判旨
賃借人による建物の無断増改築等の行為が、賃貸人に対する背信行為と認められる場合には、賃貸借契約の解除が認められる。また、そのような解除に基づく明渡請求は、特段の事情がない限り権利の濫用には当たらない。
問題の所在(論点)
賃借人による無断の建物建築行為が賃貸借契約における背信行為に該当するか。また、それを理由とする賃貸人の建物明渡請求が権利の濫用に該当するか。
規範
賃借人に契約上の義務違反(無断増改築等)がある場合において、それが賃貸人と賃借人との間の信頼関係を破壊するに足りる背信行為と認められるときは、賃貸人は催告を要せず、あるいは催告の上で契約を解除することができる。また、正当な解約申入れや解除権の行使に基づく明渡請求は、特段の事情がない限り、信義則上の権利濫用には該当しない。
重要事実
賃借人(上告人)が、賃貸人(被上告人)に無断で本件賃貸借契約の対象に関連して建物を建築した。これに対し、賃貸人は契約違反を理由に賃貸借契約を解除し、建物の明渡しを求めて提訴した。賃借人側は、当該建築行為が背信行為には当たらないこと、および明渡請求が権利の濫用に当たることを主張して争った。
あてはめ
本件における建物の建築という事実は、原判決の認定によれば賃貸借契約に違背する不信行為(背信行為)であると評価される。賃借人による一方的な現状変更は、継続的契約の基礎となる信頼関係を損なうものである。さらに、契約違反に基づく解除の結果としてなされる明渡請求についても、諸般の事情に照らし、正当な権利行使の範囲内であって、権利の濫用とは認められない。
結論
本件の建物建築は不信行為に該当し、これに基づく明渡請求は権利の濫用には当たらないため、上告を棄却し明渡請求を認容した原判決は正当である。
実務上の射程
事件番号: 昭和33(オ)279 / 裁判年月日: 昭和33年7月11日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】不動産の明渡請求が権利の濫用(民法1条3項)に当たるか否かは、当該請求を認めることが社会通念上著しく正当性を欠くといえるか等の事実関係を総合考慮して判断すべきである。 第1 事案の概要:上告人(被告)に対し、被上告人(原告)が本件建物の明渡しを求めた事案である。原審において認定された事実関係の詳細…
信頼関係破壊の法理における「背信性」の有無を判断する際、無断増改築や新築が重要な要素となることを示している。答案上は、賃貸借の解除を論じる際、形式的な義務違反のみならず、背信性の有無を具体的事実から検討する際の根拠として活用できる。
事件番号: 昭和31(オ)627 / 裁判年月日: 昭和33年7月3日 / 結論: 棄却
土地改良法第八条第四項による書類の縦覧期間が法定の二〇日間に満たなくても、満一〇日間縦覧期間が存した以上、同法第一〇条第一項によつてした知事の土地改良区設立認可は当然無効ではない。
事件番号: 昭和33(オ)1024 / 裁判年月日: 昭和35年9月9日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】土地所有者が土地の使用を容認していたとはいえない状況において、当該土地の明渡し等を求める請求は、特段の事情がない限り権利の濫用(民法1条3項)には当たらない。 第1 事案の概要:上告人(被告)が本件土地を使用していたところ、被上告人ら(原告)が土地所有権に基づき本訴請求(明渡し等)を提起した。上告…