判旨
権利濫用の抗弁は、その前提となる権利(賃借権等)の取得が認められない場合には、判断の対象とならない。また、控訴審で主張していない事実を前提とした判断遺脱の主張は、上告理由として認められない。
問題の所在(論点)
権利の取得が認められない場合に、当該権利を前提とする権利濫用の主張に判断を示す必要があるか。また、原審で主張しなかった事実に基づく判断遺脱の主張が認められるか。
規範
裁判所が権利濫用の主張について判断を示すためには、その前提として、主張者が当該権利を有効に取得・保持していることが認められる必要がある。また、上告審における判断遺脱の主張は、原審(控訴審)において適法に提出された事実に限られる。
重要事実
上告人は、本件土地について賃借権を取得したと主張し、その上で権利濫用の抗弁を提出した。しかし、原審(二審)は、上告人が本件土地につき賃借権を取得したという前提事実を認めなかった。さらに、上告人は原審で主張していなかった新たな事実に基づき、原判決に判断遺脱がある旨を上告理由として主張した。
あてはめ
上告人は本件土地の賃借権を前提として権利濫用を主張したが、原判決において前提となる賃借権の取得自体が否定されている以上、これに続く権利濫用の成否について判断を示す必要はない。また、第二点の主張は原審において主張されていない事実を前提とするものであり、事後審である上告審においてこれを前提とした判断遺脱を問うことは許されない。
結論
本件上告は棄却される。前提事実が認められない以上、権利濫用の判断遺脱はなく、原審で主張のない事実に基づく不服申立ても採用できない。
実務上の射程
事件番号: 昭和34(オ)288 / 裁判年月日: 昭和35年7月27日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】借地権の承継が認められない事実関係の下では、建物買取請求権を行使することはできない。また、特段の事情がない限り、土地明渡請求が権利濫用や信義則違反に当たるとはいえない。 第1 事案の概要:上告人(被告)は本件土地上の建物を所有し、被上告人(原告)に対して建物買取請求権を主張した。しかし、原審におい…
予備的抗弁としての権利濫用主張に対し、主要な法的構成(賃借権の存否等)が否定された場合に、裁判所が判断を省略できる実務的根拠となる。また、上告理由における事実摘示の限界(更新権の制限)を確認する際に有用である。
事件番号: 昭和34(オ)759 / 裁判年月日: 昭和35年10月4日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】権利の濫用(民法1条3項)の成否は、原審が確定した事実に即して判断されるべきであり、権利行使が正当な範囲を逸脱していると認められない限り、その請求は容認される。 第1 事案の概要:本判決文からは具体的な事案の詳細は不明であるが、上告人が被上告人の請求に対し、民法1条に違反する権利の濫用であると主張…
事件番号: 昭和33(オ)345 / 裁判年月日: 昭和34年8月7日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】上告審において、原審で主張していなかった新たな事実上の主張を基礎として原判決の違法をいうことは、民事訴訟の手続上許されない。 第1 事案の概要:上告人(賃借人)は、被上告人(賃貸人)からなされた月額5,000円の延滞賃料の催告に基づく契約解除を争っていた。上告人は、上告審において、当該催告より以前…
事件番号: 昭和35(オ)53 / 裁判年月日: 昭和37年3月30日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】民法1条3項の権利濫用について、契約解除権の行使が権利の濫用にあたると解すべき根拠となる事実が認められない場合には、当該解除は有効である。原審が確定した事実関係の範囲内では、解除権の行使を不当とする事情がなく、権利濫用には当たらないとした判断を維持した。 第1 事案の概要:本件は契約の解除権行使の…
事件番号: 昭和32(オ)659 / 裁判年月日: 昭和33年5月16日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】権利の行使が権利の濫用に該当するか否かは、確定された事実関係に基づき、客観的・総合的な諸事情を照らして判断される。本件においては、原審の認定した事実の範囲内では権利の濫用とは認められないと判断された。 第1 事案の概要:上告人らは、被上告人による本訴請求が権利の濫用にあたると主張して争った。原審は…