借地上の建物が滅失し借地権者が新たに非堅固建物を築造するにあたり、存続期間満了の際における借地の返還を確保する目的をもつて、残存期間を超えて存続する建物を築造しない旨借地権者をして特約させた場合、右特約は借地法第一一条により無効である。
借地上の建物滅失の場合における残存期間を超えて存続すべき建物を建築しない旨の特約の効力
借地法11条,借地法7条,借地法4条
判旨
借地法11条(現行借地借家法9条)に反する特約は無効であり、その特約に基づく契約解除は認められない。また、親族名義での登記であっても、実質的な所有関係に基づき無断転貸の成否を判断すべきである。
問題の所在(論点)
1. 借地法11条(現行9条)の強行規定性に反する特約に基づく解除が認められるか。2. 建物名義を親族名義にしていることが、民法612条の無断転貸に該当するか。
規範
借地権者にとって不利な特約は、借地法11条により無効とされる。また、民法612条2項に基づく無断転貸による解除が認められるためには、実質的な賃借権の譲渡または転貸の事実が認められることを要する。
重要事実
賃貸人(上告人)が、賃借人(被上告人)との間で締結した特定の特約に基づき、契約の解除を主張して建物の収去および土地の明け渡しを求めた。また、賃借人B1が自己所有として建築した建物を、事情により親族であるB2の名義で保存登記していたことに関し、これが無断転貸に該当するかが争われた。
事件番号: 昭和43(オ)1091 / 裁判年月日: 昭和44年4月24日 / 結論: 棄却
夫は宅地を賃貸し妻はその地上に建物を所有して同居生活をしていた夫婦の離婚に伴い、夫が妻へ借地権を譲渡した場合において、賃貸人は右同居生活および妻の建物所有を知つて夫に宅地を賃貸したものである等の判示事情があるときは、借地権の譲渡につき賃貸人の承諾がなくても、賃貸人に対する背信行為とは認められない特別の事情があるというべ…
あてはめ
1. 本件特約は、借地法11条の趣旨に照らし、借地権者に不利な内容を含む強行法規違反として無効である。無効な特約に基づく解除権の行使は法的に認められない。2. 転貸の事実については、B1が自己所有の建物として建築し、一家の事情により便宜上B2名義としていたに過ぎない。この場合、実質的な所有権の移転や利用主体の変更はなく、転貸の事実は認められない。
結論
本件特約は無効であり、これに基づく解除は認められない。また、転貸の事実も認められないため、賃貸人の請求を棄却した原審の判断は正当である。
実務上の射程
借地法上の強行規定に抵触する特約が無効であることを再確認する事例である。実務上は、建物登記名義と実質的な所有者が異なる場合でも、親族間の便宜的な名義変更に過ぎない場合は無断転貸を否定する根拠として活用できる。
事件番号: 昭和34(オ)768 / 裁判年月日: 昭和37年5月29日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】土地賃貸借契約において建物の種類や構造を制限する特約がある場合、賃借人がこれに違反して建物を建築したときは、当該特約違反を理由とする賃貸借契約の解除が有効に認められる。 第1 事案の概要:上告人(賃借人)は、被上告人(賃貸人)との間で土地賃貸借契約を締結した際、建物の種類や構造を制限する旨の特約(…
事件番号: 昭和32(オ)411 / 裁判年月日: 昭和33年10月21日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】賃借人が無断で賃借権を譲渡した場合であっても、それが賃貸人に対する背信行為と認めるに足りない特段の事情があるときは、賃貸人は民法612条2項による解除権を行使できない。 第1 事案の概要:賃借人(被上告人)が賃貸人の承諾を得ることなく賃借権を第三者に譲渡した。これに対し、賃貸人は民法612条2項に…
事件番号: 昭和33(オ)453 / 裁判年月日: 昭和34年7月17日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】賃借人による建物の無断増改築等の行為が、賃貸人に対する背信行為と認められる場合には、賃貸借契約の解除が認められる。また、そのような解除に基づく明渡請求は、特段の事情がない限り権利の濫用には当たらない。 第1 事案の概要:賃借人(上告人)が、賃貸人(被上告人)に無断で本件賃貸借契約の対象に関連して建…
事件番号: 昭和39(オ)144 / 裁判年月日: 昭和40年6月18日 / 結論: 棄却
宅地の賃借人が賃借地上に判示事情のある同居の家族に建物を建築させてこれにその敷地を転貸した場合には、右転貸につき賃貸人の承諾がなくても、賃貸人に対する信頼関係を破壊するに足りない特段の事情があるというべきである。