判旨
不動産の競売において、他人の依頼を受けて名義人となり競落した場合であっても、内部関係において所有権を依頼者に移転する合意があれば、依頼者が実質的な所有権を取得する。その後、当該物件の譲受人が従前の賃貸借契約を承継することに合意した場合には、譲受人は賃借人に対して明渡請求をなし得ない。
問題の所在(論点)
他人の名義を借りて競落した者の実質的所有権の帰属、および賃貸借契約の承継合意がある場合の譲受人による明渡請求の可否。
規範
不動産の競落名義人と実質的な所有者の関係について、名義人が競落によって所有権を取得すると同時に、依頼者にその所有権を移転する旨の合意が存在する場合には、依頼者が実質的な所有権を取得したものと解される。また、当該不動産の譲受人が、譲渡人との間で従前の賃貸借契約を承継する合意をした場合には、賃貸人たる地位が移転し、譲受人は当該賃貸借の拘束を受ける。
重要事実
本件土地の所有者Dは、株式会社Eによる競売に際し、Fに依頼して形式的にF名義で競落させた。この際、Fが競落により所有権を取得すると同時にDに所有権を移転する合意があったため、実質的な所有権はDに留保されていた。その後、上告人(買主)はDから本件土地を譲り受けたが、その際、Dと被上告人(賃借人)らとの間の賃貸借契約を承継することに合意していた。しかし、上告人は所有権に基づき、被上告人らに対し土地明渡しを求めて提訴した。
あてはめ
本件では、F名義での競落はDの依頼に基づく形式的なものであり、FからDへの所有権移転合意が含まれていた。したがって、Dは実質的な所有者といえる。さらに、上告人はDから土地を譲り受ける際、D・被上告人間の賃貸借契約を承継する旨を合意している。この合意により、上告人は賃貸人としての地位を承継しており、賃借人である被上告人らに対して正当な理由なく所有権に基づく明渡請求を主張することはできない。
結論
上告人の土地明渡請求は認められない(上告棄却)。
事件番号: 昭和34(オ)1162 / 裁判年月日: 昭和37年3月23日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】不動産の買受人が、当該不動産の賃貸借契約における賃貸人の地位を承継するためには、譲受人と譲渡人との間で賃貸人たる地位の譲受契約を締結することが必要であり、その代理権の授与も認められる必要がある。 第1 事案の概要:上告人(買受人)は、補助参加人(譲渡人)から本件土地を買い受けるに際し、訴外Dを代理…
実務上の射程
不動産執行における他人名義での競落の有効性、および賃貸借の承継合意という特約がある場合の対抗関係の処理において、実質的な合意内容を重視する判断枠組みとして活用できる。
事件番号: 昭和35(オ)824 / 裁判年月日: 昭和38年12月19日 / 結論: 棄却
賃借地上に建物を所有する者より当該建物を賃借している者は、当該建物に居住することによつて敷地を占有する権限を右土地所有者に対して有する。
事件番号: 昭和31(オ)763 / 裁判年月日: 昭和34年2月13日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】土地賃借人が地上建物を第三者に売却した後、土地所有者との間で土地賃貸借契約を合意解除しても、建物買受人が土地利用権を取得していない以上、建物買受人は土地所有者に対して建物の所有による土地の占有権原を主張できない。 第1 事案の概要:土地所有者Dは、Eに対して本件土地を賃貸し、Eは地上に本件建物を所…
事件番号: 昭和46(オ)844 / 裁判年月日: 昭和46年12月21日 / 結論: 棄却
建物の共有者の一人がその敷地を所有する場合において、右土地に設定された抵当権が実行され、第三者がこれを競落したときは、右土地につき、建物共有者全員のために、法定地上権が成立するものと解すべきである。
事件番号: 昭和39(オ)24 / 裁判年月日: 昭和40年2月12日 / 結論: 棄却
土地賃貸人において、転借人に対し後日直接賃貸借契約をしてよい意向を示し、それまでの間は転借について暗黙の承諾をしたと見られるような態度をとり、転借人としては、賃貸人の指図に従い、同人の転貸人に対する賃貸借消滅による建物収去土地明渡請求訴訟に協力する態度をとり、賃貸人が勝訴すれば自ら賃借できると考え、同人から明渡を請求さ…