宅地賃貸借において地上の賃借人所有建物の増築禁止の特約を有効と認めた事例
判旨
土地賃貸借契約において建物の種類や構造を制限する特約がある場合、賃借人がこれに違反して建物を建築したときは、当該特約違反を理由とする賃貸借契約の解除が有効に認められる。
問題の所在(論点)
土地賃貸借契約における建物の種類等を制限する特約の効力、および当該特約違反を理由とする賃貸借契約の解除の可否。
規範
土地賃貸借契約における建物の種類・構造等を制限する特約は、特約締結の事実が認められる限り有効であり、賃借人がその制限に服する主観的な意思を有していたか否かにかかわらず、当該特約に違反する行為は契約解除の事由となり得る。ただし、その解除が有効であるためには、当該違反が賃貸人と賃借人との間の信頼関係を破壊するに足りるものであることを要する(信頼関係破壊の法理)。
重要事実
上告人(賃借人)は、被上告人(賃貸人)との間で土地賃貸借契約を締結した際、建物の種類や構造を制限する旨の特約(所論特約)を付した。しかし、賃借人はこの特約に違反して建物を建築した。賃貸人は、この特約違反を理由として賃貸借契約の解除を主張した。上告人は、特約に服する意思がなかったことや、信義則違反などを主張して争った。
あてはめ
本件において、特約締結の事実は当事者間に争いがない。上告人が当該特約による制限に服する意思を持って契約したか否かは、客観的に成立した特約の効力を左右しない。原審が確定した事実関係によれば、特約違反の事実は明白であり、これによって賃貸借契約の解除を認めることは借地法の解釈や信義則に照らしても正当である。特約違反の程度が信頼関係を破壊するに至っているものと判断される。
結論
事件番号: 昭和38(オ)48 / 裁判年月日: 昭和39年6月19日 / 結論: 棄却
一 道路を隔てて存在する甲乙二筆の土地の賃借人が甲地上にその用方違反となるべき石油貯蔵庫を建築した場合において、右二筆の土地が一括して賃貸借の目的となつていて、賃借人としては右二筆の土地を石油類販売業のため総合的に利用しようとして右貯蔵庫を建築した等原審判示の事情(原判決理由参照)のもとでは、賃貸人は右用方違反を事由と…
本件特約違反を理由とする土地賃貸借契約の解除は有効であり、上告人の上告は棄却される。
実務上の射程
借地権における建物の種類・構造の制限(いわゆる「借地条件」)をめぐる紛争において、特約の存在が認められる場合の解除の可否を判断する際の基礎となる判例である。答案上は、まず特約の成否を確認し、次いで信頼関係破壊の法理に照らして解除の適否を検討する際の実例として活用できる。
事件番号: 昭和31(オ)664 / 裁判年月日: 昭和33年1月23日 / 結論: 棄却
借地上の建物が滅失し借地権者が新たに非堅固建物を築造するにあたり、存続期間満了の際における借地の返還を確保する目的をもつて、残存期間を超えて存続する建物を築造しない旨借地権者をして特約させた場合、右特約は借地法第一一条により無効である。
事件番号: 昭和33(オ)453 / 裁判年月日: 昭和34年7月17日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】賃借人による建物の無断増改築等の行為が、賃貸人に対する背信行為と認められる場合には、賃貸借契約の解除が認められる。また、そのような解除に基づく明渡請求は、特段の事情がない限り権利の濫用には当たらない。 第1 事案の概要:賃借人(上告人)が、賃貸人(被上告人)に無断で本件賃貸借契約の対象に関連して建…
事件番号: 昭和34(オ)288 / 裁判年月日: 昭和35年7月27日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】借地権の承継が認められない事実関係の下では、建物買取請求権を行使することはできない。また、特段の事情がない限り、土地明渡請求が権利濫用や信義則違反に当たるとはいえない。 第1 事案の概要:上告人(被告)は本件土地上の建物を所有し、被上告人(原告)に対して建物買取請求権を主張した。しかし、原審におい…
事件番号: 昭和39(オ)1308 / 裁判年月日: 昭和40年7月23日 / 結論: 棄却
本訴請求は、建物所有者に収去義務の現存する建物の占有者に対し該建物からの退去を求める趣旨と解せられるから、右占有者が右建物の占有関係を離れてその敷地そのものの占有権原を主張しても、抗弁となりえない。