一 道路を隔てて存在する甲乙二筆の土地の賃借人が甲地上にその用方違反となるべき石油貯蔵庫を建築した場合において、右二筆の土地が一括して賃貸借の目的となつていて、賃借人としては右二筆の土地を石油類販売業のため総合的に利用しようとして右貯蔵庫を建築した等原審判示の事情(原判決理由参照)のもとでは、賃貸人は右用方違反を事由として甲乙二筆の土地全体について賃貸借契約を解除することができる。 二 借地の用方を主として貯炭場を設けるためと定め、建物の建築としては木造の小規模のものに限るとの特約のもとでなされた土地賃貸借契約において、賃借人が賃貸人の事前の明白な拒否にもかかわらず、借地上に石油類販売用のコンクリートブロツク造の堅固な石油貯蔵庫を建築することは、賃借物の用方違反をきたすものというべく、当該石油貯蔵庫の建築が消防署の命によつて従前の木造をコンクリートブロツク造に改めたという事情によるものであつても、右事情は用方違反の違法性を阻却する事由とはならない。
一 二筆の土地を一括して賃借した場合に一筆の土地についての用方違反によつて二筆の土地全部の賃貸借契約を解除できるとされた事例。 二 堅固建物への改築が消防署の命によつた場合でも借地の用方違反の違法性は阻却されないとされた事例。
民法616条,民法549条1項
判旨
借地上の建物建築制限特約に違反する堅固な工作物の建築は、賃貸人の事前拒絶がある場合には信頼関係を破壊する用法違反にあたり、契約全体の解除原因となる。
問題の所在(論点)
1. 借地上の建物構造・用途を制限する特約の有効性。2. 2筆一括の賃貸借において、一部の土地の用法違反が全体に対する解除原因となるか。3. 行政上の命令に基づく改築が、特約違反(用法違反)の違法性を阻却し、信頼関係を破壊しないといえるか。
規範
1. 借地法11条(現借地借家法9条等)に照らしても、使用目的を限定し堅固建物の建築を制限する特約は有効である。2. 複数の土地を一括して賃貸借の目的とした場合、一部の土地における用法違反は、特約の趣旨や賃借人の態様に照らし、賃貸借契約全体の解除原因となり得る。3. 法令(消防法等)上の要請に基づく改築であっても、賃貸人の明白な事前の拒絶に反して堅固な工作物を建築した場合は、信頼関係を破壊する用法違反として違法性が認められる。
事件番号: 昭和34(オ)768 / 裁判年月日: 昭和37年5月29日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】土地賃貸借契約において建物の種類や構造を制限する特約がある場合、賃借人がこれに違反して建物を建築したときは、当該特約違反を理由とする賃貸借契約の解除が有効に認められる。 第1 事案の概要:上告人(賃借人)は、被上告人(賃貸人)との間で土地賃貸借契約を締結した際、建物の種類や構造を制限する旨の特約(…
重要事実
賃借人(上告人)は、木造住宅・店舗および貯炭場としての使用を目的とし、危険・有害な事業を禁止する特約の下で2筆の土地を一括して借り受けた。上告人は石油販売のため、消防署の命令を理由に、賃貸人(被上告人)の事前の明白な拒絶を無視して、特約に反するコンクリートブロック造の堅固な石油貯蔵庫を建築した。被上告人は用法違反を理由に、2筆の土地を含む賃貸借契約全体の解除を主張した。
あてはめ
1. 本件特約は、土地の利用目的を限定し、特定の種類・構造の建物所有を認めるものであり、借地権者に不利な契約条件を付したものとして無効とはならない。2. 本件契約は2筆を一体として石油類販売のために総合利用する趣旨であり、一部の用法違反は契約全体に対する解除原因となる。3. 消防署の命令があったとしても、本来の貯炭場としての用途を逸脱し、かつ賃貸人の明示的な拒否を無視して堅固建物を建築した以上、相互の信頼関係を害するものとして違法性が認められる。
結論
本件用法違反による解除は有効である。賃貸人の事前の明白な拒絶に反して堅固な石油貯蔵庫を建築した行為は、賃貸借の信頼関係を破壊するに足りるため、借地全体の契約解除が認められる。
実務上の射程
借地権の用法違反における「信頼関係破壊の法理」の適用場面。特に行政上の指導・命令がある場合でも、賃貸人の承諾を得る努力を怠り強行した場合には、解除が正当化されやすいことを示す。また、複数筆の一括賃貸借における不可分的な解除の可否を検討する際の判断材料となる。
事件番号: 昭和39(オ)1243 / 裁判年月日: 昭和41年6月9日 / 結論: 棄却
地上建物を地主に無断で増改築しない旨の特約に違反して、地主に無断で旧建物たる平家建バラツクを支柱の一部のみを残して他を全部とりこわし、新たに二階建本建築をした等原審認定の事実関係のもとにおいては、右無断増改築を理由とする土地賃貸借契約解除は有効と解すべきである。
事件番号: 昭和39(オ)1450 / 裁判年月日: 昭和41年4月21日 / 結論: 棄却
一 建物所有を目的とする土地の賃貸借中に、賃借人が賃貸人の承諾をえないで借地内の建物の増改築をするときは、賃貸人は催告を要しないで賃貸借を解除することができる旨の特約があるにかかわらず、賃借人が賃貸人の承諾を得ないで増改築をした場合において、増改築が借地人の土地の通常の利用上相当であり、土地賃貸人に著しい影響を及ぼさな…
事件番号: 昭和28(オ)1188 / 裁判年月日: 昭和30年12月16日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】解除権者が長期間権利を行使せず、相手方がその権利はもはや行使されないと信頼すべき正当の事由を有し、その後の行使が信義誠実に反すると認められる特段の事由がある場合には、解除権の行使は許されない。 第1 事案の概要:被上告人(解除権者)は、上告人に対して発生した解除権を約4年1ヶ月の長期間にわたって行…
事件番号: 昭和39(オ)1308 / 裁判年月日: 昭和40年7月23日 / 結論: 棄却
本訴請求は、建物所有者に収去義務の現存する建物の占有者に対し該建物からの退去を求める趣旨と解せられるから、右占有者が右建物の占有関係を離れてその敷地そのものの占有権原を主張しても、抗弁となりえない。