抵当権に優先する借地権の法定更新は、右抵当権の実行による差押中においても妨げられるものではない。
抵当権の実行による差押中における優先借地権の法定更新の成否
借地法6条
判旨
建物所有権の保存登記により対抗要件を備えた借地権は、その後に設定された抵当権の実行による競落人に対抗できる。また、借地権の法定更新は法律の擬制により当然に生じるため、差押え後であっても競落人に対し更新後の権利を主張できる。
問題の所在(論点)
抵当権設定前に登記された借地権が譲渡された場合、譲受人は抵当権実行による競落人に対し借地権を対抗できるか。また、差押え後に生じた法定更新の効果を競落人に対抗できるか。
規範
借地権の対抗力の順位は、建物所有権の登記による対抗要件具備時に確定し、適法な譲渡がなされればその順位を維持したまま移転する。また、借地法上の法定更新(現借地借家法5条・6条参照)は法律の擬制により当然に生じるものであり、差押えによる処分禁止の効力に服さない。
重要事実
Dは土地所有者から期間の定めなく土地を賃借し、地上建物を建築して昭和5年に所有権保存登記を経由した。その後、借地権は土地所有者の承諾を得て建物と共に転々と譲渡され、被上告人が取得した。一方、土地には昭和28年に抵当権が設定され、その実行により上告人が土地を競落した。上告人は、抵当権設定後の借地権譲渡や法定更新を理由に、借地権の対抗力を否定して土地明け渡しを求めた。
事件番号: 昭和41(オ)312 / 裁判年月日: 昭和43年10月29日 / 結論: 棄却
借地法第一〇条に基づく買取請求権の行使により借地上建物の所有権が移転した場合においても、建物の賃借人は、借家法第一条によつて賃借権を対抗することができる。
あてはめ
本件借地権は昭和5年の建物登記により対抗要件を具備しており、その後に設定された抵当権に優先する順位が確定している。適法な譲渡により被上告人が承継した借地権も、この優先順位を保持する。さらに、法定更新は土地所有者の処分行為ではなく法律上当然に生じる事象であるから、差押えによる処分禁止の効力を受けず、更新後の借地権をもって競落人に対抗できる。
結論
被上告人の借地権は上告人に優先し、法定更新による存続も認められるため、上告人は借地権の対抗を受ける。上告人の請求は認められない。
実務上の射程
抵当権に先立つ借地権がある場合、その後の譲渡や法定更新があっても対抗力が維持されることを示す重要判例。答案では「対抗要件を具備した借地権と抵当権の優劣」および「法定更新が処分禁止効に抵触するか」という文脈で活用すべきである。
事件番号: 昭和39(オ)842 / 裁判年月日: 昭和40年4月2日 / 結論: 棄却
土地の賃借人は、その土地の上に登記した建物を有しないかぎり、右賃借権の存在を知つて土地所有権を取得した第三者に対しても土地賃借権を主張することができない。
事件番号: 昭和46(オ)582 / 裁判年月日: 昭和46年10月14日 / 結論: 棄却
一、建物保護に関する法律一条による対抗要件を具備した土地の賃借権は、競売期日の公告に記載されなかつたとしても、その対抗力が消滅するものではない。 二、執行裁判所の取調に対して土地の賃借権者が賃借権の申出をしなかつたとしても、その賃借権の効力に影響を及ぼすものではない。 三、特定の土地につき所有権と賃借権とが同一人に帰属…
事件番号: 昭和34(オ)1106 / 裁判年月日: 昭和37年3月27日 / 結論: 棄却
宅地およびその上の建物を甲が所有していたところ、抵当権の実行により乙が建物を競落して、法定地上権を取得し(その後に宅地につき土地区画整理法によつていわゆる現地換地による仮換地の指定がなされた)、次いで丙が地上権とともに建物を譲受け、さらにその後丁が甲から宅地を譲受けてそれぞれ所有権移転登記を経由した場合においては、丙が…
事件番号: 昭和41(オ)263 / 裁判年月日: 昭和41年11月22日 / 結論: 棄却
借地上の建物につき登記がなされる以前に右敷地の所有権移転があつたため、建物所有者が右敷地取得者に借地権を対抗できない場合にあつては、当該建物を譲り受けた者は、右敷地取得者に対し建物買取請求権を有しない。