一、建物保護に関する法律一条による対抗要件を具備した土地の賃借権は、競売期日の公告に記載されなかつたとしても、その対抗力が消滅するものではない。 二、執行裁判所の取調に対して土地の賃借権者が賃借権の申出をしなかつたとしても、その賃借権の効力に影響を及ぼすものではない。 三、特定の土地につき所有権と賃借権とが同一人に帰属するに至つた場合であつても、その賃借権が対抗要件を具備したものであり、かつ、その対抗要件を具備したのちに右土地に抵当権が設定されていたときは、民法一七九条一項但書の準用により、賃借権は消滅しないものと解すべきであり、このことは、賃借権の対抗要件が建物保護に関する法律一条によるものであるときでも同様である。
一、競売期日の公告に記載されなかつた賃借権とその対抗力 二、執行裁判所の取調に対して申出のなかつた賃借権とその効力 三、土地の所有権と賃借権とが混同しても賃借権が消滅しない場合
民法179条1項,民法520条,民法601条,民法605条,建物保護に関する法律1条,民訴法643条1項,民訴法643条3項,民訴法658条
判旨
対抗要件を具備した土地賃借権は、その後に設定された抵当権との関係で民法179条1項但書が準用され、所有権と賃借権が同一人に帰属しても混同により消滅しない。
問題の所在(論点)
対抗要件を具備した土地賃借権が、その後に設定された抵当権が存在する場合において、混同(民法179条1項)により消滅するか。また、競売公告への不記載や賃借権の申出の欠如が対抗力に影響を及ぼすか。
規範
特定の土地につき所有権と賃借権が同一人に帰属した場合であっても、当該賃借権が対抗要件を具備したものであり、かつ、その対抗要件具備後に当該土地に抵当権が設定されていたときは、民法179条1項但書の準用により賃借権は消滅しない。これは建物保護に関する法律1条による対抗要件であっても同様である。
重要事実
事件番号: 昭和40(オ)1082 / 裁判年月日: 昭和41年8月26日 / 結論: 棄却
抵当権に優先する借地権の法定更新は、右抵当権の実行による差押中においても妨げられるものではない。
土地賃借人が建物保護法1条に基づく対抗要件を具備した後に、当該土地に対して抵当権が設定された。その後、何らかの事由により土地の所有権と賃借権が同一人に帰属する「混同」が生じたが、後順位の抵当権が存在する状態で賃借権が消滅するか否かが争点となった。また、競売手続において賃借権の申出がなかった等の事情が対抗力に影響するかも争われた。
あてはめ
本件賃借権は建物保護法1条による対抗要件を具備しており、その後に抵当権が設定されている。賃借権が消滅すると仮定すれば、後順位であるはずの抵当権の価値が不当に高まり、賃借権を取得した者の利益を害することになる。したがって、第三者(抵当権者)の利益との調整を図る民法179条1項但書の趣旨が妥当し、賃借権は存続すると解される。また、対抗要件は法律上当然に効力を有するため、執行手続上の不備や申出の有無は賃借権の対抗力を左右しない。
結論
賃借権は消滅せず、抵当権実行による買受人に対しても対抗することができる。競売手続上の事情もその効力を妨げない。
実務上の射程
所有権と制限物権が同一人に帰属しても、後順位権利者が存在する場合は混同の例外(179条1項但書)が適用されるという原則を、対抗要件を備えた賃借権にも拡張した点に意義がある。答案上は、抵当権実行による建物収去土地明渡請求に対する拒絶の根拠として、賃借権の存続を論証する際に使用する。
事件番号: 昭和39(オ)842 / 裁判年月日: 昭和40年4月2日 / 結論: 棄却
土地の賃借人は、その土地の上に登記した建物を有しないかぎり、右賃借権の存在を知つて土地所有権を取得した第三者に対しても土地賃借権を主張することができない。
事件番号: 昭和46(オ)844 / 裁判年月日: 昭和46年12月21日 / 結論: 棄却
建物の共有者の一人がその敷地を所有する場合において、右土地に設定された抵当権が実行され、第三者がこれを競落したときは、右土地につき、建物共有者全員のために、法定地上権が成立するものと解すべきである。
事件番号: 昭和43(オ)1345 / 裁判年月日: 昭和44年6月19日 / 結論: 棄却
建物保護に関する法律一条二項(昭和四一年法律第九三号による削除前のもの)は、建物の朽廃以外の滅失の場合にも適用がある。