所有者)の所有権取得より先であれば賃借人が優先することを簡潔に指摘すれば足りる。
事件番号: 昭和39(オ)943 / 裁判年月日: 昭和40年3月5日 / 結論: 棄却
賃借地上の賃借人所有の家屋が第三者に無断譲渡された後に右家屋が他に賃貸された場合において、家屋買取請求権が行使されたときは、土地所有者は、右家屋の所有権を取得すると共に、家屋賃借人に対する賃貸人の地位をも継承する。
事件番号: 昭和40(オ)1082 / 裁判年月日: 昭和41年8月26日 / 結論: 棄却
抵当権に優先する借地権の法定更新は、右抵当権の実行による差押中においても妨げられるものではない。
事件番号: 昭和33(オ)711 / 裁判年月日: 昭和35年6月28日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】競落許可決定により土地の所有権を取得した者は、建物保護法1条(現借地借家法10条1項)に基づく借地権の対抗を受ける「第三者」に含まれる。 第1 事案の概要:被上告人(賃借人)は、昭和21年頃に建物所有目的で本件土地を賃借し、昭和27年10月に土地上の建物について所有権保存登記を経由した。その後、上…
事件番号: 昭和31(オ)743 / 裁判年月日: 昭和33年2月25日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】建物の競落人が敷地の賃借権を承継したと主張しても、競落時点で既に賃貸借契約が解除により消滅していた場合には、承継の余地はなく、建物収去土地明渡しを免れない。また、賃貸人が譲渡を承諾しないことが権利の濫用にあたるという主張は、賃借権の譲渡の事実自体が認められない場合には、その前提を欠く。 第1 事案…