原判示の事実関係のもとでは、土地の用益について賃借意思が客観的に表現されたものとはいえず、右土地につき賃借権の時効取得は成立しない。
土地の賃借権の時効取得を否定された事例
民法162条,民法601条
判旨
土地の賃借権を時効取得するためには、土地の継続的な用益という外形的事実の存在に加え、その用益が賃借の意思に基づくものであることが客観的に表現されていることを要する。
問題の所在(論点)
不動産賃借権を時効取得するための要件、特に「自己のためにする意思」(163条、162条参照)が賃借権においていかに客観化されるべきかが問題となる。
規範
不動産賃借権の時効取得(民法163条)が認められるためには、①土地の継続的な用益という外形的事実が存在すること、および、②その用益が賃借の意思に基づくものであることが客観的に表現されていることを要する。
重要事実
賃借人Dから本件土地の賃借権を譲り受けたと主張する上告人は、土地を継続的に占有・使用していた。しかし、賃貸人(被上告人)による譲渡の承諾は認められず、上告人は自らが賃借権者であることを前提とした占有を継続していた。上告人は、賃借権を時効取得したと主張し、賃貸人による明渡請求を拒もうとした。
あてはめ
本件において、上告人による本件土地の用益という外形的事実(要件①)は認められる可能性がある。しかし、賃借意思の客観的表現(要件②)については、原審の確定した事実関係に照らせば、単なる占有の継続だけでは足りず、賃料の支払や賃貸借関係を推認させる外部的態様が必要であるところ、本件ではそれらが客観的に表現されていたとはいえない。
結論
本件土地の用益について賃借意思が客観的に表現されたものとはいえないため、賃借権の時効取得は認められない。
実務上の射程
賃借権の時効取得を論じる際のリーディングケースである。答案では、所有権の時効取得(「所有の意思」)との対比で、賃借権特有の「賃借の意思」の客観的表現という規範を明示する。あてはめでは、賃料支払の有無、賃貸借契約書の存在、固定資産税の負担関係などの事実を拾い、それらが「客観的に表現されているか」を検討する際に用いる。
事件番号: 昭和53(オ)719 / 裁判年月日: 昭和53年12月14日 / 結論: 棄却
土地賃借権の無断譲受人が、土地の引渡を受けながら賃貸人に賃料を支払つたことがなく、また、賃貸人に賃借権譲渡の承諾を求めたが拒絶され、かえつて譲渡人との賃貸借契約は既に解除ずみであるとして土地の明渡を求められ、その後にいたつて賃料の弁済供託を開始したなど、判示の事実関係のもとにおいては、譲受人が賃借意思に基づいて土地の使…
事件番号: 昭和41(オ)991 / 裁判年月日: 昭和44年7月8日 / 結論: 破棄差戻
他人の土地の用益がその他人の承諾のない転貸借に基づくものである場合において、土地の継続的な用益という外形的事実が存在し、かつ、その用益が賃借の意思に基づくものであることが客観的に表現されているときは、その土地の賃借権ないし転借権を時効により取得することができる。
事件番号: 昭和34(オ)1162 / 裁判年月日: 昭和37年3月23日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】不動産の買受人が、当該不動産の賃貸借契約における賃貸人の地位を承継するためには、譲受人と譲渡人との間で賃貸人たる地位の譲受契約を締結することが必要であり、その代理権の授与も認められる必要がある。 第1 事案の概要:上告人(買受人)は、補助参加人(譲渡人)から本件土地を買い受けるに際し、訴外Dを代理…