判旨
不動産の買受人が、当該不動産の賃貸借契約における賃貸人の地位を承継するためには、譲受人と譲渡人との間で賃貸人たる地位の譲受契約を締結することが必要であり、その代理権の授与も認められる必要がある。
問題の所在(論点)
不動産の買買に伴い、買受人が賃貸人の地位を承継したと認められるためには、売買契約の代理人に賃貸人たる地位の譲受契約に関する代理権の授与が必要か、またその認定はいかになされるべきか。
規範
賃貸借の目的物である不動産が譲渡された場合、新所有者が賃貸人の地位を承継するためには、原則として譲渡人と譲受人との間で賃貸人の地位の承継に関する合意が必要である。この地位の譲受契約を代理人によって行う場合、代理人が当該合意を締結することについて本人から適法な代理権を授与されていることを要する。
重要事実
上告人(買受人)は、補助参加人(譲渡人)から本件土地を買い受けるに際し、訴外Dを代理人として交渉させた。Dは、上告人から「補助参加人が被上告人(賃借人)に対して有する賃貸人たる地位を上告人が承継すること」を前提として代金減額交渉を行うよう指図を受け、補助参加人の代理人と交渉した結果、売買代金が決定された。その後、Dは地代を受領するなどの行為を行っていたが、賃貸人たる地位の承継に関する代理権の有無等が争点となった。
あてはめ
本件では、代理人Dが上告人から、賃貸人の地位を承継することを前提とした代金減額交渉の指図を受けていた事実が認められる。この事実は、単なる売買代金の決定に留まらず、上告人がDに対して賃貸人たる地位の譲受契約を締結する代理権をも授与していたことを推認させるものである。また、Dが地代を受領していた事実は、賃貸人たる地位の譲受契約が締結されたことを裏付ける間接事実(徴憑事実)として評価できる。したがって、Dの交渉を通じて、上告人は賃貸人の地位を有効に承継したものと解される。
結論
買受人は、代理人を通じて賃貸人の地位を承継したといえる。したがって、買受人が賃貸人の地位にあることを前提とした原審の判断は正当であり、上告を棄却する。
事件番号: 昭和34(オ)444 / 裁判年月日: 昭和36年12月22日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】不動産の競売において、他人の依頼を受けて名義人となり競落した場合であっても、内部関係において所有権を依頼者に移転する合意があれば、依頼者が実質的な所有権を取得する。その後、当該物件の譲受人が従前の賃貸借契約を承継することに合意した場合には、譲受人は賃借人に対して明渡請求をなし得ない。 第1 事案の…
実務上の射程
対抗要件(不動産登記)を具備していない事案における賃貸人地位の承継の合意認定に関する事例判断である。司法試験等の答案上は、地位の承継に合意が必要な場面において、単なる売買の合意だけでなく、賃貸借の存在を前提とした価格交渉や代理権の範囲から「地位承継の合意」を認定する際の論理構成として活用できる。
事件番号: 昭和35(オ)824 / 裁判年月日: 昭和38年12月19日 / 結論: 棄却
賃借地上に建物を所有する者より当該建物を賃借している者は、当該建物に居住することによつて敷地を占有する権限を右土地所有者に対して有する。
事件番号: 昭和28(オ)372 / 裁判年月日: 昭和30年11月1日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】賃借権が対抗力を有する場合、賃貸借の目的物たる土地の譲受人は、当然に賃貸人たる地位を承継し、賃借人に対する義務を負う。 第1 事案の概要:被上告人(賃借人)は、本件土地について旧罹災都市借地借家臨時処理法10条に基づき、第三者に対抗できる借地権を有していた。上告人(譲受人)は、本件土地を譲り受けた…
事件番号: 昭和38(オ)1462 / 裁判年月日: 昭和39年6月26日 / 結論: 棄却
賃貸人たる地主は、借地人に対し賃料請求権を有するとしても、いまだ借地人から右賃料の支払を受けていないかぎり、借地権の無断譲受人に対し賃料相当の損害賠償請求ができる。
事件番号: 昭和32(オ)911 / 裁判年月日: 昭和35年2月19日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】賃貸人たる地位の承継に関する合意がない場合において、新所有者が賃借人に対して行う土地明渡請求が信義則に反し権利の濫用にあたるとはいえない。 第1 事案の概要:土地の所有者D(訴外)が、本件土地を被上告人(新所有者)に売り渡した。上告人(賃借人)は、Dが賃貸借上の権利義務を被上告人に承継させる意思を…