地上権を譲り受けた者は、地上権について登記を有しなくても、その地上の建物について所有権移転登記を経由した以上、建物保護ニ関スル法律第一条第一項により、右地上権の承継を地上権設定者たる土地所有者に対抗することができる。
地上権の譲受人が地上建物について所有権移転登記を経由した場合の土地所有者に対する右地上権の対抗関係
建物保護ニ関スル法律1条1項
判旨
建物所有を目的とする地上権において、当該建物について所有権移転登記を経由しているときは、地上権自体の登記がなくても、土地所有者に対して地上権の取得を対抗できる。
問題の所在(論点)
建物譲受人が、敷地の地上権について登記を備えていない場合であっても、建物自体の所有権移転登記を備えていれば、土地所有者に対して当該地上権の取得を対抗できるか(借地法1条、現行借地借家法10条1項の適用ないし類推適用の可否)。
規範
建物所有を目的とする地上権等の借地権について、借地上に登記された建物を所有しているときは、借地法1条(現行の借地借家法10条1項)の規定により、地上権設定登記を欠いていても、その借地権を第三者に対抗することができる。
重要事実
被上告人(建物譲受人)は、本件係争建物の譲渡を受け、その所有権移転登記を経由した。しかし、当該建物の敷地利用権である地上権については、その取得に関する登記を経由していなかった。土地所有者である上告人は、地上権の登記がないことを理由に、被上告人に対して地上権の取得を対抗できないと主張した。
事件番号: 昭和39(オ)842 / 裁判年月日: 昭和40年4月2日 / 結論: 棄却
土地の賃借人は、その土地の上に登記した建物を有しないかぎり、右賃借権の存在を知つて土地所有権を取得した第三者に対しても土地賃借権を主張することができない。
あてはめ
被上告人は、本件建物の所有権を取得し、その所有権移転登記を完了している。借地法1条の趣旨は、借地権の登記が困難な実情に鑑み、建物登記をもって代用させることで借地権者の保護を図る点にある。本件において、被上告人が建物の所有権移転登記を経由している事実は、その敷地利用権の公示として十分な機能を果たしているといえる。したがって、地上権自体の登記を欠いていても、建物登記を具備している以上、土地所有者に対抗しうる正当な権原を有すると評価される。
結論
被上告人は、本件建物の所有権移転登記をもって、土地所有者に対し地上権の取得を対抗できる。
実務上の射程
本判決は借地法1条(現行借地借家法10条1項)に関するものである。建物所有権が移転した場合に、建物登記の名義人が自己への移転登記を完了していれば、地主等の第三者に対して借地権を対抗できることを認めた実務上極めて重要な先例である。
事件番号: 昭和28(オ)334 / 裁判年月日: 昭和29年12月17日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】建物保護に関する法律1条(現借地借家法10条1項)による建物の登記は、土地賃借権の対抗力を認めるものであり、賃貸人の承諾(民法612条1項)を不要とする効果までは認められない。 第1 事案の概要:土地賃借人Dは、本件宅地の賃借権を上告人に対して譲渡したが、その際、賃貸人である被上告人の承諾を得てい…
事件番号: 昭和40(オ)1082 / 裁判年月日: 昭和41年8月26日 / 結論: 棄却
抵当権に優先する借地権の法定更新は、右抵当権の実行による差押中においても妨げられるものではない。
事件番号: 昭和34(オ)1106 / 裁判年月日: 昭和37年3月27日 / 結論: 棄却
宅地およびその上の建物を甲が所有していたところ、抵当権の実行により乙が建物を競落して、法定地上権を取得し(その後に宅地につき土地区画整理法によつていわゆる現地換地による仮換地の指定がなされた)、次いで丙が地上権とともに建物を譲受け、さらにその後丁が甲から宅地を譲受けてそれぞれ所有権移転登記を経由した場合においては、丙が…
事件番号: 昭和42(オ)360 / 裁判年月日: 昭和42年6月27日 / 結論: 棄却
建物所有を目的とする土地の賃借人は、その地上に所有権の登記のある建物を有する以上、その登記が、土地の賃貸人からの申請に基づく処分禁止の仮処分命令の登記をなす前提として、登記官吏の職権をもつてなされたものである場合でも、賃借権をもつて第三者に対抗することができる。