無断増改築禁止特約に違反し、借地上の居宅(実測一五坪五合)中九坪五合をバー店舗に改築した場合には、土地賃貸借関係の継続を著しく困難にする不信行為として、右賃貸借契約を即時解除することができる。
無断増改築禁止特約違反を理由とする土地賃貸借契約解除を有効とした事例
借地法11条,民法540条
判旨
賃借人が特約に違反して無断で建物を改築し、かつ使用目的を変更した場合において、それが賃貸借関係の継続を著しく困難にする不信行為にあたるときは、賃貸人は催告なしに契約を解除できる。
問題の所在(論点)
賃借人が建物の改築や使用目的の変更を禁止する特約に違反した場合、その行為が「賃貸借関係の継続を著しく困難にする不信行為」に該当するか。また、そのような場合に無催告解除が認められるか。
規範
不動産賃貸借契約において、賃借人に債務不履行(特約違反等)があったとしても、それが賃貸借関係の継続を著しく困難にする不信行為と認められない特段の事情がある場合には、信頼関係の破壊がないものとして、賃貸人は解除権を行使できない。裏を返せば、賃借人の行為が賃貸借関係の継続を著しく困難にする不信行為と認められる場合には、賃貸人は直ちに(無催告で)契約を解除することが可能である。
重要事実
賃借人(上告人A)は、賃貸人(被上告人)との間で締結された建物の賃貸借契約において、建物の改築および使用目的の変更に関する特約があったにもかかわらず、賃貸人の承諾を得ることなく無断でこれを行った。賃貸人は、当該特約違反を理由として、賃貸借契約を即時に解除する旨の意思表示をした。
事件番号: 昭和29(オ)642 / 裁判年月日: 昭和31年6月26日 / 結論: 棄却
賃貸借の継続中、当事者の一方に、その義務に違反し信頼関係を裏切つて 賃貸借関係の継続を著しく困難ならしめるような不信行為のあつた場合には、相手方は民法第五四一条所定の催告を要せず賃貸借を将来に向つて解除することができるものと解すべきである。
あてはめ
本件において、上告人Aが行った建物の改築および使用目的の変更は、事前の承諾を欠いたまま行われたものであり、当事者間の特約に明確に違反する。このような態様での改築等は、賃貸人との間の信頼関係を基礎とする賃貸借関係の継続を著しく困難にする不信行為であると評価される。したがって、信頼関係が破壊されたといえるため、催告を要することなく即時解除を認めるのが正当である。
結論
賃借人の行為は賃貸借関係の継続を著しく困難にする不信行為に該当するため、賃貸人は特約違反を理由として賃貸借契約を即時解除することができる。
実務上の射程
信頼関係破壊の法理の適用場面において、無断改築や用途変更が「不信行為」と認定される場合の解除の有効性を肯定した事例である。司法試験答案上は、賃借人の義務違反(民法601条以下、特約違反)を指摘した上で、信頼関係破壊の有無を判定する際の当てはめとして「不信行為」の文言を用いるべきである。
事件番号: 昭和39(オ)1450 / 裁判年月日: 昭和41年4月21日 / 結論: 棄却
一 建物所有を目的とする土地の賃貸借中に、賃借人が賃貸人の承諾をえないで借地内の建物の増改築をするときは、賃貸人は催告を要しないで賃貸借を解除することができる旨の特約があるにかかわらず、賃借人が賃貸人の承諾を得ないで増改築をした場合において、増改築が借地人の土地の通常の利用上相当であり、土地賃貸人に著しい影響を及ぼさな…
事件番号: 昭和39(オ)1243 / 裁判年月日: 昭和41年6月9日 / 結論: 棄却
地上建物を地主に無断で増改築しない旨の特約に違反して、地主に無断で旧建物たる平家建バラツクを支柱の一部のみを残して他を全部とりこわし、新たに二階建本建築をした等原審認定の事実関係のもとにおいては、右無断増改築を理由とする土地賃貸借契約解除は有効と解すべきである。
事件番号: 昭和43(オ)749 / 裁判年月日: 昭和44年1月31日 / 結論: 棄却
一、土地の賃貸借契約において、賃借人が賃借権もしくは賃借地上の建物を譲渡し、賃借物を転貸しまたは右建物に担保権を設定しようとするときには賃貸人の承諾を得ることを要し、これに違反したときは賃貸人が賃貸借契約を解除することができる旨の特約があるにもかかわらず、賃借人が賃貸人の承諾を得ないで右特約所定の行為をした場合でも、賃…