判旨
他人の土地を占有する者は、正当な権原を主張立証しない限り、故意過失の推定を受け不法占有の責を免れない。この理は、不法占有者の相続人が占有を継続し、かつその相続人が未成年者であっても同様に適用される。
問題の所在(論点)
土地の占有者が正当な権原を立証できない場合、不法行為上の故意・過失は推定されるか。また、その占有者が責任能力のない未成年者である相続人である場合でも、同様の責任を負うか。
規範
他人の土地を占有する者は、その占有を正当付ける権原のあることを主張立証しない限り、不法行為(民法709条)における故意・過失が推定され、不法占有の責を免れない。また、不法占有者の相続人が占有を継続する場合、その相続人が行為の責任を弁識するに足りる能力(責任能力)を欠く未成年者であっても、この推定の適用を妨げない。
重要事実
被上告人は、上告人らの亡父Dに対し、土地の占有に基づく金銭支払を請求した。Dの死亡後、その相続人である上告人らが本件訴訟を受継したが、上告人らはDから継続して当該土地を占有していた。上告人らは占有の権原を立証できず、また占有継続時に未成年者であったことから、過失の推定や責任の有無を争った。
あてはめ
上告人らの先代Dには本件土地を占有する権原が認められず、相続人である上告人ら自身も占有を正当化する権原を主張立証していない。この場合、土地占有という客観的事実に基づき過失等が推定される。上告人らが未成年者であっても、不法占有状態を継続している以上、その不法性の判断において特段の差異を設けるべき理由はない。
結論
上告人らは不法占有による賠償責任を免れず、相続分に応じて(各自平等の割合で)支払義務を負う。原審が権利濫用を否定し、不法占拠を認めた判断は正当である。
実務上の射程
土地の不法占有における過失推定の法理を明示した。特に責任能力を欠く相続人への適用を肯定した点に特徴があるが、実務上は「権原の立証責任の転換」に近い効果を認めるものとして理解される。答案上は、占有者の不法行為責任を問う際の過失認定の論拠として活用できる。
事件番号: 昭和28(オ)1390 / 裁判年月日: 昭和30年7月26日 / 結論: 棄却
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事件番号: 昭和28(オ)372 / 裁判年月日: 昭和30年11月1日 / 結論: 棄却
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事件番号: 昭和38(オ)1462 / 裁判年月日: 昭和39年6月26日 / 結論: 棄却
賃貸人たる地主は、借地人に対し賃料請求権を有するとしても、いまだ借地人から右賃料の支払を受けていないかぎり、借地権の無断譲受人に対し賃料相当の損害賠償請求ができる。
事件番号: 昭和32(オ)890 / 裁判年月日: 昭和35年3月8日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】土地の明渡請求が権利の乱用に該当するか否かは、具体的な事実関係に基づき、請求によって得られる利益と相手方の被る不利益等を比較衡量して判断されるべきであり、本件においては権利の乱用にはあたらない。 第1 事案の概要:上告人(被告)らが占有する本件土地につき、被上告人(原告)が土地明渡を求めた事案であ…