地上建物を地主に無断で増改築しない旨の特約に違反して、地主に無断で旧建物たる平家建バラツクを支柱の一部のみを残して他を全部とりこわし、新たに二階建本建築をした等原審認定の事実関係のもとにおいては、右無断増改築を理由とする土地賃貸借契約解除は有効と解すべきである。
地上建物増改築禁止の特約違反を理由とする土地賃貸借契約解除が有効とされた事例
借地法11条
判旨
無断増改築禁止特約に違反して旧建物の大部分を取り壊し、新たに二階建本建築を行うことは、賃貸人に対する信頼関係を破壊するものとして、土地賃貸借契約の解除事由となる。
問題の所在(論点)
賃貸借契約における無断増改築禁止特約に違反する行為が、直ちに解除事由となるか。特に、信頼関係破壊の理論がどのように適用されるか。
規範
賃借人が賃貸人との間の無断増改築禁止特約に違反した場合、その行為が賃貸人に対する信頼関係を破壊するものと認められるときには、賃貸人は土地賃貸借契約を解除することができる。
重要事実
土地賃借人(上告人)は、地主(被上告人)との間で、本件土地上の所有建物につき無断で増改築をしない旨の特約を締結していた。しかし、上告人は、被上告人に無断で、旧建物である平家建バラックを支柱の一部のみを残して他を全部取り壊し、新たに二階建の本建築を行った。これに対し、地主は特約違反を理由に契約解除を主張した。
事件番号: 昭和43(オ)749 / 裁判年月日: 昭和44年1月31日 / 結論: 棄却
一、土地の賃貸借契約において、賃借人が賃借権もしくは賃借地上の建物を譲渡し、賃借物を転貸しまたは右建物に担保権を設定しようとするときには賃貸人の承諾を得ることを要し、これに違反したときは賃貸人が賃貸借契約を解除することができる旨の特約があるにもかかわらず、賃借人が賃貸人の承諾を得ないで右特約所定の行為をした場合でも、賃…
あてはめ
上告人の行為は、単なる軽微な増改築にとどまらず、既存の平家建バラックの大部分を取り壊した上で二階建の本建築を新築するという大幅な態様変更を伴うものである。このような無断での大規模な改築は、地主との間の特約を明白に無視するものであり、賃貸借の基礎となる信頼関係を破壊するものと評価される。したがって、権利の濫用にも当たらない。
結論
本件解除は正当であり、信頼関係を破壊するものとして土地賃貸借契約の解除が認められる。
実務上の射程
無断増改築禁止特約違反を理由とする解除について、信頼関係破壊の理論(判例法理)を適用した事例である。建物の構造や規模が著しく変更される場合は、信頼関係の破壊が肯定されやすく、解除が認められる可能性が高いことを示している。
事件番号: 昭和39(オ)1450 / 裁判年月日: 昭和41年4月21日 / 結論: 棄却
一 建物所有を目的とする土地の賃貸借中に、賃借人が賃貸人の承諾をえないで借地内の建物の増改築をするときは、賃貸人は催告を要しないで賃貸借を解除することができる旨の特約があるにかかわらず、賃借人が賃貸人の承諾を得ないで増改築をした場合において、増改築が借地人の土地の通常の利用上相当であり、土地賃貸人に著しい影響を及ぼさな…
事件番号: 昭和47(オ)90 / 裁判年月日: 昭和51年6月3日 / 結論: 棄却
(省略)(最高裁昭和三九年(オ)第一四五〇号同四一年四月二一日第一小法廷判決・民集二〇巻四号七二〇頁参照)
事件番号: 昭和40(オ)1169 / 裁判年月日: 昭和42年9月21日 / 結論: 棄却
無断増改築禁止特約に違反し、借地上の居宅(実測一五坪五合)中九坪五合をバー店舗に改築した場合には、土地賃貸借関係の継続を著しく困難にする不信行為として、右賃貸借契約を即時解除することができる。