罹災都市借地借家臨時処理法第一〇条の借地権者(賃借人)甲から、地上に建物を建設してその土地を不法に占有する乙に対し、土地明渡請求訴訟が進行中、同条所定の五箇年が経過した後に、乙がその土地を買受けて所有権を取得した場合、甲はその賃借権につき乙に対する対抗力を失わないものと解すべきである。
罹災都市借地借家臨時処理法第一〇条の五箇年経過後の借地権に対抗力が認められた事例。
罹災都市借地借家臨時処理法10条
判旨
罹災都市借地借家臨時処理法10条により対抗力を有する借地権者は、同条所定の5年の期間経過後であっても、当該土地を不法占有し登記具備を妨げた者に対してはその賃借権を対抗できる。
問題の所在(論点)
罹災法10条に基づく対抗力の存続期間(5年)が経過した後に、その土地を不法占有し借地権者の対抗要件具備を妨げていた者が所有権を取得した場合、借地権者は無登記でこれに対抗できるか。
規範
法10条が5年間の対抗力を認めた趣旨は、期間内に建物を建築し登記を備えることで対抗力を存続させる機会を与える点にある。したがって、第三者が土地を不法占有して建物の建築・登記を妨げた場合には、当該期間経過後であっても、信義則上、借地権者はその不法占有者(およびその後に所有権を取得した当該占有者)に対し、対抗要件なくして借地権を対抗できると解すべきである。
重要事実
上告人は罹災法10条所定の借地権を有していたが、被上告人が何ら権原なく本件土地上に建物を建築して不法に占有したため、上告人は自ら建物を建てて登記を備えることができなかった。上告人は土地明渡請求を提起したが、訴訟中に法10条の5年の期間が経過し、さらにその後、被上告人が土地所有者から本件土地を買い受けて所有権を取得したため、対抗力の有無が争われた。
事件番号: 昭和31(オ)465 / 裁判年月日: 昭和32年12月3日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】借地上の建物について登記が存在しない場合には、「建物保護ニ関スル法律」1条による対抗力は認められない。また、建物の収去を求める請求が権利の乱用とされるか否かは、事案の具体的経緯に照らして慎重に判断されるべきである。 第1 事案の概要:上告人は土地を賃借しその上に建物を所有していたが、当該建物につい…
あてはめ
被上告人は当初、権原なく建物を建設して土地を不法に占有しており、上告人が地上に建物を建築して登記を備えることを妨げたといえる。このような者が、5年の期間経過後にたまたま所有権を取得したからといって、上告人の対抗力を否定することは、信義の法則に反し法10条の趣旨を没却するものである。よって、被上告人との関係では、期間経過後もなお賃借権の対抗力が認められるべきである。
結論
被上告人が不法占有者として借地権者の対抗要件具備を妨げたといえる以上、期間経過後であっても上告人は借地権を対抗でき、建物収去土地明渡を請求しうる。
実務上の射程
対抗要件の具備を不当に妨げた者(不法占有者等)に対しては、例外的に信義則に基づき対抗力の存続を認めるという判断枠組みを示しており、現行法下の建物保護標準法や借地借家法10条1項の対抗要件をめぐる紛争においても、不当妨害者の法理として転用しうる。
事件番号: 昭和33(オ)711 / 裁判年月日: 昭和35年6月28日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】競落許可決定により土地の所有権を取得した者は、建物保護法1条(現借地借家法10条1項)に基づく借地権の対抗を受ける「第三者」に含まれる。 第1 事案の概要:被上告人(賃借人)は、昭和21年頃に建物所有目的で本件土地を賃借し、昭和27年10月に土地上の建物について所有権保存登記を経由した。その後、上…
事件番号: 昭和27(オ)1162 / 裁判年月日: 昭和29年6月17日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】借地法10条(現借地借家法14条)の建物買取請求権は、従来の借地権の存続中に第三者が建物等を取得した場合にのみ認められ、借地契約終了後に建物を取得した者には適用されない。 第1 事案の概要:上告人は、本件土地に係る従来の土地賃貸借契約が既に終了した後に、当該土地上の建物を取得した。その後、上告人は…
事件番号: 昭和27(オ)935 / 裁判年月日: 昭和30年10月18日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】罹災都市借地借家臨時処理法2条に基づく借地権は、登記や地上建物の登記を欠く場合であっても、設定から10年間は第三者に対して対抗することができる。 第1 事案の概要:本件における事案の詳細は判決文からは不明であるが、罹災法2条に基づき設定された借地権の存否、および当該借地権の対抗要件の欠落を理由とし…
事件番号: 昭和51(オ)478 / 裁判年月日: 昭和52年3月31日 / 結論: 破棄差戻
建物所有を目的とする土地賃貸借の賃借人が、賃借地上の建物に登記をしていないため、賃借地を買い受けた者に対し、形式的には、その賃借権をもつて対抗することができない場合であつても、右登記をしていなかつたことに宥恕されるべき事情があり、また、土地の買受人が、賃借権に対抗力のないことを奇貨として、賃借人に対し土地の明渡しを求め…