判旨
賃貸借契約に基づき土地の占有権原を主張する場合、対象物件が契約当初の目的物件に含まれているか、あるいは建物の敷地として客観的に付随している必要がある。また、賃貸人による使用の承諾が認められない限り、不法占有としての責任を免れない。
問題の所在(論点)
係争宅地が賃貸借契約の目的物件に含まれておらず、かつ建物の敷地にも属していない場合に、占有権原の抗弁が認められるか。また、証拠上の記載や黙示の承諾の有無が占有権原の認定にどのように影響するか。
規範
土地の占有権原の有無は、当該土地が土地賃貸借契約の目的物件に含まれているか、または建物賃貸借契約における建物敷地としての範囲に属しているかによって判断される。契約上の承諾(明示・黙示)が認められない事案においては、たとえ地代家賃統制令上の評価額算出等の事情があっても、直ちに占有権原を認めることはできない。
重要事実
上告人は、係争宅地について土地賃貸借契約または家屋賃貸借契約に基づく占有権原がある旨を抗弁として主張した。しかし、原審によれば、当該宅地は上告人が主張する土地賃貸借契約の目的物件の範囲内ではなく、また賃借していた家屋の敷地にも属していなかった。上告人は、関係者Eによる作成書類(乙第1、第5号証)や、Eによる使用承諾があったことを根拠に占有の正当性を争ったが、原審はこれらを否定する事実認定を行っていた。
あてはめ
本件において、係争宅地は土地賃貸借の目的物ではなく、建物賃貸借の敷地にも当たらないことが事実認定されている。上告人が依拠する乙号証の記載は作成者Eの不用意に基づく「特段の事情」があると認められ、証明力が否定されている。さらに、Eによる明示または黙示の承諾の事実も全証拠に照らして認められない。したがって、契約当初の賃貸人が誰であったかという点などを判断するまでもなく、上告人の占有権原の主張は失当であるといえる。
結論
上告人の占有権原の抗弁は認められず、不法占有等に基づく原判決の判断に違法はない。本件上告は棄却される。
事件番号: 昭和33(オ)664 / 裁判年月日: 昭和34年9月17日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】建物収去土地明渡請求において、収去すべき建物部分が上告人の所有地に跨る部分を除外して判示されているなど、執行が可能な程度に収去範囲が特定されていれば、判決に違法はない。 第1 事案の概要:被上告人が上告人に対し、不法占有を理由として建物の収去及び土地の明渡を求めた事案。第一審判決と原判決(二審)と…
実務上の射程
建物の賃貸借に伴う敷地の利用権限の範囲を争う事案において、客観的な敷地の範囲外にある土地については、別途の合意や承諾がない限り占有権原が否定されることを示す。事実認定の問題が中心であるが、契約の目的物の範囲の特定がいかに重要であるかを実務上示唆している。
事件番号: 昭和31(オ)755 / 裁判年月日: 昭和32年6月28日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】権利濫用の抗弁は、その前提となる権利(賃借権等)の取得が認められない場合には、判断の対象とならない。また、控訴審で主張していない事実を前提とした判断遺脱の主張は、上告理由として認められない。 第1 事案の概要:上告人は、本件土地について賃借権を取得したと主張し、その上で権利濫用の抗弁を提出した。し…
事件番号: 昭和36(オ)304 / 裁判年月日: 昭和36年9月7日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】借地法10条(現行借地借家法14条)に基づく建物買取請求権は、買取請求の意思表示の時点において、土地賃借権が有効に存在していることを要件とする。 第1 事案の概要:上告人A1及びA2が、被上告人所有の土地を賃借し、その地上に建物を所有していた事案において、賃料の支払をめぐる争い等により賃貸借関係の…
事件番号: 昭和31(オ)465 / 裁判年月日: 昭和32年12月3日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】借地上の建物について登記が存在しない場合には、「建物保護ニ関スル法律」1条による対抗力は認められない。また、建物の収去を求める請求が権利の乱用とされるか否かは、事案の具体的経緯に照らして慎重に判断されるべきである。 第1 事案の概要:上告人は土地を賃借しその上に建物を所有していたが、当該建物につい…
事件番号: 昭和30(オ)700 / 裁判年月日: 昭和32年6月27日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】他人の土地を占有する者は、正当な権原を主張立証しない限り、故意過失の推定を受け不法占有の責を免れない。この理は、不法占有者の相続人が占有を継続し、かつその相続人が未成年者であっても同様に適用される。 第1 事案の概要:被上告人は、上告人らの亡父Dに対し、土地の占有に基づく金銭支払を請求した。Dの死…