他人の土地の用益がその他人の承諾のない転貸借に基づくものである場合において、土地の継続的な用益という外形的事実が存在し、かつ、その用益が賃借の意思に基づくものであることが客観的に表現されているときは、その土地の賃借権ないし転借権を時効により取得することができる。
土地の無断転貸借と土地の賃借権ないし転借権の時効取得
民法163条,民法601条,民法612条
判旨
土地の賃借権の時効取得は、継続的な用益という外形的事実と、賃借の意思が客観的に表現されている場合に認められ、これは無断転貸借の事案においても同様に適用される。
問題の所在(論点)
無断転貸借の形式をとる土地の継続的用益において、地主(賃貸人)との関係で賃借権(転借権)の時効取得(民法163条)が認められるか。また、原契約が存在する場合に時効取得は補充的にのみ認められるものか。
規範
民法163条に基づき土地の賃借権を時効取得するためには、①他人の土地の継続的な用益という外形的事実が存在し、かつ、②その用益が賃借の意思に基づくものであることが客観的に表現されていることを要する。この法理は、土地の用益が賃貸人の承諾のない転貸借に基づく場合であっても、賃貸人との関係において「所有権以外の財産権」を時効取得する場面として同様に適用される。
重要事実
転借人Dは、賃借人Eから土地を転借したが、地主Fの承諾は得ていなかった。Dは10年以上にわたり、建物の敷地として利用する意思で平穏公然に占有を継続し、占有開始時に善意無過失であったと主張して、Fに対し時効による賃借権(転借権)の取得を主張した。原審は、Eとの契約で転借権を得ている以上は時効取得の余地がないこと、および「無断転貸に対する承諾」の時効取得は認められないことを理由に、Dの主張を排斥した。
事件番号: 昭和47(オ)1191 / 裁判年月日: 昭和48年4月13日 / 結論: 棄却
土地に対する使用貸借上の借主の権利の時効取得が成立するためには、土地の継続的な使用収益という外形的事実が存在し、かつ、その使用収益が土地の借主としての権利の行使の意思に基づくものであることが客観的に表現されていることを必要とする。
あてはめ
土地の賃借権の時効取得制度は、契約による取得が認められない場合にのみ適用される補充的な制度ではない。本件においてDは、転貸人Eとの関係ではなく、地主Fとの関係で対抗しうる権利を時効取得したと主張しているのであり、Eとの間に転貸借契約が存在することは、Fに対する時効取得を否定する理由にはならない。また、Dの主張は「承諾」という事実の時効取得ではなく、Fに対抗可能な「賃借権」という財産権の時効取得を目的とするものであるから、法的に肯定される余地がある。
結論
無断転貸借であっても、継続的用益と賃借の意思の客観的表現という要件を満たせば、賃貸人に対し時効による賃借権取得を主張し得る。原審がこれを直ちに排斥したのは法令の解釈適用の誤りである。
実務上の射程
賃借権の時効取得を認めた昭和42年判決の法理を無断転貸借のケースにも拡張した。答案上は、時効取得の要件(継続的用益・客観的表現)を明示した上で、無断転貸・無断譲渡等の場面でも、賃貸人との関係で権利取得を構成する際の根拠として活用できる。
事件番号: 昭和52(オ)260 / 裁判年月日: 昭和52年10月24日 / 結論: 棄却
原判示の事実関係のもとでは、土地の用益について賃借意思が客観的に表現されたものとはいえず、右土地につき賃借権の時効取得は成立しない。
事件番号: 昭和41(オ)419 / 裁判年月日: 昭和41年11月1日 / 結論: 棄却
判示事情(判決理由参照)のあるときは賃料不払を理由とする賃貸借契約の判示解除は信義則に反し許されない。
事件番号: 昭和43(オ)1091 / 裁判年月日: 昭和44年4月24日 / 結論: 棄却
夫は宅地を賃貸し妻はその地上に建物を所有して同居生活をしていた夫婦の離婚に伴い、夫が妻へ借地権を譲渡した場合において、賃貸人は右同居生活および妻の建物所有を知つて夫に宅地を賃貸したものである等の判示事情があるときは、借地権の譲渡につき賃貸人の承諾がなくても、賃貸人に対する背信行為とは認められない特別の事情があるというべ…
事件番号: 昭和41(オ)660 / 裁判年月日: 昭和41年12月1日 / 結論: 棄却
賃料の催告と右催告の趣旨不履行による賃貸借契約解除の意思表示との間に約一四年のへだたりがあつても、原審認定(原判決理由参照)のごとく、相手方においてもはや右催告に基づく解除権の行使はないものと信ずべき正当な事由が生じたとはいえない事情のもとでは、右意思表示のときまで右解除権は有効に存続していたと解することができる。