判旨
不法占拠者に対して建物の収去及び土地の明渡しを命じる判決において、第三者の借地権が存在する場合であっても、当該判決が当然に第三者の権利を消滅させるものではない。
問題の所在(論点)
不法占有者に対する土地明渡請求が認容される場合に、第三者が有する借地権の存否が判決の正当性に影響を与えるか。また、土地管理人が介在する場合に賃貸借契約の成立が認められるか。
規範
建物収去土地明渡請求において、占有者が正当な占有権原(賃貸借契約等)を有しない場合には、明渡しを命じるべきである。その際、当該土地に第三者の借地権が設定されていたとしても、不法占拠者に対する明渡命令は、その第三者の借地権を当然に消滅させる性質のものではない。
重要事実
上告人(被告)は、本件土地上に平家建(建坪8坪2合)を所有し占有していた。第一審判決は、上告人に対し、当該建物を収去した上で敷地を明渡すよう命じた。これに対し上告人は、訴外人に借地権が存在すること、および当該訴外人が土地管理人であったことから自身との間に賃貸借関係が成立している旨を主張して争った。
あてはめ
本件において、上告人と土地所有者等との間に適法な賃貸借契約が締結された事実は認められない。たとえ訴外人らが土地の管理人であったとしても、原判決の事実関係の下では上告人との間に賃貸借契約の成立を認める余地はない。また、仮に第三者に借地権があったとしても、上告人に対して明渡しを命じることは、その第三者の借地権を消滅させる理由にはならないため、上告人は明渡しを拒めない。
結論
上告人に占有権原は認められず、建物を収去して土地を明渡すべきとした原判決は正当である。
実務上の射程
事件番号: 昭和33(オ)279 / 裁判年月日: 昭和33年7月11日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】不動産の明渡請求が権利の濫用(民法1条3項)に当たるか否かは、当該請求を認めることが社会通念上著しく正当性を欠くといえるか等の事実関係を総合考慮して判断すべきである。 第1 事案の概要:上告人(被告)に対し、被上告人(原告)が本件建物の明渡しを求めた事案である。原審において認定された事実関係の詳細…
不法占拠者に対する明渡請求訴訟において、被告が「他人に借地権がある」と抗弁しても、自己の占有権原を証明しない限り、請求は認容される。第三者の権利関係と、不法占有者の退去義務は別個に判断されるという実務上の運用を確認するものである。
事件番号: 昭和31(オ)627 / 裁判年月日: 昭和33年7月3日 / 結論: 棄却
土地改良法第八条第四項による書類の縦覧期間が法定の二〇日間に満たなくても、満一〇日間縦覧期間が存した以上、同法第一〇条第一項によつてした知事の土地改良区設立認可は当然無効ではない。
事件番号: 昭和33(オ)711 / 裁判年月日: 昭和35年6月28日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】競落許可決定により土地の所有権を取得した者は、建物保護法1条(現借地借家法10条1項)に基づく借地権の対抗を受ける「第三者」に含まれる。 第1 事案の概要:被上告人(賃借人)は、昭和21年頃に建物所有目的で本件土地を賃借し、昭和27年10月に土地上の建物について所有権保存登記を経由した。その後、上…
事件番号: 昭和33(オ)683 / 裁判年月日: 昭和35年3月1日 / 結論: 棄却
他人の不動産を占有する正権原があるとの主張については、その主張をする者に立証責任があると解すべきである。
事件番号: 昭和33(オ)717 / 裁判年月日: 昭和35年3月8日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】土地をその上に建物を所有して占有する者は、民法188条による権利適法推定を受けないため、土地の占有権原として使用貸借の成立を主張する者がその挙証責任を負う。 第1 事案の概要:上告人は、本件土地上に建物を所有して占有していた。被上告人(土地所有者)からの土地明け渡し請求に対し、上告人は当該土地の使…