宅地およびその上の建物を甲が所有していたところ、抵当権の実行により乙が建物を競落して、法定地上権を取得し(その後に宅地につき土地区画整理法によつていわゆる現地換地による仮換地の指定がなされた)、次いで丙が地上権とともに建物を譲受け、さらにその後丁が甲から宅地を譲受けてそれぞれ所有権移転登記を経由した場合においては、丙が地上権につき登記を有しなくとも建物保護ニ関スル法律の適用によつて丙は丁に対してその地上権を対抗できる。
法定地上権の承継取得と第三者に対する対抗力
民法177条,民法388条,建物保護ニ関スル法律1条
判旨
建物保護法1条(借地借家法10条1項)は、借地権の設定が合意か法定かに関わらず、建物の登記があれば借地権の対抗力を認める。この対抗力は、土地譲受人が借地権の設定された土地を第三者から譲り受けた場合に、借地権の登記がなくとも対抗できることを意味する。
問題の所在(論点)
抵当権の実行により発生した法定地上権について、建物所有者が建物保護法1条(借地借家法10条1項)に基づき、借地権自体の登記がなくとも建物の登記をもって土地譲受人に対抗できるか。特に、法定地上権が同条の対象に含まれるか、および同条の「第三者」に土地譲受人が含まれるかが問題となる。
規範
建物保護に関する法律1条(現行の借地借家法10条1項)にいう「建物ノ所有ヲ目的トスル地上権」には、抵当権の実行により成立する法定地上権も含まれる。また、同条は第三者の範囲について何ら限定していないため、建物の登記がある以上、借地権(地上権)自体の登記がなくても、土地の譲受人に対してその効力を対抗できる。
重要事実
Dは土地と建物を所有していたが、抵当権実行によりEが建物を競落し、同時に土地につき法定地上権を取得した。その後、土地には土地区画整理法による仮換地が指定された。被上告人はEから建物と地上権を譲り受け、建物登記を経由したが地上権登記は行わなかった。一方、上告人はDから土地を譲り受け、土地の所有権移転登記を完了した。上告人は、被上告人の地上権が未登記であることを理由に、建物収去土地明渡しを求めて提訴した。
事件番号: 昭和37(オ)1170 / 裁判年月日: 昭和40年5月7日 / 結論: 棄却
一筆の土地全部の賃借人が地上に登記ある建物を所有するにいたつたときは、その後右土地が分筆され、建物の存在しない部分の土地所有権を取得した者がある場合においても、これに対し賃借権を対抗することができる。
あてはめ
本件において、被上告人は建物につき登記を備えている。建物保護法1条は、建物の所有を目的とする地上権であればその成立原因を問わず適用されるため、法定地上権であっても同条の保護対象となる。また、同条にいう第三者には、借地権設定後の土地譲受人が含まれる。したがって、土地の譲受人である上告人に対し、被上告人は地上権自体の登記がなくとも、建物登記をもって自己の地上権を対抗できるといえる。
結論
被上告人の地上権は建物保護法1条により上告人に対抗可能であり、土地譲渡後に土地登記を備えた上告人に対しても、建物収去土地明渡しを拒絶できる。上告人の請求は棄却される。
実務上の射程
法定地上権についても、借地借家法10条1項(旧建物保護法1条)による対抗力の備披が認められることを確定した。答案上は、借地権の対抗要件(借地借家法10条)の論証において、合意による借地権のみならず法定地上権にも適用があることを示す際に引用する。また、対抗力の及ぶ対象(土地譲受人)に制限がないことを明示する際にも有効である。
事件番号: 昭和28(オ)334 / 裁判年月日: 昭和29年12月17日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】建物保護に関する法律1条(現借地借家法10条1項)による建物の登記は、土地賃借権の対抗力を認めるものであり、賃貸人の承諾(民法612条1項)を不要とする効果までは認められない。 第1 事案の概要:土地賃借人Dは、本件宅地の賃借権を上告人に対して譲渡したが、その際、賃貸人である被上告人の承諾を得てい…
事件番号: 昭和36(オ)1071 / 裁判年月日: 昭和37年11月8日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】土地譲渡担保において、譲渡担保権者から土地を取得した者に対し、借地人が建物登記による対抗力を具備していても、譲渡担保権者が賃借権を承認した事実がない限り、賃借権を対抗することはできない。 第1 事案の概要:Dは本件土地を株式会社E商店に譲渡(事案上、譲渡担保契約を基礎とする)し、所有権移転登記を完…
事件番号: 昭和33(オ)711 / 裁判年月日: 昭和35年6月28日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】競落許可決定により土地の所有権を取得した者は、建物保護法1条(現借地借家法10条1項)に基づく借地権の対抗を受ける「第三者」に含まれる。 第1 事案の概要:被上告人(賃借人)は、昭和21年頃に建物所有目的で本件土地を賃借し、昭和27年10月に土地上の建物について所有権保存登記を経由した。その後、上…
事件番号: 昭和36(オ)304 / 裁判年月日: 昭和36年9月7日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】借地法10条(現行借地借家法14条)に基づく建物買取請求権は、買取請求の意思表示の時点において、土地賃借権が有効に存在していることを要件とする。 第1 事案の概要:上告人A1及びA2が、被上告人所有の土地を賃借し、その地上に建物を所有していた事案において、賃料の支払をめぐる争い等により賃貸借関係の…