判旨
借地権の承継が認められない事実関係の下では、建物買取請求権を行使することはできない。また、特段の事情がない限り、土地明渡請求が権利濫用や信義則違反に当たるとはいえない。
問題の所在(論点)
1. 借地権の承継が認められない場合に、建物買取請求権を認めることができるか。2. 本件土地明渡請求等の訴えが権利濫用または信義則違反に当たるか。
規範
建物買取請求権(旧借地法4条2項、現行借地借家法13条参照)を行使するためには、適法な借地権の承継がなされていることが前提となる。また、権利の行使が権利濫用(民法1条3項)や信義則(同1条2項)に反すると認められるためには、具体的状況に照らして正当性を欠く特段の事情が必要である。
重要事実
上告人(被告)は本件土地上の建物を所有し、被上告人(原告)に対して建物買取請求権を主張した。しかし、原審において、上告人に本件土地に係る借地権の承継があったという事実は認定されなかった。また、上告人は被上告人による本訴請求(土地明渡請求等)が権利濫用または信義則違反であると主張して争った。
あてはめ
1. 建物買取請求権について、原判決は上告人による借地権の承継があった事実を否定しており、この事実関係を前提とする限り、買取請求権が認められないとする判断は正当である。 2. 権利濫用・信義則違反について、上告人が主張する事情(一)のみでは、現下の法制において請求を排斥するに足りない。また、上告人が主張するその他の事情(二)についても、原審においてそれを基礎付ける事実関係が全く認定されていない。したがって、本件請求を権利濫用等と解することはできない。
結論
借地権の承継がない以上、建物買取請求権は認められない。また、本件請求が権利濫用や信義則に反するものとは認められず、土地明渡請求を認めた原判決は正当である。
事件番号: 昭和31(オ)755 / 裁判年月日: 昭和32年6月28日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】権利濫用の抗弁は、その前提となる権利(賃借権等)の取得が認められない場合には、判断の対象とならない。また、控訴審で主張していない事実を前提とした判断遺脱の主張は、上告理由として認められない。 第1 事案の概要:上告人は、本件土地について賃借権を取得したと主張し、その上で権利濫用の抗弁を提出した。し…
実務上の射程
借地権の存在や承継が否定された局面において、形式的に建物買取請求権の成立を否定する実務上の運用を再確認したものである。権利濫用の抗弁については、単なる事情の羅列ではなく、認定された事実に基づき現行法制上の許容限度を超える場合に限定されるという、主張立証の厳格さを示唆している。
事件番号: 昭和34(オ)759 / 裁判年月日: 昭和35年10月4日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】権利の濫用(民法1条3項)の成否は、原審が確定した事実に即して判断されるべきであり、権利行使が正当な範囲を逸脱していると認められない限り、その請求は容認される。 第1 事案の概要:本判決文からは具体的な事案の詳細は不明であるが、上告人が被上告人の請求に対し、民法1条に違反する権利の濫用であると主張…
事件番号: 昭和36(オ)304 / 裁判年月日: 昭和36年9月7日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】借地法10条(現行借地借家法14条)に基づく建物買取請求権は、買取請求の意思表示の時点において、土地賃借権が有効に存在していることを要件とする。 第1 事案の概要:上告人A1及びA2が、被上告人所有の土地を賃借し、その地上に建物を所有していた事案において、賃料の支払をめぐる争い等により賃貸借関係の…
事件番号: 昭和35(オ)53 / 裁判年月日: 昭和37年3月30日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】民法1条3項の権利濫用について、契約解除権の行使が権利の濫用にあたると解すべき根拠となる事実が認められない場合には、当該解除は有効である。原審が確定した事実関係の範囲内では、解除権の行使を不当とする事情がなく、権利濫用には当たらないとした判断を維持した。 第1 事案の概要:本件は契約の解除権行使の…
事件番号: 昭和33(オ)279 / 裁判年月日: 昭和33年7月11日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】不動産の明渡請求が権利の濫用(民法1条3項)に当たるか否かは、当該請求を認めることが社会通念上著しく正当性を欠くといえるか等の事実関係を総合考慮して判断すべきである。 第1 事案の概要:上告人(被告)に対し、被上告人(原告)が本件建物の明渡しを求めた事案である。原審において認定された事実関係の詳細…